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記事 2件
  • 『欲望会議』。エロティシズムの根源を問う。

    2019-01-04 12:57  
    51pt
     『欲望会議』を読みあげました。
     アダルトビデオ監督の二村ヒトシ、哲学者の千葉雅也、フェミニストで現代美術家の柴田英里が集まって話しあった内容をまとめた対談集で、これがめっぽう面白い。
     テーマは「欲望」。そして、しばしば人間の欲望を抑圧しようとしているように見えるフェミニズムやポリティカル・コレクトネスといった思想です。
     人間にはさまざまな欲望があるわけですが、ここで俎上に載せられているのは性的な欲望。そこで、性的な欲望とポリティカル・コレクトネス(「政治的正しさ」と訳されるが、これがほんとうに的確な訳語なのかどうかは微妙なところ。以下「PC」と略す。)の衝突が話題に挙がります。
     そもそも人の性的欲望とは、表立って語ることをためらってしまうような性質をもつものです。ありとあらゆるものにスポットライトをあて分析している現代においてもなお、寝室の出来事はあまり表立っては語れない。
     も
  • モテるためにはどうすればいい? あるレズビアンの答え。

    2016-02-06 01:11  
    51pt

     以前から気になっていた『百合のリアル』という本を読みました。
     これが、とてもとても、とても素晴らしい内容だったので、皆さんにオススメしなければと思っているところです。
     いやー、久々に良い本を読んだ。ジェンダー系の内容に抵抗がなければ、ぜひ読んでほしい本ですね。
     タイトルに「百合」という言葉は使われていますが、ジャンルフィクションとしての「百合」ではなく、「セクシュアリティ」一般について考察している書籍です。
     この問題について、ここまで平明に、かつ明快に書かれている本はちょっと読んだ記憶がない。
     内容的にもっと深遠な本は、フェミニズムやLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)系統の書物を探ればあるかもしれないけれど、このジャンルの入門編としてほぼ文句がない出来といっていいのではないかと。
     むしろ、シンプルすぎるタイトルが内容の奥深さを隠しているようにも思えますが、読み終えてみるとこのタイトルの意図するところもわかってきます。
     とにかくディープかつ明晰な一冊なので、百合に興味がある方もない方もぜひ読んでいただきたいところ。
     未だに電子書籍が出ていない(!)という欠点はあるものの、内容的には満点を付けたいくらい。いや、ほんと、素晴らしい。
     と、空虚な言葉を連ねていても仕方ないので内容を紹介したいと思いますが、ちょっとめずらしい形式の本なのでどう説明したものか迷う。
     基本的にセクシュアリティを巡るさまざまな知見や価値観について書かれた内容なのだけれど、それがとある恋愛セミナーの「マヤ先生」と生徒たちの対話、という形式で書かれている点に特徴があります。
     また、各章の合間には著者からの「手紙」も挟まれていて、読者はそれらを通じて少しずつセクシュアリティの問題について学び、考えていくことができるようになっている。
     著者は女性として女性を愛し、一般に「レズビアン」として「カテゴライズ」されるタイプの女性なのだけれど、自分では自分をそう定義する必要は感じていないらしい。
     ただし、その境地に至るまでには長い葛藤の歴史があったようです。
     また、世間的には「レズビアンタレント」という「カテゴリ」で活動している人物でもあります。
     この人の性格や来歴については、ほかにくわしく語っている本があるのだけれど、その話はまたいずれ。
     さて、一般的には「レズビアン」と呼ばることが多い立場である著者は(こう書いてみても、「一般」ってなんだ?といった疑問は浮かぶわけですが)、「マヤ先生」の講義という形で、セクシュアリティについてのさまざまな知見を紹介していきます。
     必ずしも「レズビアン」に限るわけではなく、もっと広く、人間ひとりひとりの存在と生き方についての話が続きます。
     まず「モテるとは何か?」、「モテるためにはどうすればいいのか?」という話から始まり、しだいに人間の不思議、人間の認識の仕方の面白さへと話が進んで行く構成が秀逸。
     ちなみにこのこの「モテるためにはどうすればいいのか?」には、最後に簡潔な答えが出ます。
     このアンサーが実に目からうろこ。モテるための具体的なテクニックといったものではないものの、ちまたの恋愛指南本を100冊読んでもなかなか出てこないであろう秀抜なものです。
     ネタバレなのでここに書いてしまうのはためらわれますが、あまりに素晴らしいのでぼくなりに解釈して書くと、