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記事 162件
  • もしサノスの主張が「正義」なら、そのとき、アベンジャーズはどうしたのか?

    2019-06-14 15:57  
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     先日、見に行った映画『プロメア』のことを考えています。この映画、『天元突破グレンラガン』のスタッフによって制作されているのですが、ある意味、『グレンラガン』から「一歩も先に進んでいない」といえるところがあって、そこら辺が賛否両論を生んでいるようです。
     具体的にどういうことかというと、この作品の悪役(ヴィラン)であり、「ラスボス」であるところのクレイ・フォーサイトの主張(「悪の理論」)に対し、主人公たちの主張(「正義の理論」)が弱いのではないか、という話があるのですね。
     作中、クレイは滅亡に瀕した人類を救うためという理由で自分が選んだわずかな人たちとともに地球を脱出しようとするのですが、そのために新人類バーニッシュを犠牲にします。これは、ある意味でわかりやすい「悪」ではあるといえるでしょう。
     ですが、もしもクレイがほんとうに正義からこのやり方を選んでいたとしたら? そして、また、このクレイのやり方以外に人類を救う方法がないとしたら? そのとき、主人公たちはクレイを純粋な「悪」として告発することができるでしょうか?
     実際には、クレイには私心から行動しているという瑕疵があり、また人類が滅亡に瀕しているという問題には未発見の解決策がある。だから、クレイを「悪」として告発することには意味がある。
     しかし、もしクレイにそのようなエゴがなく、また、解決策が存在しなかったらどうでしょうか? そのとき、クレイを告発する理由は存在しなくなってしまうでしょう。これがつまり、『物語の物語』のなかでぼくたちが延々と話している「天使」の問題です。
     「天使」とはつまり、「倫理的に隙のない絶対善としてのラスボス」のことなのです。
     倫理的に隙のないラスボスを正義の名のもとに告発することはできません。クレイのように私心(エゴイズム)から行動していたり、あるいは人類と世界を救う方法が他になる場合は、ある意味で主人公にとって都合が良いといえるでしょう。
     そのときは彼の「悪の理論」を高らかに論破し、「おまえのいうことは間違えている!」と叫んで殴り飛ばしてしまえばいい。それで主人公は正義のヒーローとしての立場を守ることができます。
     問題なのは、ラスボスが語る悪の行動を正当化する理論がほんとうに正当だった場合です。たとえば、ほんとうにバーニッシュを利用すること以外に人類を救う方法がないとしたら? そのとき、ヒーローは倫理的な窮地に追い込まれることになるでしょう。
     いくら「おまえは間違えている!」と叫んでみても、説得力がないことはなはだしい。あるいは「正義」はほんとうに相手にあるかもしれないのですから。
     実は同じことが『アベンジャーズ/エンドゲーム』に対してもいえます。『エンドゲーム』のラスボスであるサノスは、宇宙の人口問題を解決するため、宇宙全体の人口を半分にしてしまうという目的を持って行動しています。
     その際にアベンジャーズと対立するわけですが、はたしてかれの行動はほんとうに間違えているといえるのでしょうか? 作中では、その問題はあいまいに処理されてしまった感があります。
     もちろん、作中ではサノスの主張の根拠はあいまいで、また、サノスはエゴを払拭しきれていない。そして、最後の最後では「わかりやすい悪役」に堕ちてしまう。
     つまり、サノスは「天使=倫理的に隙のないラスボス」ではなく「ヴィラン=倫理的に隙のあるラスボス」であるに過ぎなかったことになる。だからこそ、キャプテン・アメリカやアイアンマンの「正義」は相対的に保証されることにもなる。
     ですが、もしサノスに一切のエゴイズムがなく、またサノスの計画以外に問題を解決する方策がないとしたら? そのとき、やはり「天使」の問題が浮上することになってしまうでしょう。つまり、アベンジャーズはサノスに対する相対的な正義を主張することができなくなってしまうわけです。
     『エンドゲーム』は『プロメア』と同じく、サノスを「ヴィラン」の次元に留めることによって、この問題をごまかし、回避したように思えます。
     ですが、べつだん、それによってサノスの掲げた問題が解決したわけではありません。もしかしたら、サノスによって救われた人もいたかもしれないし、サノスのやり方のほうが正しかったかもしれないのです。ぼくはやはりそこに物足りなさを感じてしまう。
     ただ、『エンドゲーム』の圧倒的な好評を見る限り、そのような問題について真剣に考える人は少ないのかもしれません。そこにどのようなごまかしがあるとしても、大半の人は「天使」以前の物語、主観的な「正義」が主観的な「悪」を暴力で倒しておしまいという物語で満足なのかも。
     しかし、ほんとうにそうなのでしょうか? そういう意味では、これから先の『アベンジャーズ』と、ハリウッド映画の展開が楽しみです。はたしてハリウッドに「天使」は降臨するのか? 皆さんもお楽しみになさってください。
     では。 
  • 『アリータ バトル・エンジェル』が凡庸に感じた理由。

    2019-03-01 18:09  
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     このところ、何作か続けて映画を観ています。
     『シティハンター 新宿プライベート・アイズ』、『コードギアス 復活のルルーシュ』、『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.2「First Guardian」』、『アリータ バトル・エンジェル』と、すべてアニメか漫画原作ですね。
     どれも悪くなかったけれど、素晴らしい傑作というほどの作品もなかったかも。『シティハンター』については、「『Get Wild』良かったよね」という以外の感想は特になし。
     いや、面白かったんだけれどね。かつての『シティハンター』の演出や音楽をそのままに再現したノスタルジー映画で、一切新しいところはないのだけれど、ファンが期待しているものそのものではある。まあ、これはこれで、という作品。
     『復活のルルーシュ』は期待して観に行ったのですが、個人的にはいまひとつ、ふたつ。
  • ベジータ問題。あるいは『SSSS.GRIDMAN』における「正義」と「悪」とは何か?

    2019-01-21 15:03  
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     この記事は『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」』と『SSSS.GRIDMAN』の全面的なネタバレを含みます。まだこれらの作品を未見の方は回れ右するか、「覚悟」のうえでお読みください。よろしくお願いします。
     さて、ペトロニウスさんの『SSSS.GRIDMAN』の記事が興味深いので、引用します。
     これ、もともとはぼくがTwitterでこの作品の名前を挙げたところから始まっている話なのですけれど、ペトロニウスさんはこのアニメを見て古い脚本だと思ったとのことです。
     それはそうで、アニメ的にも20年とかまえのスタンダードですし、SF的にはニューウェーブの内面宇宙とかの話と重なりますから、へたすると50~60年昔の話だったりするわけです。
     で、やはりいまひとつの作品だと思った(らしい)ペトロニウスさんは教えてLD先生!ということでLDさんにその内容につい
  • 『魔法少女リリカルなのは Detonation』は混沌とした定食屋アニメだ!

    2018-10-20 15:16  
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     ふらっとうちに『スーパーマリオパーティ』をやりに来たてれびんに誘われて、映画『魔法少女リリカルなのは Detonation』を観て来ました。
     ちなみにぼくは『魔法少女リリカルなのは』シリーズを見るのは初めて。この映画、前後編の前編にあたるのですが、その前編すら見ていません。正真正銘の初なのはです。
     このシリーズ、14年にわたって続いているので、当然、「いままでの作品を観ていないと理解できないのでは? ぽかーんとしているうちに終わってしまうのでは?」と思うところですが、てれびんの野郎が「大丈夫、大丈夫、最初に「これまでのあらすじ」みたいなやつをやるから、それでわかるよ」とのたまったので、「そうかなー」と思いつつもいっしょに観てみることにしました。
     で、たしかにありました、「これまでのあらすじ」。あったのですが――こんなものでわかるかー! さっぱり何のことだか理解できないぞ!
     いや、
  • 映画『若おかみは小学生!』微ネタバレありレビュー。

    2018-10-04 13:41  
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     ネットでやたらに評価が高い(が、興行収入は振るわない)映画『若おかみは小学生!』を観て来ました。
     上映している映画館がちょっと遠いところにあるので行くのが大変だったけれど、結論としては観て良かったです。
     高い世評も納得の秀作。一本のアニメーションとしての出来が抜群に良く、ファミリー映画として、大人も子供も楽しめる作品です。むしろ、子供より大人のほうが「刺さる」かも。
     ただ、個人的には気になる点もなくはなく、文句なしの絶賛とまでは行きませんでした。
     物語は主人公の少女「おっこ」が両親とともに自動車に乗っているとき、事故に遭うところから始まります。その事故で両親は亡くなり、おっこは母がたの祖母に引き取られることに。
     そこで彼女はその祖母がおかみを務める旅館に住み着いた幽霊や鬼と交流しながら、「若おかみ」として少しずつ成長し、また癒やされていくことになるのですが――というお話。
     原
  • 細田守は家族と血脈を愚直に描く「骨太の物語作家」だ。しかし――

    2018-08-08 11:29  
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    ◆細田守の「聖母」。
     細田守という映画監督のことを考えています。
     いままでどうにも捉えどころがないような作家だと思っていたのですが、『未来のミライ』を見たことで、ちょっとわかったように思います。
     この人は、たぶん、本来、シンプルでプリミティヴな物語を作りたい人なのですね。
     でも、時代が時代だから、なかなかそれができない。それで、その歪みが作品に刻印されることになる。そういうことなのかな、と。
     もう少しわかりやすく説明しましょう。
     細田監督のいまのところ最もかれらしい作品にして、いちばん賛否両論を呼んだのは『おおかみこどもの雨と雪』だと思います。
     これはまあ、ぼくの目から見ても批判が生じるのはよくわかるような映画なんですよね。
     何といっても、女性の、あるいは母親の描き方にまったくリアリティがない。現代の映画としてはいかにも受け入れがたい。
     でも、同時に、この「リアリティのな
  • 『未来のミライ』は『未来のミライ外伝』のほうが正しいタイトルだ!?

    2018-07-29 11:01  
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    ■『未来のミライ外伝 くんちゃんの不思議なお庭』?■
     先日、細田守監督の新作映画『未来のミライ』を観て来ました。
     その感想はニコニコブロマガのほうに書いたのですが(http://ch.nicovideo.jp/cayenne3030/blomaga/ar1635302)、こちらではちょっとだけネタバレの感想を書いておきたいと思います。以下、ほんとにちょっとだけネタバレです。
     で、これはブロマガのほうにも書いたのだけれどぼくは傑作だと思っていて、世間の賛否両論がぴんと来ない。いや、これはごくごくわかりやすい作品でしょ。
     まあ、でも、あまりこの手の映画を見なれていない人にとっては唐突に感じられたり、無理がある展開に思えるであろう事態が頻出することもたしか。
     そもそもこの映画が何を描いていて、どこが面白いのかわからない人も多いかも。
     思うに、「未来のミライ」というタイトルの設定が悪い
  • 『ヲタクに恋は難しい』実写映画化! オタクのパンピー化は止まらない。

    2018-07-29 10:53  
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    ■『ヲタクに恋は難しい』映画化! え、実写?■
     何やらベストセラー漫画『ヲタクに恋は難しい』が実写映画化するらしいですねー。何というかもう、「ついに時代はここまで来たか」という感じです。
     オタク大迫害時代に青春を過ごしたアラフォーのおっさんとしては、感慨無量というか感動ですよ。
     まあ、映画のクオリティに関しては何ともいえないわけだけれど、とりあえずオタクが普通のティーン向け恋愛映画(だろう、きっと)の主役になる日が来ようとは、思いもしないことでした。
     いや、『ヲタ恋』が出て来たあたりではっきりと時代の変わり目は感じていたんだけれど、それにしてもこの流れの速さは凄いですね。
     いったいこのままどこまで行ってしまうのだろう? 一億総オタク化して、「オタク」という言葉が死語になったりして。うーん、まったくありえない話じゃない気がするあたり、時代の変化は恐ろしい。
    ■オタクの四世代■
     そ
  • 『ポケットモンスター みんなの物語』がなにげに面白いこと、知っている?

    2018-07-29 10:43  
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     先日、映画『ポケットモンスター みんなの物語』を観てきたにょろ。タイトルからわかるように、今回は「みんな」を主役にした群像劇。
     あるひとつの街を舞台に、サトシを中心とした無数のキャラクターたちのドラマを時に絡め合わせながら描きます。いわゆるグランドホテル形式ってやつですね。
     この手の群像劇って、いかに無駄なくシナリオを整理できるかで八割がたは出来が決まってしまうようなところがありますが、その点、この映画は実によくできている。
     いやー、きれいにひとつひとつちゃんと伏線を回収していくことには感心しました。まあ、ポケモンと人間ってほんとうに仲良くなれるのだろうか、ほんとうに人間ってそんなに悪い人ばかりではないのだろうか、と疑問を感じなくもないのですが(笑)、そういうことをいうのは野暮なのでしょうね。
     それぞれに問題を抱えつつ勇敢に自分の限界を突破し成長していく群像のドラマのなかでも、ウ
  • 右も左も偏見だらけ。『万引き家族』はあらゆる単純解釈を拒絶する傑作だ。

    2018-06-17 02:26  
     是枝裕和監督の映画『万引き家族』が、カンヌ映画祭で最優秀賞にあたるパルムドール賞を受賞したことが世間で話題になっています。当然ながら、ネットでも話題沸騰なのですが、一部の人は上映前からこの作品に否定的な評価を下していました。
     いわく、是枝監督の政治的な発言が気に入らない、また、万引きという犯罪を美化し肯定していることが嫌だ、監督は在日韓国人なのではないか、などなど。
     この手の狂った理屈の異常さについてはあらためてぼくが説明するまでもないと思うので省きます。ただ、是枝監督の該当発言は重要だと感じるので、ここに引用しておきましょう。

    --経済不況が日本をどのように変えたか。
    「共同体文化が崩壊して家族が崩壊している。多様性を受け入れるほど成熟しておらず、ますます地域主義に傾倒していって、残ったのは国粋主義だけだった。日本が歴史を認めない根っこがここにある。アジア近隣諸国に申し訳ない気持