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記事 12件
  • 小説、漫画、アニメ。30年の時を超え多面展開する『アルスラーン戦記』が凄い!

    2016-05-10 15:54  
    50pt

     この記事で今月30本目ですねー。我ながらよく書くわ、と思ってしまう。
     これだけ書いているとさすがに読者満足度は高いらしく、過去10日で退会者はひとりだけです。
     もちろん量だけ多くてもしかたないので、質と量を兼ねそなえた運営を心がけたいところですね。
     さて、きょう取り上げる作品は田中芳樹&荒川弘『アルスラーン戦記』の最新巻です。
     表紙は旅の楽師ギーヴ。たいして努力をしている様子も見えないのに天才的に強いという田中芳樹らしいキャラクターですが、この巻ではそのギーヴがアルスラーン、エラムらとともに活躍します。
     王族や権力者に反感を抱き、忠誠心などかけらも抱いていないギーヴがいかにしてアルスラーンに心寄せるようになるのか、原作でも見どころのひとつです。
     荒川さんはそこらへん、実にていねいに漫画化しているので、原作ファンも満足できるでしょう。
     もっとも、どこまでいってもあくまで「荒川弘の漫画」なので、原作の雰囲気を至上視する人のなかには不満を持つ人もいるかも。
     ただ、それはしかたないことだと思うのですよね。才能ある漫画家であればあるほど、単なる「原作の再現」に留まらないものを描こうとするだろうし、それこそがある作品の多面的なメディア展開の面白さでもあるわけですから。
     とはいえ、どこまでも「荒川弘の漫画」であるという事実を受け入れるなら、この漫画版は相当に原作に忠実に作られているといっていいでしょう。
     正直、もっとアレンジを加えてくるかと思っていただけに、意外なくらいです。
     ギーヴとアルスラーンのコミカルなやり取りとか、漫画オリジナルの描写もあるけれど、それも完璧に原作を消化していることがわかるものに仕上がっている。
     さすが一流の漫画家は違うなあ、とうなってしまいます。
     原作への忠実度という意味ではアニメより高いでしょうね。そのアニメはこのたび第2シーズン「風塵乱舞」が放送されるのだとか。
     どうしてサブタイトルを「王都奪還」にしないんだろ?と思っていたのですが、なんと全8回のショートシリーズだそうで、王都エクバターナ奪還まで話が行かないようなのですね。
     次はまた『王都奪還』だけのシリーズを作るのだろうか。うーむ。まあいいけれど、あまり中途半端なところで終わってほしくないなあ。人気はあるようだから途中で終わることもないかもしれませんが。
     それにしても、漫画版は第5巻にしてようやく原作2巻の途中です。
     この調子でいくと、漫画版が原作をすべて消化したら全50巻程度の超大作になってしまうわけですが、はたしてそこまでやるのでしょうか? ――うん、いや、やるのだろうなあ。
     そこら辺は『鋼の錬金術師』をみごと完結させた荒川さんのことだから特に心配はしていません。きっと時間はかかっても最後まで語り切ってくれることでしょう。
     問題は原作そのものがまだ未完だということなのですが――驚くべきことに今月、原作第15巻が出るそうです。
     全16巻完結予定のため、クライマックスまでのこり1冊を残すのみということになります。
     一時期は未完に終わる宿命かと思われたこの作品に、完結の見込みが出てきたということになります。
     というか、 
  • 善か、悪か? 百万人を殺した男の割り切れない素顔。

    2015-05-19 01:32  
    50pt

     『アルスラーン戦記』がゲームになるそうですね。
     アニメ化は数しれない田中芳樹作品でもゲームになったものはそう多くありません。
     現代のハードであの世界がどう再現されるのか気になるところです。
     その昔、メガドライブでシミュレーションゲームになっていたような気がしますが、きっと気のせいでしょう。ええ、そうに違いありません。
     いずれにしろ漫画、アニメ、ゲームと『アルスラーン戦記』の世界がしだいに拡大していっていることはたしかで、いちファンとしては非常に嬉しいところです。
     これで原作の新刊が出ると文句がないのだけれど、それはまあいうまい。
     アニメも出来はいいですし、漫画はこのまま行くとおそらくミリオンセラーになるでしょう。
     これで新たに『アルスラーン戦記』のファンになる人も数多くいるはずで、長年の読者として感慨深く思います。
     それもこれも原作のストーリーがきわめて優れているからこそ。
     全盛期田中芳樹作品の面白さはやはりただごとではありません。キャラクター小説の歴史に冠絶するものがある。
     アニメはパルス王都エクバターナの陥落にまで話が進みました。
     アルスラーンと黒衣の騎士ダリューンに加えて、軍師ナルサス、その弟子エラム、楽師ギーヴ、女神官ファランギースと旅の一行はほぼそろいました。
     対するは侵略者ルシタニア王国軍30万。それになぞの銀仮面の男――この銀仮面の正体はもうすぐわかりますが、アルスラーンにとって宿命の難敵ともいえるこの男を巡って、物語は今後、二転三転していきます。
     そのほかにも王都奪還を目ざすアルスラーンの前に立ちふさがる者は少なくなく、いまのところは線が細く頼りない少年に過ぎないかれはいっそう成長していかなければなりません。
     この流浪の王子アルスラーンの成長物語としての面白さが『アルスラーン戦記』の魅力の一端です。
     わずか14歳の無力な子供が、いかにして数々の宿敵をも凌駕する真の王にまで成長していくのか。
     原作未読の皆さまには期待していただきたいと思います。
     ところで、第7話にしてルシタニア王国の王弟ギスカールが登場しましたね。
     この男、きわめて有能な軍人であり策謀家であり政治家であるというマルチタレントの持ち主なのですが、人格的に見ても実に面白いキャラクターの持ち主です。
     パルス征服戦争、王都陥落、その後の戦争と続く悲劇の根源はすべてこの男にあるわけで、その意味では何十万もの命に責任を持つ大悪人ともいえるのですが、どうにも憎めない。
     ええ、ものすごく悪いやつなんですけれどね(笑)。
     この 
  • 『アルスラーン戦記』と「同性愛的な二次創作」の微妙で複雑な関係。

    2015-04-15 05:54  
    50pt

     作家の田中芳樹さんが所属している有限会社らいとすたっふの「らいとすたっふ所属作家の著作物の二次利用に関する規定」が改定されたことが話題を呼んでいる。
    http://www.wrightstaff.co.jp/
     「露骨な性描写や同性愛表現が含まれる」二次創作を禁止した項目を廃し、新たに「過激な性描写(異性間、同性間を問わず)を含まないこと」とする項目を加えたようだ。
     いままでの書き方ではことさらに同性愛描写を禁止するように受け取られかねないから、これは適切な変更だと思う。
     もちろん、らいとすたっふ側にそのような意図はなく、ただ「いわゆるカップリング」を抑制したいというだけの目的だったのだろうが、誤解や曲解を招きかねない表現であることに違いはない。変更されて良かった。
     しかし、この規定には微妙な含みがある。
     「過激な性描写(異性間、同性間を問わず)を含まない」なら、「いわゆるカップリング」的な同性愛描写そのものは「お咎めなし」にあたるのだろうか。
     判断はむずかしいところだと思うが、Twitterで検索してみたところ、いわゆる腐女子界隈の人たちはこれを「18禁でなければカップリングも問題なし」と受け止めている人も多いようだ。
     ただ、これで全面的にカップリング描写が認められたと見ることはいかにも早計には思える。
     原作者がそういう描写を好ましいと思っていないことはたしかだろうから、何かのきっかけで再度規定が変更ということもありえる。注意するべきではないだろうか。
     というか、あきらかに原作者が嫌がっているような二次創作を展開しても後ろめたさがありそうなものだが、そういうものでもないのだろうか。
     人それぞれだろうが、自分が気分良ければいいと思う人もいるのかもしれない。
     もともとが人気があり、これからさらに人気に火がつく可能性が高い作品だけに、今後、どういう展開をたどるのか注目してみたいと思う。
     それにしても、「同性愛のカップリング」一般を禁止することは、意外に色々な問題を抱えているようだ。
     シンプルに「同性愛のカップリングを禁じる」と書けば、それなら異性愛のカップリングは良いのか、それは同性愛差別ではないか、と受け取られる。
     しかし、作者の心理として自分のキャラクターがかってに同性愛者化されたところは見たくないという人がいても、それほどおかしいなこととはいえないのではないか(田中芳樹がそうだというのではないが)。
     じっさい、ぼくにしても、「同性愛的なカップリング」の禁止が同性愛差別化というと――やはり、それは違うんじゃないか?と思える。
     まず、なんといってもそれらの二次創作が原作作中の登場人物の性的指向をねじ曲げているようには思えるわけで、異性愛とか同性愛という以前に、それこそが問題なのだ、と考えると話はシンプルになると思う。
     つまり、「作中で異性愛者として描かれている人物を同性愛者であるかのように描くこと」はやはり不快である、そういうふうに表明しても同性愛差別にはあたらないのではないだろうか。
     当然、この理屈で行くと 
  • 『アルスラーン戦記』開幕! 原作既読者の視点からその魅力を考える。

    2015-04-05 18:29  
    50pt


     季節は早春、新しいアニメが始まる頃合い――というわけで、新番組『アルスラーン戦記』第1話を観ました。
     大陸を東西に貫く〈大陸公路〉の覇者・パルス国の王子アルスラーンの長い長い物語がここに始まるわけですが、実はこの第1話はまだ「序章」。
     本格的に物語が動いてくるのは次の第2話からになると思われます。
     実はこの第1話にあたるエピソードは原作小説には存在しません。
     小説は、この3年後の〈アトロパテネの会戦〉から始まります。
     それでは、アニメが独自にこの「序章」を挟んだのかというと、そういうわけではなく、この第1話は荒川弘による漫画版のオリジナルなのです。
     つまり、序盤からすでにオリジナル・エピソードを入れ込んできたわけなのですが、この判断は英断だったと思う。
     いきなり一大敗戦から始めてしまう小説の冒頭も素晴らしいのですが、この漫画/アニメの「序章」はよりていねいな印象を与えます。
     しかも原作既読者にとっては「なるほど! こう来たか」と唸らされる展開でもある。
     雑誌で漫画版の第1話を見たときは「さすが荒川弘」と思わされました。
     この第1話に登場する「ルシタニアの少年」の正体は、実は――まあ、原作既読でわかるひとはこの時点でもうわかることでしょう。
     ちなみに漫画/アニメでは、原作とくらべてもアルスラーンの繊弱さ、凡庸さがいっそう強調されています。
     これはより低年齢層向けの少年漫画としてわかりやすいエンターテインメントに仕上げるためだったのでしょう。
     ほんの少しの違いなのですが、その「ほんの少し」が決定的な効果を生んでいる。
     いまの時点ではアルスラーンはその地位以外にはまだ何も持っていない平凡な少年に過ぎない。
     そして、この頼りない少年が万人が仰ぎ見るパルス中興の祖・解放王アルスラーンにまで成長していくのです。
     そのスケールの大きさはやはりあたりまえのファンタジーとはひと味違っていますね。
     荒川弘による脚色も凄かったし、アニメそのものの出来も相当のものですが、やはり何より原作小説の出来そのものがあまりにも素晴らしい。
     かつて『アルスラーン戦記』は一度アニメ映画化されているのですが、そのときはまだ技術的に作品世界を映像化することに無理がある印象が強かった。
     じっさい、原作の第5巻あたりまで追いかけてそのシリーズは終わっています。
     しかし、この新しいテレビ版はおそらく圧倒的人気を集めることでしょう。
     漫画版は既にベストセラーになっているようですが、アニメが人気が出れば、さらに破格の部数が出るんじゃないかな。
     『鋼の錬金術師』や『銀の匙』以上のセールスを記録することができるかもしれません。
    原作の長年のファンとしては実に嬉しい事です。
     わずか数年で「賞味期限」を迎えて忘れ去られていく作品も少なくないなか、30年近くの時を経てもなお第一線のエンターテインメントとして通用する『アルスラーン戦記』の凄みはやはり尋常のものではありません。
     きっとこれが「本物」ということなのでしょう。
     流行にも、時代の流れにも左右されない「本物」の面白さ。
     特に非西洋世界、それも往古のペルシャを参考にして舞台を作り上げたオリジナリティはいまなお色褪せてはいない――というか、いまでもほとんど追随するものがいない状態です。
     『アルスラーン戦記』では今後、インドとかチベットあたりがモデルになった国家も出て来ます。
     パルスの周辺では、さまざまな野心的な国が牙を研いでいるのです。
     やがては 
  • アニメ開幕直前! 10分でわかる『アルスラーン戦記』。

    2015-03-29 22:52  
    50pt



     いよいよ来週から『アルスラーン戦記』アニメ版がスタートします。
     原作は田中芳樹のベストセラー戦記小説。
     架空の王国パルスとその周辺の諸国家を舞台に、ひよわな王子アルスラーンの冒険と成長を描いた気宇壮大な大河ロマンです。
     86年に始まった原作はこれまで既刊14巻が発売されていて、完結を目前に控えたところまで来ています。
     原作は一度漫画化及びアニメ化されていますが、このたび、荒川弘という才能を得てふたたび漫画になりました。
     荒川さんによる漫画は基本的には原作に忠実ですが、ところどころにオリジナル要素を盛り込み、壮麗な原作をいっそう勇壮な物語に仕立てあげています。
     それがいまテレビアニメという形で展開するわけです。期待せずにはいられません。
     そこで、この記事では「10分でわかる『アルスラーン戦記』」と題して、この未曾有の物語の説明をして行きたいと思います。
    ■『アルスラーン戦記』ってどんなお話?■
     広大な大陸を東西に貫く「大陸公路」の覇者、パルス王国はいま、西方からやって来たルシタニア王国の侵略を受けていた。
     勇猛でしられるパルス国王アンドラゴラス三世はただちに軍勢を集結、アトロパテネの平原に布陣する。
     無敵を誇るパルス軍が敗れることなど、かれは考えてもいなかった。
     ところが、パルスの将軍として一万の兵を預かる万騎長カーラーンが味方を裏切ったことによって、パルス軍は壊滅、アンドラゴラスは敵軍に捉えられる。
     そしてその頃、パルスのただひとりの王子であるアルスラーンはただひとり平原をさまよっていた。
     かれは絶体絶命のところを「戦士のなかの戦士」ダリューンに救われ、ただふたり、戦場を抜け落ちる。
     アルスラーン、ときに十四歳。
     このひよわな少年がやがて長きにわたるパルス解放戦争を導いていくことになるのである――。
     『アルスラーン戦記』は特にとりえがないように見えるパルス国の王太子アルスラーンの成長物語であり、パルスと野心的な周辺諸国を巡る戦記ファンタジーです。
     ファンタジーとはいっても、魔法的な側面はそれほど強くありません。
     後半になってくると邪悪の蛇王ザッハークの魔軍などというものが出て来てファンタジー色が濃くなっていきますが、当面、アルスラーンが取り組まなければならないのはパルス国を占拠してしまったルシタニア軍の討伐と国土の解放です。
     したがって、あくまでメインの要素となるのは戦争や謀略。
     そしてそこに、アルスラーンの出生の秘密が関わってきます。
     そして、そもそもなぜカーラーンはパルスを裏切り、国土を灰にしたのか?
     カーラーンを意のままに操るかに見える「銀仮面卿」と呼ばれる人物は何者なのか? 
     「銀仮面卿」に力を貸す暗灰色の衣の老人の目的とは何か?
     アンドラゴラスが知っている秘密とは何なのか?
     バフマン老人は何を悩むのか?
     さまざまな謎が謎を呼ぶのですが、それらはすべてアルスラーンによるパルス解放にあたって解き明かされることになります。
     ひろげられた大風呂敷がみごとにとじていく「王都奪還」のエピソードは見事としかいいようがありません。
     まあ、そのあともさらに物語は続いてゆくのですが、この長い長い小説はいまになってようやく終わろうとしています。
     これから読むひとはあまり長い間新刊を待たなくて済むかもしれません(はっきりとはわかりませんが……)。
     田中芳樹は多くの魅力的なシリーズを生み出しては未完で放り投げていることでしられている作家なのですが、決して風呂敷をとじる能力に欠けている作家ではありません。
     この流浪の王子と邪悪の蛇王を巡るあまりにも壮大なプロットがどのようにして完結を見るのか、期待しても良いでしょう。
     「皆殺しの田中」と呼ばれるくらいの作家ですから、おそらく物語の終幕に至っては何かしらの悲劇が待ち受けているはずではあるのですが、その点も含めて続刊を楽しみに待ちたいところです。
    ■どこが面白いの?■
     先ほども書いたように、アトロパテネの野を命からがら脱出したアルスラーンに付き従うものは、最強の騎士ダリューンただひとりです。
     それに対し、かれが打倒しなければならないルシタニア軍は、アトロパテネの野の会戦で多数の兵を失ったとはいえ、なお、その数30万。
     いかにダリューンが無敵といっても、ひとりで30万の軍を倒すことなどできるはずがありません。
     したがって、アルスラーンはパルス全土に残っている兵たちを糾合し、ルシタニア軍に匹敵する軍を生み出して戦いを挑まなければならないのです。
     初めふたりだったアルスラーンたちが、やがて軍師ナルサスやその弟子エラム、流浪の楽師ギーヴ、女神官ファランギースといった人々の協力を得、また多数の軍勢を集め、しだいしだいに形勢を逆転していくそのカタルシスが『アルスラーン戦記』序盤の読みどころです。
     いったい凡庸な王子とも見え、周囲からもそのように扱われていたアルスラーンがいかにしてこの非凡な人々をひきいる「王」にまで育っていくのか。その点もまた見どころのひとつでしょう。
     そしてまた、きわめて劇的に演出された名場面の数々!
     ことケレン味という一点において、『アルスラーン戦記』に匹敵する小説は日本にはいくつもないのではないでしょうか。
     それくらい何もかもがドラマティックに描かれている。
     そもそもいきなり無敵だったはずの軍隊の「敗戦」から物語がスタートするあたり、凡庸ではありません。
     そしてその状態からの史上空前の逆転劇は大きなカタルシスがあります。
     ひよわと見られていたアルスラーンはやがて「十六翼将」と呼ばれる最強の騎士16人を麾下にくわえ、「解放王アルスラーン」としてしられるようになっていくのですが、そこにまで至るまではいくつもの試練を乗り越えなくてはなりません。
     物語が始まった時点では、アルスラーンはまだ何者でもないといっていいでしょう。
     そのアルスラーンが、ちょっと「個性的」という言葉だけではいい表せないくらい個性的な面々をどのようにしてコントールしてゆくのか、ひと筋縄では行かない物語が待っています。
     殊に旅の楽師にしてパルス最高の弓使いであるギーヴなどは、王家への忠誠心は皆無、美貌の女神官ファランギースに惹かれてアルスラーン陣営に入るという人物だけに、並大抵のリーダーに使いこなせるような性格ではありません。
     しかし、最終的にアルスラーンはそのギーヴからすらも忠誠を誓われるようになっていくのです。
     武術においても知略においても必ずしも秀でたものを見せないアルスラーンの才能とは何なのか?
     ぜひ本編をお楽しみください。
    ■『アルスラーン戦記』独自の魅力は何?■
     そうはいっても、その手の戦記ものやファンタジーはもう見飽きたよ、というひともいるでしょう。
     じっさい、『アルスラーン戦記』が開幕した頃にはライバルとなる異世界戦記作品といえば栗本薫の『グイン・サーガ』くらいしかなかったのですが、その後、雨後の筍の喩えのように膨大な数のその種の作品が生み出され、ファンタジー的想像力はすっかり陳腐化しました。
     しかし、いまなお『アルスラーン戦記』はほかの凡百のファンタジーとはものが違います。
     この小説のどこが特別なのか? 
  • 『アルスラーン戦記』第2巻刊行! 不動の天才軍師を動かす「そのひと言」とは何か。

    2014-05-08 22:45  
    50pt


     あした9日、漫画版『アルスラーン戦記』の第2巻が出ますね。この巻では、軍師ナルサス、旅の楽師ギーヴが登場し、あとひとり、女神官ファランギースが出てくれば、物語の最重要人物は勢揃いするはずです。
     もっとも、まだまだアルフリードやメルレインやジャスワントなど、面白い人物はたくさん出て来るのですが……。
     主人公であるパルスの王太子アルスラーンの下にはやがて「十六翼将」の名で知られる十六人の精鋭たちが集まって来ることになるのですが、いま挙げた人物はすべて、その十六翼将の一員です。
     とはいえ、アトロパテネの野の会戦に敗れ、戦場を落ち延びたアルスラーンに従う者は、いまのところ黒衣の最強騎士ダリューンただひとり。宿敵ルシタニア軍はその数、実に三十万。いかにダリューンが屈強といえども、勝負になるはずがありません。
     そこでダリューンが頼ったのは、友人であり「その知謀は一国に冠絶する」といわれる
  • はるかな大陸公路がここにある。荒川弘版『アルスラーン戦記』が出色の出来。

    2014-04-11 19:00  
    50pt


     それははるかな異世界の物語。大陸の覇権を奪いあい、戦い、騙し、裏切り、陰謀を巡らし、ときには命を賭けて忠義を尽くす英雄たちの年代記。
     それらの群雄あまたあるなかで、すべての中心となって運命を動かすものは、最も無力な若き王子、その名をアルスラーン。
     大陸公路の覇権を担うパルス王国のたったひとりの王太子として生まれたかれは、十四歳にして国難に遭い、いったん滅亡したパルスを救うべく立ち上がる。
     そのとき、かれのかたわらにあったものは、雄将ダリューンと智将ナルサス、美貌の楽師ギーヴ、女神官ファランギース、そして解放奴隷の子エラムのわずか5名であった。
     アルスラーンを含め6名にしかならないこの人々は、いかにして侵略者ルシタニア軍30万を打ち破るのだろうか。アルスラーンの物語が始まる。このとき、かれはまだのちに「解放王」と呼ばれ讃えられる自分の運命を知らない――。
     田中芳樹『アルスラーン戦記』は、ベストセラー作家の田中が30年近くにわたって書きつづけている長編スペクタクルロマンである。流浪の王太子アルスラーンを中軸に、さまざまな魅力的なキャラクターを配した物語は、いまに至るまで熱狂的な支持を集めている。
     本書は、その小説を『鋼の錬金術師』、『銀の匙』の荒川弘が独自の解釈で絵にした漫画化作品である。ひとこと、すばらしい。そうとしか云いようがない。
     あたりまえのことだが、小説作品は小説としての魅力を最大限に考えて書かれており、それが映像になったときのことは考慮されていない(例外はあるだろうが)。
     だから、そういう小説を漫画に変換する作業には、それなりの苦労が伴うはずである。華麗な花の如き都エクバターナ、とひとことで書かれていても、それを絵にするのは楽ではないだろう。
     しかし、現代漫画を代表するベストセラー漫画家である荒川弘は、その困難を難なく成し遂げているように思える。豊穣なパルスの大地、勇壮な軍隊と軍隊のぶつかり合い、花の都エクバターナ、そしてアルスラーンやナルサスを初めとする個性的な人々といったものを、彼女は実に丹念に描き出している。それは、かつて『鋼の錬金術師』においてひとつの世界を生み出してのけたときの技そのままだ。
     原作の読者は、アルスラーンを初めとする英雄たちが、それぞれに再解釈された新たなキャラクターとして動き出すところを目撃するだろう。それはもちろん荒川弘独特の描きではあるのだが、じっさい、物語は意外なほど原作に忠実に進行している。
     とはいえ、オリジナルの序章が用意されるなど、漫画版独自の展開も存在するので、ただ単に小説世界を漫画に移し替えただけのものではない。
     本編の3年前を舞台とした序章に登場する「ルシタニアの少年騎士」の描写には、ニヤリとした原作読者も多いはずだ。「かれ」が何者なのか、はっきり描かれてはいないのに、わかる者にはわかるのである。
     考えられる限り最高の『アルスラーン戦記』がここにある。最高の描き手を得て、元々痛快無比な物語はさらなる飛躍を見せようとしているようだ。
     既にアルスラーン、ダリューン、ヒルメスといった最重要人物たちは登場している。次巻においては、ナルサスやギーヴも出て来ることになるだろう。
     ファランギースやメルレインやアルフリードも、そのうち姿を表わすはずだ。いったいかれらが荒川弘の手によってどういうふうに描かれるのか、楽しみでならない。特にアルフリードは可愛く描かれるといいんだけれどなあ。
     ともかくまだ物語は始まったばかりで、原作で云えば、 
  • 荒川弘は『アルスラーン戦記』をどのようにして生まれ変わらせたか。(2103文字)

    2013-08-14 01:54  
    52pt




     荒川弘版の『アルスラーン戦記』が第二話を迎えました。第一話がオリジナルエピソードの序章だったので、実質的に物語が始まるのはこの第二話から。
     第一話の時点ではかなり奔放に原作をいじりまわしていたので、さてどう出るかと思っていたのですが、この第二話を見ると予想以上に原作に忠実に描いていますね。
     パルス王国の万騎長にして「戦士のなかの戦士」であるダリューンがアンドラゴラス王の怒りを買い地位を失うくだりも、その後のアトロパテネの野の会戦におけるパルス軍の惨敗も、その惨劇を裏切り者のカーラーンがひき起こしていることも、すべて原作通り。
     非常に原作を尊重して書いているように思います。
     もちろん、所々に荒川さんならではのアレンジは加わっていて、たとえばアルスラーンを含むパルス軍がこれから進む先から飛んできた鷹の羽根が湿っていたから雨になる、といった描写は漫画オリジナルのものです。
     原作ではもう少しあとになってから出てくる鷹のアズライールをこういうふうに使うあたり、さすがですね。
     物語はこの第一話で、原作の第一章「アトロパテネ会戦」の途中まで進んでいます。この「アトロパテネの戦い」によって、大陸の雄であるパルス王国軍は侵略者ルシタニア軍に敗れ去り、主人公アルスラーン王太子は騎士ダリューンとともにわずか二騎、戦場を落ちのびることになるのです。
     対するルシタニア軍はこのとき約三十万人。三十万対二! この絶望的ともいえるシチュエーションから、『アルスラーン戦記』は奇跡の逆転劇を描いていくことになります。
     いかにも華奢で頼りないアルスラーンがこれからどのようにして試練を乗り越え、一人前の男、そしてパルスを統べる王に育っていくのか、原作を読んでいる人間はもう知っているわけですが、それでもこの漫画版には胸が踊る。
     おそらく荒川さんは原作のプロットを変えることなく、アルスラーンの成長をより少年漫画的に演出してくるのではないかと思います。
     まだ見ぬギーヴ、ナルサス、ファランギース、ヒルメスといったキャラクターたちの登場も待ち遠しいですし、いやあ、良い企画ですね。
     原作のほうの『アルスラーン戦記』は完結までのこすところ三冊というところまで来ているのですが、そのわずか三冊が実に遠い。はたして生きて完結を見ることができるのかどうか、はっきりしません。
     おそらく現代の最も完結が待ち望まれている小説のひとつでしょう。
     
  • ついに新連載! 田中芳樹&荒川弘の『アルスラーン戦記』とはどんな物語なのか。(2013文字)

    2013-07-16 18:55  
    52pt




     先日、荒川弘の『アルスラーン戦記』が始まった。いうまでもなく原作は田中芳樹の人気小説だ。
     荒川弘と田中芳樹。まったく個性は異なるが、それぞれ現代を代表するベストセラー作家といっていいふたりである。この新連載に期待は高まる。いや、こんどこそ完結するといいですね。
     『アルスラーン戦記』の始まりはなんと1986年にまでさかのぼる。いまから実に27年前のことである。『グイン・サーガ』より後、『ロードス島戦記』よりも前で、世間に異世界ファンタジーというジャンルがまだ根付いていなかった時代の話だ。
     田中はこの前に『銀河英雄伝説』を大ヒットさせ、その輝かしい経歴の全盛期にあった。そこで同じスペースオペラを続けるのではなく、まったくの異世界を舞台にした戦記ものに手を出すあたりがこの作家の個性だろう。
     物語の主人公は長大な〈大陸公路〉の要衝、パルス国の王太子アルスラーン。物語が始まった時点で14歳のかれは、侵略者ルシタニア軍によるパルスの滅亡と王都エクバターナの陥落という事態にあい、しだいにその秘められた才能を開花させていく。
     そして荒川弘による漫画版は原作のさらに3年前から始まる。王子アルスラーン、わずか11歳。当然、初陣も経験していない。いまはきゃしゃで頼りないだけの少年であるに過ぎない。
     その時点ではこの少年がのちの〈解放王〉にまで成長しようとは、だれも想像だにしないだろう。しかも、アルスラーンの才能とは、武芸でも、知略でもない。比類ない武芸や知略の持ち主たちを率い、統合してゆく「王」の器量。それがアルスラーンの天才なのである。
     原作を読んでいるとわかるのだが、このオリジナルエピソードの第一話に、荒川は数々の伏線を盛り込んでいる。のちの十六翼将の筆頭である〈戦士のなかの戦士〉ダリューンや、〈双刀将軍〉キシュワードはすでに顔をみせているし、アトロパテネの会戦においてパルスを裏切ることになるカーラーンの顔もすでに出ている。
     そして、アルスラーンをひっぱりまわすルシタニア人のの少年だが――これはつまり、そういうことだよね? くわしいことは語らないが、これも原作を読んでいるひとならピンとくるはずである。こういうところは、荒川さんはほんとうにうまい。
     原作の一ファンとしては、これから先の展開はほんとうに気になる。もちろん、大筋の展開はすでに知っているわけだが、おそらく荒川はそこに幾多のオリジナル要素を付け加えてくるだろう。
     凡庸な描き手なら、そのオリジナルの追加によって原作の魅力を台無しにしてしまうこともあるかもしれない(『創竜伝』の漫画版はそれに近いものがあった)。
     しかし、描くは天下の荒川弘である。そんな心配は微塵もない。どうか、『アルスラーン戦記』という素材を、この上もなく美味に調理してほしいものだと思う。おそらく田中芳樹そのひとも、そういう展開を望んでいることだろう。
     
  • 荒川弘による漫画化決定! 田中芳樹の名作『アルスラーン戦記』を5分で紹介するよ。(2037文字)

    2013-05-09 08:55  
    52pt




     田中芳樹の大河架空歴史小説『アルスラーン戦記』が『鋼の錬金術師』、『銀の匙』で有名な荒川弘の手で漫画化されることが決定したようです。
    http://natalie.mu/comic/news/90231
     『アルスラーン戦記』といえば、田中芳樹の代表作のひとつ。実に四半世紀以上前の1986年に出版が開始されて現時点でまだ未完という大長編です。
     かつて一度、漫画化、アニメ化されているのですが、個人的にはいまひとつの印象が強かった。今回、荒川さんという超一流の描き手を得て、この作品がどう生まれ変わるのか楽しみでなりません。いやー、素晴らしい。
     そこで、この記事では未読の方でも数分で『アルスラーン戦記』の概要が理解できるよう簡単にこの物語を紹介したいと思います。まあ、本編を読んでもらうのが一番なのですが、何しろ未完のまま何年も止まっているからなかなか薦めづらい。
     『アルスラーン戦記』とはどういう作品なのか? ひと言でいうと「中世ペルシア風の架空の国パルスを舞台に、ひとりの少年が偉大な王にまで成長していく物語」です。その少年こそタイトルロールであるアルスラーン。
     物語はパルス国の王太子アルスラーンが14歳のとき、アトロパテネの平原で侵略者ルシタニア軍を迎え撃つところから始まります。しかし、ある人物の裏切りにより、最強パルス軍は壊滅、アルスラーンの父であるアンドラゴラス王は捕縛されてしまいます。
     アルスラーンは「戦士のなかの戦士(マルダーンフ・マルダーン)」の異名を持つ青年ダリューンに守られ、戦線を離脱し、ダリューンの友人である軍師ナルサスのもとを目指します。それは長い長いパルス解放のための戦いの始まりだったのです。
     物語開始の時点で30万人のルシタニア軍に対して、アルスラーンらはわずか2名。第一巻終了時でもたった6名に過ぎません。この絶対的で絶望的ともいうべき兵力差をいかにくつがえすか、そしていかにして王都エクバターナを解放するか、まさに目が離せない展開です。
     しかも、若干14歳のアルスラーンを襲う試練はこれだけではありません。なぞの「銀仮面卿」ことヒルメス、そして父でありながら息子をうとむパルス国王アンドラゴラスといった人々が次々とかれの前に立ちふさがります。
     物語開始時点では未熟な少年に過ぎないアルスラーンが、ほんとうにこれら強烈な敵たちに立ち向かっていくことができるのか、どうか、それは読んでのお楽しみということにしておきましょう。ちょうど『銀河英雄伝説』で一躍脚光を浴びた直後の全盛期田中芳樹の絶妙のストーリーテリング、ぜひお楽しみください。
     さて、いまとなってはこの手の架空歴史小説は世に大量に存在しているわけですが、そういった類似作と『アルスラーン戦記』を分かつポイントはどこなのか? この作品を生み出すにあたって、田中芳樹はいままでの物語を研究、分析した上で「ずらして」来ています。