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記事 2件
  • 恋愛漫画(含む百合)を読む、読む。

    2016-01-18 00:21  
    51pt

     ここ数日、色々と漫画を読んだので、そこらへんを雑然と並べてみます。
     まずは柊ゆたか『新米姉妹のふたりごはん』。
     ご飯ものというかお食事ものというジャンルがありますが、これはそのジャンルに含まれそうな一作。
     新しく姉妹になったふたりの少女が食べ物によって結ばれる様子が描かれます。
     作者は百合ものの同人誌を描いているひとらしいですが、たしかにそういったフレーバーがほのかにただよっています。
     しかし、この作品自体は(とりあえず現時点では)百合ではないですね。
     仲良し姉妹が楽しくご飯を作って食べる、それだけといえばそれだけの漫画です。
     しかし、作中のお食事描写は素晴らしく、読ませます。
     日常ものとしてはひそかにかなりオススメな一作です。楽しい。
     続いて芥文江『妹ができました』。
     これは完全に百合の短編集ですね。
     なんとなく百合っぽいという作品からいわゆるガチ百合まで、百合具合は作品によって違っていますが、どれも面白いです。
     繊細に描きこまれた絵柄がいちいち素晴らしい。
     こういう絵を見ると、読むほうが数秒で流し読んでしまう絵にも恐ろしい労力がかけられているんだろうなあと思い至ります。
     個人的には短編集としては久々のヒット作です。
     どこがどうものすごいというわけではないのですが、甘く、苦く、百合の妙味を楽しませてくれます。
     一般的にどこまでウケるものかわかりませんが、ぼくとしては大あたりの作品集なので、オススメです。面白いよ。
     次も百合漫画で、大沢やよい『2DK、Gペン、目覚まし時計』。
     この作品は百合漫画としてはめずらしいことに、第2巻が終わるところまで行っても具体的なカップリングがわかりません。
     だれとだれが結ばれるのかいまひとつはっきりしないのですね。
     なので、特に甘い描写などもありません。
     それではどこが読みどころかといえば、これ、ある種のお仕事漫画なのですね。
     仕事ができる女性である主人公が時として「意識高い系」と呼ばれる人々と遭遇したりしながら、日々、お仕事をこなしていくところに面白さがあります。
     一応百合ではあるなので、同居している女性との間にそういう雰囲気が流れたりもしますが、あまりラブラブな方向に進んだりするようには見えません。
     今後、どう展開するか、楽しみな一作ということができるでしょう。
     アサダニッキ『ナビカトリア』は、インターネットでだまされた挙句、色々あって日本一知名度が低い県とされる島根県に住むことになった東京在住のOLさんの話。
     アサダニッキさんのふわふわな絵柄と、シビアな現実との取り合わせがなかなかです。
     全3巻完結なのですが、ぼくは第1巻を読んだあとすぐ第2巻と第3巻を購入して読んでしまいました。恋愛漫画にはそういう力があるよね。
     便利な東京で暮らしていた女性がいかにして島根の田舎村に惹き寄せられていくかが読みどころです。
     文句なしのハッピーエンドなので、安心して読んで、本を置けます。
     次の 
  • 日本の女子校生、海兵隊へ! 野上武志『まりんこゆみ』がいろいろ凄すぎる。

    2014-08-14 19:00  
    51pt


     きょうから試験的に配信時刻を午後にずらしてみます。何でも試してみないとね。 さて、ペトロニウスさんにオススメされて、アナステーシア・モレノ原案による野上武志の漫画『まりんこゆみ』を読みました。ブラウザで全編を無料で読めるウェブ漫画です。
    http://sai-zen-sen.jp/special/4pages-comics/marine-yumi/
     簡単に云うと、ゆみちゃんという名前の日本の女子校生がひょんなことからアメリカの海兵隊(マリーンズ)に入隊しちゃってさあ大変、というお話なのですが、なるほど、これは燃えるな……!
     あらすじだけを書き出すとふざけているようにしか思えないし、じっさい、全編、ライトなコメディタッチで進んでいくんだけれど、海兵隊の描写そのものは原案者の実体験に則っていてリアルらしい。
     「色々なジャンルを萌え絵で可愛く疑似体験」みたいな漫画はこの世に山ほどあるけれど、そのなかでも極北的な内容ですね。
     だって、海兵隊だぜ。『フルメタル・ジャケット』だぜ。そこに日本の女の子がひょいっと入っちゃうんだぜ。ありえないでしょ?
     しかし、ところがところが、このありえないような初期設定から物語はローリング・ストーンのように二転三転し、中盤をすぎる頃には過激に盛り上がっていくのです。
     だまされたと思って60話くらいまで読んでみてほしい。めちゃくちゃ燃える&泣けるエピソードが待っています。主人公のゆみたちが海兵隊の地獄の訓練を乗り越え一人前の海兵隊員として任官するというお話です。
     それぞれ、人種も違えば、経歴も、文化も、能力も、何もかも違っている若い女性たちが、同じ「アメリゴ合衆国海兵隊の仲間」として鍛えあげられ、認められるというシチュエーションには、「仲間っていいな!」と熱く思わせる何かがある。
     いやー、でもしかし、どうなんでしょうね。たしかにこれはとほうもなく感動的な場面なんですけれど、でも、これはようするに海兵隊の「マインドファック」が完了して主人公たちが兵士として、軍隊の部品として洗脳され切ったということをも意味しているわけで、実に両義的と云うしかありません。
     これはもう、海兵隊がどうこうではなく、「仲間」という概念そのものが持つ両義性です。それぞれまったく異なる境遇を持つ少女たちが、ありとあらゆるバックグラウンドの違いを超えて、「同じ仲間」として認められるというシチュエーションには、たしかに「仲間っていいな!」、「アメリゴ合衆国って懐が深い国だな!」と思わせるものが存在しています。
     しかし、それは同時に「仲間の敵」に対しては限りなく残酷になれる条件が整ったということでもあるのです。
     つまり、ここで描かれている海兵隊の訓練とは、日本人とか、スパニッシュとか、資産家令嬢とか、腐女子wといったバックグラウンドの属性をいったん解体して、「海兵隊の仲間」と「それ以外」に再編するという作業であるのですね。
     この悪夢のような訓練を乗り越えたなら、金持ちであろうが貧乏人であろうが、チャイニーズであろうがスパニッシュであろうが関係ない! 同じ海兵隊の仲間だ!
     そして、ワンス・ア・マリーン、オールウェイズ・ア・マリーン、一度海兵隊に入ったなら生涯それは変わることはないのだ! そう云い切れることは実に感動的ではあるのですが、それは「海兵隊の仲間」と「仲間以外」を峻別する思考を生み出すわけです。
     これは「同じ仲間」の間の最大の友誼と結束を意味している一方で、とんでもなくやばいことでもある。でもまあ、仲間ってそういうものだよね、という気もする。非常にむずかしい問題だと思います。