• このエントリーをはてなブックマークに追加

今なら、継続入会で月額会員費が1ヶ月分無料!

記事 10件
  • 『コードギアス』劇場版はダイジェストを超える出来。

    2018-02-22 00:34  
    50pt
     映画『コードギアス 反逆のルルーシュ 叛道』を観て来ました。
     ダイジェスト版『コードギアス』三部作の第二章にあたるわけですが、いやあ、面白かった。
     本来、50話ある『コードギアス』本編を2時間超の映画3本にまとめあげるという無茶な企画であるわけですが、実によくまとまっていると思います。素晴らしい構成力。
     しかも今回は相当にオリジナル演出が入っていて、良くも悪くもテレビ版『コードギアス』とは別ものになっています。ここまで来るとダイジェストというレベルじゃないですね。
     よくいわれることですが、『コードギアス』という作品は、ある意味でそのちょうど10年前に発表されている『新世紀エヴァンゲリオン』へのアンサーという側面があると思います。
     『エヴァ』は、長い戦いの果てに大義を見失い、戦うべきモチベーションをなくしてしまった主人公を描いた。
     そして、『コードギアス』はその迷路から脱出するために意識的に悪を選択する主人公の物語を綴っているわけです。
     LDさんはその系譜を「悪を為す系」と呼んでいるようですが、つまりは「世界を変える」という大局的な目的のためにあえて悪の道を進んでいるのが『コードギアス』の主人公ルルーシュなのです。
     ルルーシュの大義は妹であるナナリーに象徴されます。かれは社会的弱者であるナナリーを守るため、テロを初めとする悪行を犯していくのです。
     ルルーシュは「正義の味方」ではありません。一貫して「正義の味方」として行動するのは、かれのライバルであるスザクのほうです。
     しかし、ルルーシュがある種のダークヒーローであることは間違いないでしょう。そして、かれはゼロ年代でおそらく最も魅力的な主人公です。
     ルルーシュは計算外の出来事からたびたびミスを犯しますが、まったくいいわけを口にしません。かれには「ギアス」という人を支配する悪の力を使用するにあたっての覚悟があるのです。
     そんなルルーシュに比べると、スザクのほうはもう少し軟弱かもしれません。ここら辺はスザクのほうが自分の正義を信じているからというところが大きいのでしょうね。
     本来であればスザクのほうが主役だったのでしょうが、時代はルルーシュを必要としているようです。ただし、スザクはヒーローだけにルルーシュの計算を突き破るだけの力を持っている。
     そして、このふたりを中心に、『コードギアス』は群像劇を展開していきます。
     わりに女の子が重要な役目を果たすあたりがぼく的に嬉しいところなのですが、そこら辺には限界を感じないこともない。
     今回、わりを食ったのはなんといってもユフィことユーフェミアでしょう。完璧にルルーシュの計画を打ち破ったにもかかわらず、かれのギアスの暴走によって死んでしまうという必然性のない展開。
     ぼくはこれはユフィが物語のなかでしかるべきポジションを発見できなかったということだと思っています。
     スザクには「ルルーシュのライバル」というポジションがあるのだけれど、ユフィはそれを見つけられない。だから、死ぬしかなかった。そういうことなのではないかと。
     いいキャラクターなのですけれどね。ルルーシュの知略を人徳によって破っていくその能力をぼくは高く評価しています。
     それにしても、今回の映画はテレビシリーズに比べだいぶわかりやすかったです。皇帝シャルルが何を考えているのかとか、テレビシリーズではいまひとつピンと来なかったのだけれど、この映画でははっきりと感じ取れる。
     これは、物語の重要なポイントに合わせて再編集しているからなのでしょうね。
     この第二章でテレビシリーズのかなり後半のほうまでエピソードを消化しているので、おそらく次はもっとオリジナル要素が入って来るのではないかと思います。
     そうでないと、語るべき要素がなくなってしまいますからね。
     すでに現時点でテレビシリーズとの齟齬が発生しているのですが、はたして今後、テレビシリーズと辻褄が合うことはあるのでしょうか。
     このままだと、『復活のルルーシュ』につながったとき、まずいと思うのですが。
     特にシャーリー関係とか、どうするつもりなんだろ。たぶん、『復活のルルーシュ』はテレビシリーズと映画、どちらを見た人も違和感なく楽しめるものにするつもりだとは思うんだけれど。
     それにしても、テレビシリーズでここまでやってしまって、いったい『復活のルルーシュ』では何をやるつもりなのでしょうね。
     ルルーシュの死後数年して再び世界に戦乱が巻き起こる、というのでは二番煎じめいていますし、何より『反逆のルルーシュ』の感動的な最終回を台無しにしている感がぬぐえません。
     あえて新作を用意するからには何かしらアイディアがあるとは思うのですが、ちょっと思いつかないですね。まあ、それだけに楽しみだともいえる。
     『コードギアス』は時代の寵児です。あれから十数年が経ったいま、どのような新たなヴィジョンを見せてくれるのでしょうか。わくわくしつつ待つことにしたいと思います。 
  • 大晦日だよ。好きなキャラクターランキング男女別ベスト20。

    2017-12-31 01:39  
    50pt
     質問箱で「好きなキャラクターランキングを教えてください。」(https://peing.net/q/8acd316f-e553-4950-8c0b-b082c571a50d)という質問をいただいたので、作ってみました。
     けっこう苦労しました。当然、好きなキャラクターは枚挙にいとまがないほどいるわけですが、ランキングをつけるのって大変だよね。ぼくが好きなキャラクターは男女を問わず、何らかの形で「戦っている」という特徴があります。与えられた運命に対し、果敢に抵抗しているキャラクターが好きですね。下のほうにくわしい解説をつけておきます。
    〇男性編
    1位 ヤン・ウェンリー(『銀河英雄伝説』)
    2位 イシュトヴァーン(『グイン・サーガ』)
    3位 ダグラス・カイエン(『ファイブスター物語』)
    4位 尼子司(『SWAN SONG』)
    5位 土方歳三(『燃えよ剣』)
    6位 令狐冲(『秘曲笑傲江湖』)
    7位 オスカー・フォン・ロイエンタール(『銀河英雄伝説』)
    8位 森田透(『翼あるもの』)
    9位 ジークフリード・キルヒアイス(『銀河英雄伝説』)
    10位 伊集院大介(『伊集院大介の冒険』)
    11位 ルルーシュ(『コードギアス』)
    12位 沖田総司(『燃えよ剣』)
    13位 田島久義(『恋愛』)
    14位 上杉達也(『タッチ』)
    15位 ジュスラン・タイタニア(『タイタニア』)
    16位 グリフィス(『ベルセルク』)
    17位 衛宮士郎(『Fate/stay night』)
    18位 グイン(『グイン・サーガ』)
    19位 碇シンジ(『新世紀エヴァンゲリオン』)
    20位 ジョン・スノウ(『氷と炎の歌』)
    〇女性編
    1位 比良坂初音(『アトラク=ナクア』)
    2位 沢渡真琴(『Kanon』)
    3位 ヴィアンカ(『OZ』)
    4位 黒猫(『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』)
    5位 ラキシス(『ファイブスター物語』)
    6位 姫川亜弓(『ガラスの仮面』)
    7位 シルヴィア(『グイン・サーガ』)
    8位 躯(『幽☆遊☆白書』)
    9位 白鐘直斗(『ペルソナ4』)
    10位 美樹さやか(『魔法少女まどか☆マギカ』)
    11位 アトロポス(『ファイブスター物語』)
    12位 久慈川りせ(『ペルソナ4』)
    13位 綾波レイ(『新世紀エヴァンゲリオン』)
    14位 ユーフェミア・リ・ブリタニア(『コードギアス』)
    15位 真賀田四季(『四季』)
    16位 長谷川千雨(『魔法少女ネギま!』)
    17位 アウクソー(『ファイブスター物語』)
    18位 鹿目まどか(『魔法少女まどか☆マギカ』)
    19位 川瀬雲雀(『SWAN SONG』)
    20位 サーバル(『けものフレンズ』)
     男性版1位のヤン・ウェンリーはもうしかたないというか、30年近くファンやっているもので、どうしようもないですね。歳を取ってから見てみると、驚くほど繊細なバランスでできているキャラだと気づきます。この頃の田中芳樹のすごみですね。
     2位のイシュトヴァーンは若き日の野生、たけだけしさ、行動力、与えられた運命に果敢に抵抗していくところもさることながら、後半の殺人王へと堕ちていくくだりも好きです。人生で最も心配して眺めたキャラクターといっても過言ではないかも。
     3位のカイエンは、まあ自分のハンドルネームのもとにするくらいで、それはもう大好きです。非常に男性的な、「男」という生きものの長所と短所というものがもしありえるとすれば、それを凝縮させたようなキャラクターですよね。ひたすら男のロマンを追求したようなというか。かっこいい。
     第4位は『SWAN SONG』の司。やっぱりあまりにも過酷な運命に抵抗しつづけるところが好きですね。人間として強い。強すぎる。ランキングには入っていないけれど、鍬形も好きです。リアリティありすぎ。
     第5位、土方歳三。まあ、ぼくの読書人生でいちばんといっていいくらいかっこいいキャラクターですね。切ないほどの男らしさ。そしてやっぱり行動力が好きです。アクティヴなキャラクターが好きだということですね。
     第6位、令狐冲。いい奴(笑)。とにかくいい奴。あまりにもいい奴すぎてヒーローというより被害者じゃないかという気もするのですが、とにかく気のいい兄ちゃんです。大好き。金庸のキャラクターは他にも魅力的な人がたくさんいます。
     第7位、『銀英伝』からふたり目。ロイエンタール。こいつもかっこいいよなあ。破滅的に生きて、結局破滅する悲劇性が好きですね。女嫌いのくせに女にはモテるところとか、矛盾した性格に惹かれます。
     第8位、栗本薫の初期の名作『翼あるもの』より森田透。この人はね、とても優しい人ですね。9位のキルヒアイスもそうなのだけれど、優しい人が好きです。自分も優しい人間でありたいと思っています。少しは優しくあれているといいのですが、どうだろうなあ。
     で、第10位、伊集院大介。はい、この人も優しい人ですね。栗本薫の作品全作を通じての最大の名探偵であり、弱い人々の守護者のような存在です。意外にも、名探偵キャラクターからはこの人しか入っていませんね。金田一耕助とかも好きは好きなんですけれど。
     第11位は『コードギアス』からルルーシュ。「反逆の」ルルーシュというくらいで、やっぱり運命に抵抗する系統のキャラクターですね。ぼくはとことんこの手の反逆者キャラクターが好きなようです。
     第12位は『燃えよ剣』の沖田総司。土方歳三の相棒ともいうべきキャラクターですが、そのあまりの透明さ、哀切さは強く印象にのこっています。こんなキャラクターをさらっと生み出してしまうのだから、司馬遼太郎という人もたいがい天才ですね。
     第13位、ぼくの最も好きな漫画のひとつ、『恋愛』から主人公の田島久義。狂気のような情熱の持ち主で、一歩間違えばストーカー以外の何ものでもありませんが、そういうところが好きです。
     第14位のキャラクターは『タッチ』の上杉達也。まあ、この人に関してもあまりいうことはないですね。とても辛い、重い運命を背負って、それをだれのせいにもせず、ひとりで孤独に戦い抜いたところが好きです。
     第15位、ジュスラン・タイタニア。いやー、すごいキャラですよね。「中途半端な美形」といういちばんダメになりそうなキャラを、ここまで魅力的に描いてしまう全盛期田中芳樹の凄まじさよ。キャラクターの造形に関してはほんとにものすごい作家だと思います。
     で、第16位なのですが、ガッツではなくグリフィスを持ってくるところがぼくらしいと思ってほしいですね。イシュトヴァーンを好きなのとほぼ同じ理由で好きです。運命に対する抵抗。
     第17位は『Fate』から士郎。まあ、奈須きのこユニバースからひとり持ってくるなら、やっぱり士郎になるのかなあと。凛も桜もセイバーも好きですが、士郎の狂気はすごく好きです。ぼくは狂的なパッションを持っているキャラクターが好きらしい。
     第18位、グイン。まあ、みんなのお父さん的な存在ということで、出てくると安心感がありますよね。あまりにも無敵すぎるのでかれが活躍するとあっというまに問題が片付いてしまうのですが。やっぱり好きは好き。
     第19位はシンジくん。ぼくはかれのことはかなり評価しています。だって頑張っているじゃないか! そりゃ弱音は吐くけれど、それでも戦っているわけで、もう少し評価されてもいいはず。まあ、状況が過酷なんだよね……。
     そして第20位はジョージ・R・R・マーティンの『氷と炎の歌』からジョン・スノウ。非常に人気があるキャラクターですね。ティリオン・ラニスターとどっちにしようか迷ったのだけれど、ジョンのほうにしておきました。ティリオンも好きです。
     女性編の第1位は『アトラク=ナクア』の初音お姉さま。もうダントツで好きですね。邪悪さと可憐さ、攻撃性と被害者性が一身に両立しているところが好きです。これは、男性キャラクターでもそういうキャラクターが好きですね。ぼくの好みなのだと思う。
     で、第2位の真琴。この子はね、純粋にいたいけな無垢の象徴みたいなキャラクターですよね。これは異性として好きというより完全に子供として好きなんですね。ぼくの子供好き(怪しい意味じゃない)が端的に表れているキャラクターだと思います。
     第3位、ヴィアンカ。妹のフィリシアも好きですが、この子の浮かばれなさが好きです。チョロイン属性というか、作者にもあまり愛されていないっぽいところが好き。不遇萌えの窮みみたいなところありますね。
     第4位、黒猫。可愛い。以上。いや、可愛いよね、黒猫。ぼくはフィクションのキャラクターに萌えても恋愛感情は感じないんだけれど、この子だけはちょっとべつで、普通に付き合いたい(笑)。年齢差何十歳あるんだって感じですが……。好きですね。
     第5位はラキシス。まあ、天真爛漫のプリンセスですね。アトロポスやエストも好きなのだけれど、この子のまったくファティマらしくない自由奔放さが好きです。好き勝手にやっているキャラクターが好きなのかも。
     第6位、姫川亜弓。努力の人ですよね。やっぱり「運命に対する抵抗」が好きなんだと思う。マヤのような傑出した天才を持ち合わせていないことを、懸命な努力でどうにしかしようとするその姿勢に強く強く惹かれます。マヤも好きですが。
     第7位、シルヴィア。非常に悲惨な目に遭っている少女ですが、それでもなお、愛を求め、幸福を求め、地獄のような環境のなかであがき、もがいているところが好きですね。『グイン・サーガ』におけるジョーカーのようなキャラクターなのだと思います。
     第8位は躯(『幽☆遊☆白書』)。彼女も被害者性と加害者性を両立させているキャラクターですよね。非常に好きです。ただ、キャラクターとしてあまりに完結してしまっているので、ランキングとしてはそこまで上にはなりません。いいキャラクターですけれど。
     第9位、白鐘直斗。大好きなゲームである『ペルソナ4』からひとり選んでおきたいということで、彼女にしました。非常に知的でそつがなく、女性的なところを抑圧していて、しかしそれがしだいに解放されていくというところが好きです。
     第10位、美樹さやか。『まどマギ』のなかではこの子がいちばん好きです。ぼくはだいたい酷い目に遭っているキャラクターを好きになる傾向が強いようですね。もちろん、それ自体ではなく、その状況に対する抵抗にこそ共感するわけです。
     第11位にはアトロポス。これも不遇萌えに近いかもしれない。妹のラキシスに比べ不幸な人生を送っているように見えますが、そういうところが魅力的です。でも、ドラゴンに惑星を亡ぼさせようとするのはやめろ。ものすごく迷惑だぞ。
     で、すいません、『ペルソナ4』からひとりといいましたが、第12位にりせちーも選んでしまいました。本来、ぼくの好みではないはずのキャラクターなのですが、不思議と好きですね。たぶん、あのグループのなかでこそ輝くキャラクターなのだと思います。
     第13位、ぼくたちの綾波。まあ、あの儚そうなところに惹かれるわけですね。彼女については既に山ほど論考があるのでいまさら語りませんが、やはり加害と被害、サディズムとマゾヒズムが同居したキャラクターだと思います。そこに惹かれます。
     第14位、『コードギアス』のユーフェミア・リ・ブリタニア。非常に「女の子らしい」ままであのルルーシュを敗北に追い込んだというところに凄みを感じます。男性的にならないままで運命と戦っているところが好きですね。
     第15位は真賀田四季。これは『四季』の少女四季に一票、ということにしておいてください。まあ、いろいろな意味で非常に画期的なキャラクターなのですが、ぼくは完璧になる前のわずかに欠けたところがある幼い四季が好きです。
     お次は第16位。えーと、長谷川千雨(『魔法少女ネギま!』)。みごとネギと結ばれてしまった勝ち組キャラクターなのですが、あの劣等感を抱えたまま戦っているところに共感します。ぼくも似たようなものなので。オタクキャラですね。
     第17位、アウクソー。ラキシスとアトロポスは女神なので例外と考えるとして、ほぼファティマ代表ですね。あのダメ男に仕えて幸せそうにしているけなげなところが気に入っています。エストとどっちにしようか迷ったけれど、まあ、アウクソーかな、と。
     第18位、まどか。ヒーロー。ザ・ヒーローというイメージです、ぼくのなかでは。この人を「普通の女の子」として捉える人もいるだろうけれど、ぼくのなかでは普通じゃない異常な人ですね。その異常さに惹かれます。でもさやかより順位は下。
     第19位。川瀬雲雀。ひばりん、かわいいよなあ。強いし。田能村のプロポーズに対し即座に「いいよ」と答えるところに惚れました。いい女だぜ! 
     第20位、サーバルちゃん(『けものフレンズ』)。この子はもっと順位が上でもいいかもしれませんね。このラインナップのなかで今年のキャラクターはこの子だけじゃないかな。やっぱり優しさ、懐の広さ、包容力というところが好きなのだと思います。
     以上、好きなキャラクターランキングでした。まあ、暫定版というか、いまの気分に多分に影響されているランキングですが、だいたいこんな感じだと思います。うーん、参考になるかな? 質問者さんに届いていれば幸いです。 
  • 『コードギアス』がうつ病の壁を乗り越えるとき。

    2016-05-18 02:52  
    50pt

     漫画家の田中圭一さんとブロガーのずんずんさんによる「うつ対談」を読みました。田中さんがうつ病の最中ですら楽しめたあるアニメについて語る下りが印象的です。

    田中圭一(以下、田中) 感受性が鈍ってしまううつ期間は、コンテンツが好きな人にとってとてもつらい期間ですよね。
    ずんずん ええ、それまであんなに毎日を充実させてくれていた映画やアニメを観ても、漫画や小説を読んでも、全然心を動かされなくて、本当に退屈でした。
    田中 僕は、うつがひどい時期でも、かろうじて自分が一番好きなジャンルのものだけは、接していました。
    ずんずん どのジャンルですか?
    田中 僕の場合はアニメです。深夜アニメだけは、うつの時期も継続して観ていました。それも「観てる」っていうよりは、「頭に入れる」っていう感覚でしたけど。
    でもそんな精神状態だったのに、「これは面白いな!」ってアニメが一つだけあって。
    ずんずん それ、気になります! なんていうアニメですか?
    田中 『コードギアス 反逆のルルーシュ』!
    https://cakes.mu/posts/12946

     おお、『コードギアス』すげえ!
     たしかにテレビシリーズは一期、二期ともとんでもない面白さだったものなあ。
     テーマ性の深さとかは置いておくとしても、その純粋な展開の面白さは、過去に見たアニメのなかでも一、二を争うかも。
     『亡国のアキト』も序盤は素晴らしかったのだけれど、ラストで失速しましたねえ。いやまあ、その話はいいのだけれど。
     その一方で、ずんずんさんもうつの時期に自分を支えていたコンテンツについて語っています。

    田中 ずんずんさんは、何か心の支えにしていたコンテンツはありました?
    ずんずん うつの時期は、「商業BLマンガ」を読むことだけが楽しみでした。BLはとても優しい世界なので、うつの自分を支えるために、週に2冊ずつ行きつけの書店で買っていたのですが、そうしたらなんと、その書店の商業BLコーナーが拡大したんですよ!
    田中 なんと!(笑)
    ずんずん 引っ越してからその書店には行けなくなってしまったんですが、その後しばらくして、友達から「あの書店のBLコーナー、縮小したよ」っていう報告が入って(笑)。そのとき、自分が買い支えていたことに気づきました。

     最後は笑い話になっていますが、なるほどなあ、とも思います。
     ぼくにはBL作品が具体的にどう「優しい」のか分析する能力はないけれど、ここでいう「優しさ」とは、『コードギアス』のような「面白さ」とはまた違う概念だと思うのですね。
     『コードギアス』は素晴らしく「面白い」作品だけれど、狭い意味で「優しい」かというとそうではないと思う。
     ひとは次々と死ぬし。裏切りと謀略と野心の物語だし。
     一般的にいって、「面白い」物語って、必ずしもココロに優しくないと思うのですよ。
     その一方でただキャラクターがいちゃいちゃしているだけみたいな物語の脚本としてはどうなんだ?といった作品は、とてもココロに優しいところがある。それはわかる。
     ほんとうにココロが疲れているときは、そういう「優しい」作品しか受けつけないということもほんとうかもしれない。
     疲弊した胃がおかゆしか受けつけないようなものですね。
     おそらく、BL作品の「優しさ」はそれに留まらないものがあるのだろうけれど。
     まあ、もちろんそうかといって「優しい」作品ばかりになって、「面白い」作品がなくなっても困るところではあるでしょう。
     やっぱり「優しい」作品と「面白い」作品、両方が必要だと思うのですよね。
     現代は、非常にまったりと「優しい」作品が増えた時代だという印象があります。
     それだけ疲れている人が増えたということなのかもしれませんが、萌え四コマの単行本を読むことだけが人生の楽しみ、といったサラリーマンはいまどきめずらしくもないでしょう。
     そういう人たちは、より一般的な意味で「面白い」作品をもう受けつけなくなっているのかもしれません。波乱万丈は現実だけで十分だ、と思っている可能性もある。
     そういう人たちにとって、ドラマティックな意味で「面白い」作品は「救い」にはならないのでしょう。
     しかし、その一方で、突き抜けた「面白さ」は、ある種の「癒やし」になりえることもほんとうなんですよね。
     作家の夢枕獏さんが、ただ 
  • 待望の『コードギアス 亡国のアキト』最終章に残念な気もち。

    2016-03-03 22:23  
    50pt

     映画『コードギアス 亡国のアキト』最終章が配信されていたので、ダウンロードして観ました。
     見たのですが――うーむ、どういったらいいだろう、まあ、正直にいうしかないのですが、これがかなり期待外れの出来。
     第四章までは楽しく見ていたのだけれど、この最終章はどうにも苦笑いの連続になってしまいました。
     ど、どこで狂ったのだろう。おっかしいなあ、第一章のときは傑作になる予感しかしなかったのだけれど、終わってみると紛うかたなき雰囲気アニメ。
     「なんとなくそれっぽいセリフ」と「よく考えると無茶な行動」が続き、まったく納得がいかないままに終わってしまった感じです。
     あまり批判的なことばかり書くのは気が引けるのだけれど、この最終章はさすがに評価できないかな、と。
     ほんとうにどうしてこういうことになってしまったのだろう。
     ツッコミどころがひとつふたつある程度でどうこういうつもりはありませんが、それにしてもロジックが通らない物語だったように思えます。
     最後の最後でここまで評価が下がるアニメを見たのはひさしぶり。
     ずっと楽しみに追いかけてきたシリーズだけに、とにかく残念です。
     もちろん、作品の評価はひとによって異なっているわけですが、少なくともぼくは肯定的な評価を下せなかった。
     あいかわらずアクションは迫力があるのだけれど、肝心のシナリオがここまで勢いまかせだと、一本の映画として高く評価することはむずかしいです。
     ちょっとネタバレすると、この映画、最後まで主人公陣営はだれひとり死なないんですよね。
     敵はわりとあっさり死んでいくのだけれど、味方はことごとく死線を超えて生き残り、べったべたのハッピーエンドになってしまう。
     まあ、悲劇が良いとは一概にいえませんが、まさか前回死亡フラグが立っていたユキヤきゅんまで生き残るとは。
     ちょっと意外過ぎてどうなの?と思ってしまいます。
     もちろん、ひとが死ねば戦場のリアルを表現できていることになるというものではないのはわかっています。
     しかし、このエンディングはやっぱり甘すぎるように思う。
     結局、どこらへんが「亡国の」アキトだったのかよくわからない。
     国を失ったイレブンたちの漂白は最後までべつに描かれないで終わっちゃいましたからね。
     第一章の思わせぶりな展開はなんだったんだろうと思ってしまいます。
     ほんと、 
  • 『コードギアス 亡国のアキト』はロボットアニメ王道のテーマを踏襲する傑作だ。

    2015-08-07 03:13  
    50pt

     『コードギアス 亡国のアキト』第四章を観終わりました。いやー、面白かった。
     いままでの三作もそれぞれに素晴らしい出来だったけれど、この第四章において物語はクライマックスにたどり着き、そのエネルギーを四散させて燃え上がります。
     その迫力たるや、ロボットアニメの歴史に残るものです。
     じっさい、このレベルの映像作品を何作も続けて作れる時代になったんだなあということには感慨がある。
     脚本的にはいままでロボットアニメの歴史で延々と語られてきた古いテーマを踏襲しているのですが、そうだからこそ王道の魅力があり、一見、惹き込まれます。
     最近はロボットアニメを見ることも減って来ているのだけれど、このシリーズは見て良かったと思わされます。ほんとうに面白い。
     急転直下の第三章を受けてさらに変転する物語は、本来ならここで完結する予定だったといいますが、急遽、最終章「愛シキモノタチヘ」が付け加わった
  • 海燕の月額3000円コンテンツ充セット(2015年5月編)。

    2015-05-21 11:18  
    50pt

     前の記事で書いた通り、月額3000円以内で楽しめるエンターテインメント・コンテンツをパックで入手するアイディアを提案させていただきます。
     じっさいには個別で買ってもらうことになるわけですが、たとえばこんな内容で1ヶ月をお安く楽しんでみてはいかが、というサジェスチョンです。
     小説、漫画、映画、アニメ、ゲーム、とそれぞれ簡単な紹介を付けてオススメします。
     小説とアニメはテレビや図書館で入手すればいいので0円としてもいいのですが、それではあまりに身も蓋もないので両者ともお金を払って手に入れることを条件とします。
     また、「駿河屋」や「ブックオフ・オンライン」といった古本屋サイトでは一定額以上でないと送料無料にならないシステムがありますが、これはまとめて購入することを前提として送料無料で考えることとします。
     では、一ヶ月のエンターテインメント生活の一例としてご覧ください。

    ・小説――リサイクルショップ「駿河屋」で「我孫子武丸尽くし」。『少年たちの四季』70円。『人形はこたつで推理する』70円。『探偵映画』100円。総計税込み240円。
    http://www.suruga-ya.jp/search?category=&search_word=%E6%88%91%E5%AD%AB%E5%AD%90%E6%AD%A6%E4%B8%B8&adult_s=1&rankBy=price%3Aascending
    ・漫画――「駿河屋」で『DEATH NOTE 全12巻+DEATH NOTE HOW TO READ 全13冊セット』を購入。税込み1300円。
    http://www.suruga-ya.jp/product/detail/WK1714
    ・映画――レンタルサイト「ぽすれん」で『風立ちぬ』、『最強のふたり』、『英国王のスピーチ』をレンタル。税・送料込み553円。
    http://posren.com/
    ・アニメ――アニメ配信サイト「dアニメストア」で『コードギアス 反逆のルルーシュ』全25話を鑑賞。1話25分×25分で10時間25分。税込み432円。
    https://anime.dmkt-sp.jp/animestore/ci_pc?workId=20029
    ・ゲーム――「駿河屋」で『久遠の絆 再臨詔』(プレイステーション2)を購入。税込み450円。
    http://www.suruga-ya.jp/product/detail/144004273001

     総計2975円!
     けっこうオススメの作品をそろえさせていただいたのですが、いかがでしょう。 
  • ルルーシュと純粋贈与の困難。

    2014-11-13 02:17  
    50pt


     うに。このところ、ハードカバーの厚い本ばかり読んで、漫画やライトノベルを読んでいないのでここに書くことがないなあ。たぶん、ここを読んでおられる方の大半はそういう作品に関する記事を期待しておられると思うのですが。
     うーむ、あちらを立てればこちらが立たず、むずかしいものです。まあ、まったく読んでいないわけでもなく、『絶園のテンペスト』とか全巻を読み上げているのですが、特に感想がない。
     というか、『ヴァンパイア十字界』もそうなのですが、推理ものは何を書いてもネタバレになってしまうので書きづらいのですよね。
     あ、『ヴァンパイア十字界』はほんとうに本物の歴史的傑作ですので、絵柄に騙されずぜひご一読ください。シナリオの完成度が異様に高いことがわかると思います。
     作者本人が書いている通り、あまりに複雑にプロットが錯綜するので、「こういう話だからオススメ!」といいづらいのがきついところなんですけれどね。いや、ほんとうはいえるんだけれど、ネタバレになってしまう。だから、何もいえない。
     ぼくの見る目を信じるという方は、あれこれネットで情報を仕入れたりせずにご一読ください。面白いよ!
     まあ、そういうわけであまり書くことがありません。『ココロコネクト』を読もうとか、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』を読み返そうとか、思うには思うのですが、いったいいつになることか。
     『無職転生』とか『勇者様のお師匠様』とか、なろう小説も溜まっているんだよなあ。『リーングラードの学び舎より』は本になるんだっけ。うまく行ってほしいものです。
     まあ、時間というより集中力が足りないのでしょうね。1日は24時間あるわけですから、そのうち12時間くらい集中して読みつづけられるだけのコンセントレーションがあればすぐに進むと思うんだけれど、どうもすぐ気が逸れてしまう。情けない話です。まずは部屋を片付けろという話かもしれませんが……。
     そんななか読み上げた中沢新一『愛と経済のロゴス』、とても面白かったです。「カイエ・ソバーシュ」と名づけられたシリーズのなかの一冊なのですが、シリーズのほかの本は読んでいません。しかし、これだけでも十分にぼくの興味を満たしてくれました。
     ぼくがこの本を読んだのは、「純粋贈与は可能なのか?」と知りたかったからです。純粋贈与――つまり、何の見返りも求めることなく、ひとに贈り物を与えることですね。
     そういう行為には正当性があるのか、そのことについて知りたかった。そして、この本を読む限り、どうやらそれは不可能である、あるいは困難が付きまとうという結論になりそうです。 
  • 『コードギアス 亡国のアキト』第二章の見どころはレイラさんのおっぱい?(2034文字)

    2013-09-20 18:54  
    52pt




     劇場映画『コードギアス 亡国のアキト』の第二章を観てきました。ネタバレなしだとあまり語れることもないのだけれど、今回もアクションバリバリ、お色気たっぷりでおもしろかった。
     学級委員長系きまじめヒロイン、レイラさんの巨乳は迫力満点。終わってみるとそこがいちばん印象にのこった気がしないでもない。
     そもそも『コードギアス』という作品は、きわめて扇情的というか視聴者の感情を煽ることに特化したようなところがあります。
     それはケレン味たっぷりのアクションや、「泣かせ」シーンの連発などとともに、女性陣(ときに男性陣)のエロティックな描写に表れていました。
     『アキト』ではその側面が強化されていて、より男性ウケする作りになっている気がする。恋愛要素もほとんどないし、内容的にもハードな軍事ものの側面が強いし、今回は男性向けを狙っているのかな、と。
     ただ、商業的に見れば『ギアス』のつよみは男性ファンも女性ファンもいることだと思うので、あまり男性向けに特化しすぎるのは良くないかもしれません。
     じっさい、このシリーズ、おもしろいんだけれど、『反逆のルルーシュ』ほどの人気を得られるかというと微妙だと思うんですよね。
     ただ、さすが劇場作品だけあって、アニメーションとしてのクオリティは『ルルーシュ』をはるかに凌いでいることも事実。
     なかでも中盤以降の作画は美しく、いや、アニメは進歩しているなあ、と素直に感心してしまいました。
     『空の境界』あたりからハイクオリティな劇場アニメがいくつも作られるようになり、受け手としては嬉しいことこの上ない。
     もちろん、昔から劇場アニメ映画はあったわけだけれど、最近は本数が劇的に増えてきていますからね。時間と手間をかけてテレビではできない水準の作品を出してくるあたりが劇場アニメの魅力。
     まあ、なかには「ただのテレビの総集編をわざわざ劇場で流されても……」という作品もありますが、全体的に見れば画一化しがちなテレビアニメとは一線を画す高品質で個性的な作品がたくさん出てきていると感じています。
     『空の境界 未来福音』や『ペルソナ3」にも期待していますよ。もちろん、『まどマギ』も見に行く予定です。
     というあたりで、以下、ネタバレ。映画をまだ観ていないひとは読まないようお願いします。
     
  • 拡大しつづける『コードギアスサーガ』はセカイ系的想像力を超克する。(2034文字)

    2013-08-15 00:14  
    52pt




     バンダイチャンネルの見放題プランに参加している。月額1000円で数百からのアニメーション作品を観れるというプランだ。
     ぼくの場合、じっさいには1000円分観ているとはとても云えないのだけれど、時々、なつかしの作品を観返したりできることはとても楽しい。
     きょうも『コードギアス 反逆のルルーシュ』のある回を観た。いや、ほんとうにこのアニメは大好きだ。
     歴史に名をのこすほどの傑作ではないかもしれないけれど、このあざとさ、やりすぎ感が何ともたまらない。
     あとから一気見するより、リアルタイムに放送されるエピソードを追いかけたほうが楽しい作品だと云えるだろう。
     ちょっと不条理なほど逆転また逆転がつづくスリリングな展開を楽しめる。じっさい、継続して視聴していた頃は「え? いったい何が起こったの?」の連続だったものだ。
     そのあざとく視聴者を裏切っていくところが、作品の普遍的価値を損ない、歴史的名作と呼ぶ値するだけの品格を削いでいるという側面もあるだろう。
     しかし、とにかくただ展開を追いかけるだけなら、これほどおもしろいアニメはめったにない。
     過剰なまでに個性的な美形キャラクターたち、ケレン味たっぷりの演出の数々、そしてスピーディかつ意外性たっぷりな展開、と最高の中二病アニメと云えるのではないだろうか。
     『反逆のルルーシュ』は、世界を統一する皇帝となった主人公、ルルーシュの自己犠牲的な死によって幕をとじる。
     しかし、かれ以外の人物に焦点をあてた『コードギアスサーガ』は、いまなお、アニメ『亡国のアキト』や漫画『双貌のオズ』によって続いている。それぞれ出来不出来はあるが、おもしろい作品である。
     『反逆のルルーシュ』の時点では、『コードギアス』は、世界に反逆する少年ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの強烈な個性なくして成り立たないかのように思えていた。
     しかし、『亡国のアキト』や『双貌のオズ』を見る限り、実はこの世界はルルーシュがいなくても成立するだけの深さと広がりとを持っていたようだ。
     むしろこのサーガはルルーシュから解放されることによっていっそう広がりを獲得したようですらある。
     
  • 男性向けではなく、女性向けでもない群像劇を読みたい。(3142文字)

    2013-07-28 18:39  
    52pt




     ひとにはそれぞれ好みがあります。あるひとにとって理想的な作品もべつのひとにとってそうではないのは自然のこと。もちろんぼくにも好みの偏りがあり、「こういう物語を読みたいなあ」という漠然とした思いもあります。
     で、きのうSkypeで話しあって気づいたのですが、ぼくは「男女が互角にやり合う群像劇」を読みたいという欲望があるらしい。
     いままでも「もう少し女性キャラクターが活躍する話を読みたいなあ」とは思っていたのですが、それだけなら、当然、いろいろあるんですよね。でも、ぼくの好みとは少しずれている。
     ぼくはやっぱり「複数の男性と女性が互角に入り乱れて戦ったり恋したり憎みあったりする物語」を読みたいのだと思う。
     こう書いてもまだ、あれがある、これがある、と思い浮かぶひとはいるでしょう。しかし、じっさい、ぼくの好みにぴったり合う作品は少ない。
     『Fate/Stay night』はなかなかいい線を行っていると思う。アーチャー、ランサー、バーサーカー、ギルガメッシュといった男性陣と、セイバー、キャスター、ライダーといった女性陣がほぼ対等に入り乱れて戦っている辺り、非常にぼく好み。
     しかし、あれはやっぱり衛宮士郎を主人公とした「少年の物語」なので、群像劇としては一定の枷が嵌まっている気はします。そこが惜しいですね。
     『Fate』には『Fate/Zero』という物語もあるわけですが、こちらはより男性中心の物語で、ほぼ紅一点のサーヴァントであるセイバーもあまり格好良くは活躍しません。
     いや、十分、活躍してはいるのですが、あの作品で印象に残るキャラクターといえば、やはりライダーことイスカンダルなのではないでしょうか。そこがまあ、不満といえば不満です。
     つまりまあ、完全な男性主人公の物語にぼくの好みを満足させるものを求めることには無理がある。それなら、女性向けではどうか。
     ぼくはそれほどくわしくないのですが、コバルト文庫などには女性主人公で、壮大な物語を展開した作品もあると聞きます。あるいはそういった作品ならぼくの欲望を満たしてくれるかもしれない。
     でも、どうだろう、女性向けの作品だと今度は男性キャラクターが、同性の目から見て弱い印象になってしまう気がするんですよね。
     もっとも、少女小説と呼ぶのが適正かどうかはわかりませんが、小野不由美『十二国記』はほぼぼくの要求をほぼ完全に満たしているように思います。
     けれど、あの作品にはなんというか「色気」がない。徹底的にストイックなので、ぼくはもう少し恋愛したり愛憎が絡んだりするほうが好みなのですよね。
     女性向けの作品でいうと、よしながふみの『大奥』などはどうか。悪くない。むしろ素晴らしく性差を相対化できているとは思うのですが、ぼくはふしぎとこの作品のキャラクターに親しみやすさという意味での魅力を感じません。
     これは相性が悪いとしかいいようがないかもしれない。ちょっとここらへんは要分析ですが、とにかく『大奥』に対しては「キャラクターの魅力」をあまり感じないのです(客観的にはよくできた造形だと思うのですが……)。
     そういうふうに考えていくと、ぼくの欲求を満たす作品とは、男性向けでもなく、女性向けでもないということになりそうです。あるいは云いかえるなら男性向けでもあり、女性向けでもある、そういう作品を読みたいな、と思うのですね。
     たとえば『咲』なんかはかなりぼく好みです。でも、この作品にはほぼ女の子しか出て来ませんから、ぼくとしては物足りない。もっと老若男女が混じり合っている作品が好ましい。
     そういう意味では、『コードギアス』あたりはとても好きですね。この作品では男女がほぼ互角にやりあっているように見えるので、かなり理想に近いといえます。
     ただ、これもあくまで「ルルーシュという少年の物語」なので、その根幹を揺るがすキャラクターは排斥されることになる。
     ユフィことユーフェミアはそのキャラクターのひとりであったとぼくは考えていて、つまりはユフィが最後までルルーシュと互角に戦う『コードギアス』を見てみたいのです。
     田中芳樹や栗本薫の戦記もの、あるいはファンタジー小説はどうか。ぼくはこれらの作品のファンなのですが、やはりきわめて魅力的な男性陣と比べると、女性キャラクターが弱い気がします。
     ここらへんは時代的な限界かもしれません。たとえば『タイタニア』だと、四公爵のうちふたりくらい女性だと嬉しい感じ。
     『グイン・サーガ』なら、リンダとアムネリスとイリス(オクタヴィアではなく)が、それぞれ一国を背負ってナリスやイシュトヴァーンと戦いを繰りひろげてくれたらぼくとしてはとても満足だったと思います。ケイロニアの男装皇帝イリス! 非常に見てみたかった展開ですね。