-
百合漫画とBL漫画を一作ずつ紹介するよ。
2014-08-05 07:0051pt
ども。同人誌制作の作業が終わって何となく力が抜けている海燕です。この前、Kindleで30冊くらい漫画をまとめて買ったので、順番に消化して行っています。
実力に定評がある作家さんの安全牌の作品は既に読んでいるわけで、ほとんど名前も聞いたことがないような作品ばかりを直感だけで選んで買って行ったのですが、さてさて、あたりは何作ありますやら。
面白そうな漫画を選ぶ嗅覚に関してはそれなりに自負があるのですが、それでも当然、全部自分の好みに合うとはいかないはずで、こういう行為は冒険ではあります。
しかしまあ、安牌の作品ばかり読んでいると、必然的に新しい発見がなくなってゆくわけで、どこかでセレンディピティに期待して、未踏の沃野へ旅立たないといけないのだろうと思いますね。
そういうわけで、そんな30冊のなかに含まれていた1冊が、天野しゅにんた『私の世界を構成する塵のような何か。』百合漫画です。
しゅにんたって名前すごくね?とか、どうでもいいことも考えてしまいますが、うん、これは良いですね。
一本の漫画として、そんなに傑出した表現力があるとは思わないのだけれど、この感性? 着眼点? キャラクター? それらは面白い。大絶賛の大傑作!というほどではないけれど、ちょっと興味深いです。
この物語のなかには、七人の女性たちが登場します。ある大学で偶然にグループを組んでレポートを出すことになった7人なのですが、それぞれが相当に異なる方向性の個性を持っていて、しかもぐちゃぐちゃに絡み合います。
初めはだれがだれやらもよくわからないのですが、それがわかってくると面白くなってくる。主人公は恋愛ごとに興味がない女の子で、お約束でべつのある女の子と恋に落ちます。
で、ふたりはめでたく結ばれるのですが、しかし、この先、ひと筋縄では行かない雰囲気をただよわせています。
作中、ゾクゾクする、というほどではないんだけれど、ちょっとクールなひと言とか飛び出してくるので、なかなか印象は悪くない(とか書くと偉そうですが)。続刊も読んでみたいと思わせるものがあります。
「百合」というジャンルは、たとえば「ボーイズ・ラブ」に比べて、甘ったるい世界を描き出してゆく印象があったのですが、この作品を読んでいるとそんなこともないかな、という気がしてきました。
いや、この作品も相当に甘い恋愛ものではあるんだけれど、ベーシックにあるものがきわめて辛辣な気がする。その辛辣さを突き詰めたほうが面白い気はするんだけれど、百合とはいえ、あくまで恋愛漫画なのでたぶんそういう展開にはならないでしょう。
でも、考えてみれば女の子の世界をシビアに突き詰めていけば、そりゃ男の子同士よりも辛辣な一面も出て来るのが当然だよな、ということは新たな発見でした。だって、女子のほうがリアルに生きている生き物だものね。
で、そのボーイズ・ラブ漫画で、やっぱり甘ったるい内容なのが、雨隠ギド『悪人を泣かせる方法』。あまーーーい。この人は -
百合漫画の繊細。雨隠ギド『終電にはかえします』を読む。
2013-12-07 21:3953pt毎度毎度同じような書き出しで恐縮ですが、雨隠ギド『終電にはかえします』を読みました。
百合漫画です。ぼくはわりに百合ものが好きで、小説やら漫画やらいろいろ読んでいるのですが、あまりおもしろいと思うものには巡り会いません。しかし、これは良かった。
何とも云えず、良かったですね。一読した後も、くり返しくり返し読み返し、楽しんでいます。数本の短編が収録された短篇集なのですが、どの話もそれぞれに魅力的でした。
160ページほどの内容で720円というのは、少々高いようにも思えますが、まあ部数があまり出ていないのだろうから仕方ないのかなあ。とにかく個人的には値段に見合うだけの作品だったと捉えています。
それでは、何がそれほど良かったのか? これはむずかしいところで、そうだな、何が良かったのだろう。
収録作はいずれも云ってしまえば他愛ない話で、特別に壮大だったり、感動的だったりするわけではありません。たとえば萩尾望都の「半神」がすばらしいというのとは、わけが違います。しかし、それはそれとして、やはり染み入るような魅力があるのですね。
百合ものは、たいてい物語そのものはそう壮大な話ではない。まあ、『魔法少女まどか☆マギカ』みたいに宇宙スケールに拡大してゆく場合もありますが、それは極端な例外で、ほとんどは主人公たちの関係性に主眼が置かれているのだけれど、この漫画はこの話はその関係性が良く描けていたということなのかもしれません。ちょっとよくわからない……。
以前から語っていますが、ぼくは百合漫画のバラエティにちょっと不満があります。それぞれに趣向を凝らしていることには違いないのだけれど、それにしても、他愛ないラブロマンス、ないしラブコメディに偏っている気がしてならない。
いや、そういうものだと割りきって楽しむものだということはわかっているのですが、もう少し、エンターテインメントとして波乱に富んだ物語も読んでみたいな、と。
まあ、ぼくが知らないだけで、さまざまな作品があるのかもしれません。もしそうなら、教えてもらえれば読みますが、どうなんだろう。
百合とは少し違う、むしろレズビアン小説と云うべきなのかもしれませんが、サラ・ウォーターズの『荊の城』などはすばらしい出来でしたね。あの水準のものをもっと読みたい。あれは『このミス』の首位を取ったりしているレベルなので、とてもむずかしいだろうとは思いますが――。
-
雨隠ギド『甘々と稲妻』に、何だか胸がほっこりしまくり。(2074文字)
2013-10-03 07:0053pt
【雨隠ギドという作家】
ども。あい変わらずちょっとしたトレーニングを続けています。
ランニングマシンで何キロか奔ったり、筋トレマシンで押したり引いたりするだけの、まあお遊びのような「トレーニング」ですが、何もやらないよりはいいのではないかと。
「完璧でないと意味がない」と決めつけて何もやらないことはいつでも最悪ですからね。不完全でもいいからとにかく実行すること、そこからしか何もスタートしません。
まあ、そうはいってもいつまで経ってもここから進歩しなかったらやっぱりダメなんだけれど。
さて、今回取り上げさせていただくのは、雨隠ギド『甘々と稲妻」。
自分であらすじを考えるのがめんどうなので、Amazonの内容紹介を引用させていただくと、だいたいこんな話。
妻を亡くし、ひとりで娘の子育てに奮戦する数学教師・犬塚。料理が苦手で小食で味オンチな彼は、ひょんなことから教え子・飯田小鳥と、一緒にごはんを作って娘と3人で食べることに!! 月刊「good!アフタヌーン」誌上で連載開始当初から話題沸騰! 愛娘&女子高生と囲む、両手に花の食卓ドラマ、開幕です!!
よくあると云えばよくある設定の漫画です。しかし、これがなかなかいい。というのも、子供が可愛くて、女の子も可愛いので、それだけで十分に楽しめるんですね。
「両手に花」という形容が正しいかどうかわからないけれど、キュートな子供と女子が絡む話が好きなひとにはオススメできるかもしれません。
いまのところ特別に恋愛要素はないように見えるのだけれど、これから先はおそらく何かしらの恋愛が絡んでくるのでしょう。
「先生と生徒の禁断の恋」とか、まあ、ベタだけれどいいよなー。同テーマの『やさしいセカイのつくりかた』のときも思ったけれど、これ、完全に少女漫画だよな、と。
ひと昔前なら確実に少女漫画として発表されていたはずの作品です。それがいまは青年漫画として売られている。
どういうことでそういうふうな時代になったのか、漫画評論家ではないぼくにはよくわかりませんが、ちょっとふしぎな感覚があります。
で、Amazonで調べてみていま初めて気づいたのけれど、この雨隠ギトさん、もともとボーイズ・ラブ漫画を描いていた作家さんなんですね。なるほど、なるほど。
【繊細なる「食」の世界】
この漫画がおもしろいのは、
1 / 1