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記事 6件
  • その男バトー。声優・大塚明夫がサイボーグに魂を込めるとき。

    2015-04-02 14:43  
    51pt



     大塚明夫『声優魂』を読んでいる。
     くわしい感想は読み終えたあとに書くことにするが、とても面白くまた役立つ一冊である。
     ひとり声優を目ざす若者だけではなく、あらゆる業種のひとに推薦できる。未読のひとにはオススメ。フリーランスのひとには殊に刺さる内容だと思う。
     もっとも、いま非常に売れていて、Amazonにも在庫がないようだけれど。まあ、いま注文しておけばしばらく後にはとどくと思います。
     個人的には、「戦友」山寺宏一との交友を綴ったくだりが非常に面白かった。
     大塚明夫に山寺宏一といえば、これはもう、『攻殻機動隊』のバトーとトグサである。
     バトーが全身サイボーグの巨漢であるのに対し、トグサは公安九課唯一の生身の男、同質の集団に意図的に組み込まれたイレギュラーという存在だ。
     映画『攻殻機動隊』の頃から目立つふたりだが、テレビアニメ『STAND ALONE COMPLEX』ではバトーはサイボーグであるにもかかわらずだれよりも人間的な男となり、トグサは秀抜な推理力を駆使して事件の深層にもぐり込んでいく「使える若手」となっている。
     みごとな初期設定を生み出した士郎正宗も天才としかいいようがないが、その設定をさらに洗練させて味わい深いキャラクターを生み出した神山健治監督も凄い。世の中には凄いひとがいるなあ。
     そして、このふたりを演じる大塚明夫や山寺宏一も凄いのである。
     このふたりにとって出世作となったのは、映画『48時間』の吹き替えだったという。
     この映画のテレビ放映の際、ふたりは主演に抜擢され、ニック・ノルティを大塚明夫が、エディ・マーフィを山寺宏一が演じることになる。
     ここで成功すれば栄光はわがもの、しかしもし失敗すれば目もあてられない、そんな天王山の大一番――ふたりは10時間に及ぶリハーサルを行って現場入りし、そしてみごとその役をやり遂げて評価を高めるのである。ドラマティック!
     公安九課きっての「戦友」バトーとトグサを演じるふたりが私生活でも「戦友」の間柄だというのは面白い。
     いくつもの修羅場をくぐり抜けていくと、自然とこういう「つながり」がでてきていくのだろう。
     それはやはり「LINEに返事をしなきゃ友達じゃない」といったレベルの「友達」とはわけが違う、本物の親友なのだ。
     高い実力と矜持を持ち合わせ、いざ「戦場」に立ったときにはだれよりも頼りになる男――それをこそ「戦友」と呼ぶのだと思う。
     山寺さんは普段はとても陽気で気さくな人物に見えるし、じっさいそうなのだろうけれど、その陽気さの裏には人並み外れた修練の日々があったに違いない。そう思うと、襟を正したいような気分になる。
     そんなバトーを、大塚は「アンドレ」だと思って演じているという。
     『ベルサイユのばら』のあのアンドレ・グランディエである(ふと思ったのだけれど、いまでも『ベルサイユのばら』って通用するのだろうか。「アンドレってだれですか?」とかいわれたりして。ぐぬぬ)。
     「攻殻機動隊」こと公安九課のリーダーであり、あらゆる面で自分より一枚上手の素子に、バトーは恋をしているように見える。
     しかし、素子はバトーに対しどこまでもそっけない。
     大塚明夫が「印象に残っている」と語るバトーと素子のやり取りは、そんなふたりの関係性を象徴しているようで興味深い。

    「今度二人で映画でも観に行かないか」
    「ありがとう。でも本当に観たい映画は一人で見に行くことにしているから」
    「じゃあ、それほど観たくない映画は?」
    「観ないわ」

     視聴者としては「にやり」とするシーンだが、バトーとしてはたまらないだろうなあ、これ。 
  • いまでも『東のエデン』はやっぱり傑作だと思う派閥は集まれ。

    2014-10-10 05:22  
    51pt


     どもっす。海燕です。
     ただいま深夜というか早朝の04時30分、病身を抱え、こんな時間まで何をしていたかというと、仕事をしていました――というのは半分くらいほんとうで、ぼくの場合、てれびんと電話で無駄話をしながらだらだらと原稿を仕上げてゆく作業が仕事にあたるのです。
     ウェブログ・イズ・マイビジネス! いやー、この気楽きわまりない作業でともかくも月額何十万円かの収入が発生してしまうのだからネット社会は恐ろしい。
     まあ、ぼくが日々、わりととんでもない分量を書きつづけているからという事情もあるでしょうが。
     そう、ぼくはけっこう書くのが速い人なのです。赤川次郎とか栗本薫とか、昔は人間離れした速筆の人たちだと思っていたけれど、たぶんいまのぼくは全盛期のかれらと大して変わらないスピードで書いていると思います。
     もちろんぼくの場合、その速度で小説を書きつづけることはできないので、能力的に赤川さんたちに比肩しうるとはかけらも思いはしませんけれどね。
     それにしても、純粋に速度だけを取るならば、たぶん相当速いほうに分類されるだろうと思うんですよ。
     このブログの記事一本に、まず30分とはかかりません。ちゃんと集中していると15分程度で仕上がります。えーと、秒速にして2、3文字程度でしょうか。我ながら速いなーと思いますね。
     たぶん、ペトロニウスさんあたりはぼくよりもっと速いんじゃないかと思うんだけれど。よくもまあ激務の合間を縫ってあれだけ長い記事を書くものだといつも感心します。
     ぼくはまあ、いくらか仕事が増えたとはいえ、文句なしの暇人なので、書きたくなったら書けばいいだけであるわけなんですが。
     書くのは楽しいですね。考えようによってはこの夜更けまでマジメに仕事を続けているという見方もできるわけで、そういうふうに考えると、ぼくのナルシシズムはわりと満たされます。ぼくって仕事熱心!みたいな。
     しかしまあ、そういう見方はどうにも無理がありますよね。だって、どう考えても好きなことを好きなだけ好きなように書いているわけですから。
     書くことはほんとうに好きです。歳を取るほどにどんどん好きになっていく。たぶん、経験を積んだことによってより自分の理想に近い文章をすらすらと書くことができるようになっているからでしょう。
     昔は自分のスキルを5点とか評価していたのだけれど、いまは20点くらい上げてもいいと思っています。あと100年くらい生きて修行しつづけると60点か70点には届くかも。届かないかも。
     ちなみに、いうまでもなく100点満点ではありません。芸の世界に上限は存在しないのです。120点とか300点を取ってしまう才能が現実に存在するのがこの業界。
     上には上がいるわけで、何というか、ホッとするものがありますね。一生このおもちゃで遊べるな、という感じ。
     そこらへん、天才は可哀想なもので、若くして自分の芸術を究めてしまう人が現実にいるわけなんですよ。そうすると、その後が大変になってくるわけで、まあ凡人に生まれて良かったな、と思うしだいです。
     というのが、きょうの話の枕。すいませんね、だらだらと長くて。ちゃんと集中力をもって書いているときはコンパクトにまとめようという意志が働くのですが、何しろ早朝05時なので、もう半分眠くなっていて、きちんと構成しようと思えません。いやー、申し訳ない。
     というわけで、何ゆえこの夜中に閉じかけた目をこすりながら記事を書いているかと、ペトロニウスさんの久々の長文記事を読んだからです。
    http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20141009/p1
     しかもテーマはぼくの大好きな『東のエデン』。これはアンサー記事を書かないといけないにゃーということでいまこの記事を書いているんだにゃ。
     いかんいかん、眠すぎて語尾がネコるにゃ。――眠すぎて色々おかしなことになっているけれど、まあいいや。とにかく『東のエデン』の話なのです。
     この作品は皆さん、もちろんご覧になっていると思いますが、神山健治監督の傑作オリジナルアニメーションです。どのくらい傑作かというと、神山さんのキャリアのなかでも『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』に次ぐくらい。
     『攻殻SAC』はまあ、ゼロ年代日本におけるエンターテインメントアニメーションの最高傑作ともいうべき別格の超絶名作なので、その次というと、いかに高い評価になるかわかると思います。
     で、ペトロニウスさんはこの素晴らしき『東のエデン』を取り上げ、テレビシリーズは傑作だけれど劇場版はイマイチ、といったことを書いています。

     まず結論から言うと、テレビシリーズを一つのまとまりとすると、凄いレベルの傑作だと思います。★5つ文句なし。特に演出のレベルが群を抜いている。超一流ですねさすがの神山さん。しかし劇場版は、まったく面白くなかったし、エンターテイメントの敷居を少し超えてしまって、テレビ版で設定した「問い」に対して答えようとしているんだけれども、物語の次元で答えることができなくて、哲学問答のような形式で答える形になってしまっているので、これはエンターテイメントとは言い難いなということで★3を割り込む(=僕にとっては物語失格の線引き)★2つのラインでした。

     神山ファンのぼくとしてはこの意見にガツン!と反論してやりたいところなのですが、ぐ、ぐぬぬぬぬ、できないにゃーと、屈辱のあまり再度ネコ化。
     いや、だって、この劇場版、だれがどう見てもあきらかに問題に的確な答えを出せていないんですよね。この点に関しては、まったく弁護の余地がない。 
  • モンスター消費者が生まれるとき。そのサービスは「あたりまえ」ではない。(2101文字)

    2012-12-05 13:14  
    53pt
    お金を払う以上、適切なサービスを受ける権利がある。しかし、そうはいっても、ただで、あるいはごく少しの金額で、ひとが奴隷のように奉仕して当然だと考えることはやはり行きすぎでしょう。ひとを自分に奉仕するだけの存在としか見られない味方は幼稚であり、狭いナルシシズムから出ていません。なぜ、日本ではそういう「モンスター消費者」が増えたのでしょうか?
  • 押井守と神山健治で考察する映画におけるファンサービス。(1276文字)

    2012-11-14 12:00  
    53pt
    神山健治監督は、押井守監督の一番弟子です。かれは初め「押井守のコピー」を目ざしたといいますが、映画『009』の制作にいたって、ついにそのことをあきらめたようです。それでは、押井守と神山健治の落差とは何なのか。ぼくには、それはたとえばファンサービスという形で表れているように思えます。神山作品と押井作品を比較して、その点について考えてみました。
  • 【無料記事】「正義は伝播せず、悪意だけが伝わってゆく」神山健治監督の絶望との戦い。(2222文字)

    2012-11-07 11:13  
    『攻殻機動隊 STAND ALONE COMOLEX』が思わぬ盛り上がりを見せたときから、神山健治という監督に注目していました。『攻殻』から『東のエデン』、そして『009』と、かれの描くテーマは深さを増しています。おそらく、そこに着目して見ないと、かれの作品は何がおもしろいのかさっぱりわからないでしょう。それは同時代の『まおゆう』などともシンクロします。
  • 【無料記事】いきなりクライマックス! 映画『009』は圧倒的速度の問題作。(1463文字)

    2012-10-28 08:50  
    『サイボーグ009』といえば、いまから3、40年前のコンテンツであるわけですが、神山健治監督はそれを現代によみがえさせてみせました。今回もひとりで脚本と監督を務めているわけで、この人もなかなかとんでもないひとだな、と思いますね。肝心の映画の出来はどうだったのだ、ということは本文を読んでもらうとして、ぼくは嫌いじゃないですよ、この映画。ぼくはね。