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記事 2件
  • 飯田一史『ウェブ小説の衝撃』で納得したところと物足りないところ。

    2016-03-03 01:34  
    51pt

     飯田一史『ウェブ小説の衝撃』読了。
     ここ数年、「小説家になろう」や『E★エブリスタ』から始まって無数の作品を世に出しているウェブ小説を特集した一冊。
     ぼくは「ウェブ小説」ではなく「ネット小説」という表記を使いますが、内実は同じことです。
     「インターネット上で発表された小説」のことですね。
     昨今、「なろう」や「エブリスタ」から生まれた作品は数多くが出版され、商業的にも成功し、注目を集めています。
     しかし、そうはいっても「しょせんウェブ小説」と見られる傾向はなくならないわけで、そういう意見に反論する本といってもいいでしょう。
     で、その反論の内容がどうだったかというと――うーん、イマイチ?
     いや、誤解してほしくはないのですが、この本の内容に特に問題があるというわけではないのです。
     むしろ、全体が限りなく見通しづらいウェブ小説の世界をともかくも一覧したということで、画期的な意味のある本だと思う。
     今後、ウェブ小説について語る人は、肯定するにせよ否定するにせよ、この本の内容を参照せざるをえなくなるはずです。
     そういう意味ではなかなかエラい一冊といってもいいかと考えます。
     しかし、やはりこの本だけだと片手落ちという印象は否めない。
     この本で語られていることは、どこまでも「ウェブ小説ビジネス論」でしかないわけで、「ウェブ小説文化論」とでもいうべき本が必要だと感じます。
     そうじゃないと、いくら「こんなに売れている」、「こんなにウケている」といわれたところで、もうひとつ納得できないのですね。
     どんなに売れていても、ウケていても、くだらないものはくだらないとしか思えないわけですから。
     セールスを絶対の尺度とするような見方は、インターネットではわりとメジャーになりましたが、ぼくはそういう尺度で物事を考えようとは思わないのです。
     だから、この本のどこが悪いというわけではないのだけれど、「ビジネスではなく文化の側面からウェブ小説を熱く語った本が欲しいな」という思いは残ります。
     ビジネスと文化。両方の側面がそろって初めて、「なるほど、ウェブ小説ってすごいんだな」と心から納得できるでしょう。
     だれかそういう本を書きませんか。ものすごく大変だと思うけれど。
     この本のなかで語られているものは、 
  • 初音ミクは新時代のメディアミックスを導く天使となるか。

    2015-03-31 01:22  
    51pt


     しばらく前に初音ミクのジグソーパズル(300ピース)を買ったのだけれど、なかなかやる機会がありません。
     まずはケースを買わないと始められないな、と思うのですが。
     ぼくは以前から初音ミクが象徴するボカロ(ボーカロイド)文化に興味を抱いていて、ちょっとふれてみたいな、という気はあるのですが、どこから手を出したらいいのかわからなくて放置しています。
     ニコニコ動画でミクさんの動画をいくつか見てみたのだけれど、それだけではボカロ王国の門のなかに入ったともいえないのではないでしょうか。
     じっさいにいくつか聞いてみた感想といえば、センチメンタルな歌詞が多いかな、という程度。
     もちろん、それもボカロの表面をさらっと撫ぜたような評価に過ぎないのでしょう。
     なぜいまさらボカロに興味を持つのか?
     それはやはりボカロが若い世代を象徴するカルチャーであるように思われるからです。
     ぼくがしっている文化とはまた違うテン年代の若者たちの文化。
     おお何か面白そう、わけわからなさそう、変な人がいっぱいいそう、ということでわくわくするのですが、でも、どこから手をつけたらいいかわからないんですよね。
     まずは読みさしの『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』を読み終えなくてはならないのかもしれません。
     それとも、もっとニコニコにアップされている動画を見て行くか――ぼくは初期のボカロはあまり受け付けなかったひとなのですが、最近上がっている曲の数々は素直に「ええなー」と思います。
     技術が向上しているのか、こなれてきているのか? いや、ぼくがボカロに慣れただけかもしれません。
     それにしても、ボカロ文化はいま、若者層において非常にメジャーなものなのでしょう。
     ただ単にボカロそのものだけではなく、その周辺文化もすごい勢いで拡大していっているようです。
     先日書店の店頭でぶらぶらしていたところ、ボカロ小説として有名な『カゲロウデイズ』がたくさん平積みされていて、780万部と書かれていました。
     は?
     既刊わずか6巻で780万部?
     それがほんとうならいまのライトノベルで最も売れている『ソードアート・オンライン』を大きく上回る数字ですし、おそらくライトノベル史上でもここまで売れた作品はないはず。
     『ロードス島戦記』の全盛期でも敵わないんじゃないかな。
     うーん、ちょっと信じられないような数字なのですが、でも、まさか出版社がウソをつくはずはないから、事実なのでしょう。
     ことほどさようにボカロ文化は若者層にとってメジャーだということなのでしょうね。凄いなあ。
     年長の世代から見れば時にイミフとも思える作品なり文化が、若者の熱い支持を得てメジャーになっていく。
     いつの時代もくり返されて来たことではありますが、ボカロ小説もまたそういうもののひとつなのかもしれません。
     いや、もちろん、ボカロを支持する「大人」はたくさんいるけれど、それにしたってボカロ小説はやはり若者文化でしょう。
     ぼくはいままでボカロこそある程度しっていても、ボカロ小説については???な状態でした。
     いわばまったくのノーマーク。その上でただ遠巻きに眺めているだけだったのですが、これくらいはっきり数字になって出て来ると興味が湧いてきます。
     うーむ、とりあえず「カゲロウプロジェクト」から入ってみるとするか。
     実は『カゲロウデイズ』は2年近くまえにKindleで買ってあったりするのですが――買っただけで、読んでいなかったのですね。
     ちなみに、ボカロ小説とその背景についてはこの記事がわかりやすいです。
    http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1308/02/news007.html
     こういう内容を読むと、「オタク」という括りは、ほんとうに何の意味もなくなってしまったんだなあ、と感慨深い。
     おそらくはご存知かと思いますが、初音ミクは一見してそう見えるようなオタクのアイドルでも何でもないのですね。もっと普遍的な存在だと捉えるべきなのでしょう。
     この先、「ゆるいオタク」が増えていくことを見越して「ゆるオタ残念教養講座」と題したこのチャンネルのコンセプトも、どうやらもう古くなりすぎているようです。
     だからといって、「次」の世代を指すネーミングはまだ存在しないので、どうしようもないのだけれど。
     現時点でおぼろげに感じるのは、