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記事 2件
  • 「壁」が存在しない「後期新世界系」はどのような物語になっていくのか?

    2020-11-15 22:19  
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     以前の記事で「後期新世界系」という言葉を使いましたが、いま、そのことについて色々と考えています。
     そこで今日は、新世界系が登場してから10年ちょっと、その内実も少しずつ変わってきているよね、という話をしたいと思います。
     まあ、いままで考えて来たことを整理するだけですが、かなり面白い内容になるはず。綺麗に整理したら後はペトロニウスさんやLDさんが思索を進めてくれるでしょう。きっと。
     さて、わかりやすくいうと、いままでの新世界系の定義とは以下のようなものでした。

    ・平和だが欺瞞に満ちた社会と過酷で残酷な世界を隔てる「壁」が存在する物語。

     この「壁」とはあくまで比喩であって、それは作品によって「海」の形だったり(『HUNTER×HUNTER』)、あるいは「崖」だったりするのですが(『約束のネバーランド』)、つまり平和な社会と残酷な世界を隔てる「境界」が存在することが重要であるわけで
  • 絶望の瀬戸際でたったひとつ輝く夢を描く『片喰と黄金』に新世界系の可能性を見た。

    2020-11-14 17:30  
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     いま、北野詠一『片喰と黄金』という漫画を読んでいます。  タイトルの片喰(かたばみ)とはカタバミ科カタバミ属の多年草のことで、生命力と繁殖力が強くその地に根づきやすい草なのだとか。おそらく、絶望的というか絶望そのものの状況でそれでもなお明るく強く生きる主人公の姿がこの言葉に投影されているのでしょう。  物語の発端はアイルランドをいったん壊滅にまで追い込んだじゃがいも飢饉から始まります。これは世界史の授業で習いますが、じゃがいも飢饉とはじゃがいもが主食のアイルランドで、そのじゃがいもが腐食する疫病がはやったことにより起こった食糧危機を指しています。  本編でも描写されている通りその災厄は相当に凄まじいものがあったらしく、アイルランドでは現在でもまだこの当時の人口を回復できていないのだとか。  もはや国難という次元すら超えて、亡国そのものの状況にあって、主人公の少女アメリアとその従僕はただ