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記事 6件
  • 耽美と幻想の天才作家タニス・リー。

    2018-12-22 04:48  
    50pt
     さて、きのう書いたように、きょうはリーについて紹介しようと思います。
     リーという作家は、ストーム・コンスタンティンと比べるとだいぶ日本でも知られているので、ぼくのなかではもう知っていてあたりまえみたいな印象になっているのですが、もちろんそういうわけではないのですよね。読んでいる人は読んでいるでしょうが、読んでいない人はまったく読んでいないはずです。
     この人は英語圏の作家としてはかなりの多作の作家で、日本にもそうとう多くの作品が訳出されているのですが、そのなかでも代表作といえばやはり『平たい地球』に尽きます。
     『平たい地球』。実に奇妙なタイトルですが、これはほんとうに「地球が平らかなりし頃」を舞台にした物語なのです。そう、昔々、地球は平らだったんですね!
     ここら辺、テリー・プラチェットの『ディスクワールド』とか、あるいは浦賀和宏の昔なつかしい『地球平面委員会』(これも凄い怪作)を思
  • 翻訳が短篇三本しかないウルトラマイナー作家ストーム・コンスタンティンを紹介するよ。

    2018-12-21 17:33  
    50pt
     ミルハウザーとボルヘスの短篇をいくつか読んで、短篇の面白さを思いだしました。小説の神髄は短篇にあり! 昔から偉大な作家たちは優れた短編を書いています。そういうものなのです。
     ただ、短篇は何しろお金にならないので、出版不況の最近はあまり需要がないようです。小説雑誌も少なくなったしね。
     そういうわけで、いまは伝説のSF作家サミュエル・R・ディレイニーの短編集『ドリフトグラス』と、なぜか最近よく翻訳されるようになったアンナ・カヴァンの(ごく一部で)名高い短編集『ジュリアとバズーカ』を並行して読んでいます。
     短編集とはコンセプト・アルバムみたいなものなので、バラバラにして読めるところが良いですね。
     うーん、何であれ海外文学を読んでいると読書力が試される気がします。この頃、ライトノベルばかり読んでいた気がするけれど、やはり歯ごたえがある読書も良いものです。
     そのほかにもジェフリー・フォー
  • C・A・スミスからG・R・R・マーティンまで。ダークファンタジーの黒い血脈。

    2017-12-12 07:00  
    50pt
     いまさらながら『ダークソウル3』が面白いです。やたら複雑な操作があるダークファンタジーアクションゲーム。暗鬱で陰惨な世界設定にダークファンタジー好きの血が騒ぎますね。
     ダークファンタジーというジャンルは昔からあって、たとえばクラーク・アシュトン・スミスという作家がいます。
     栗本薫の『グイン・サーガ』などにも影響を与えたといわれる伝説的な作家で、クトゥルー神話ものなども書いているのですが、その作品は暗く重々しく、現代のダークファンタジーに近いものがあります。
     100年ほど前のパルプ雑誌でその名を響かせた作家であるにもかかわらず、なぜか現代日本で再評価され、何冊か新刊が出ているようです。悠久の過去とも久遠の未来とも知れぬ世界を舞台に、闇黒と渇望の物語が展開します。く、暗い。でも好き。
     栗本さんの作品でいうと、このスミスの影響が直接ににじみ出ているのは『グイン・サーガ』よりむしろ『トワイライト・サーガ』のほうかもしれません。
     『グイン・サーガ』の数百年、あるいは数千年後、世界そのものがたそがれに落ちていこうとしている時代を舞台にしたダークファンタジーの傑作です。
     全2巻しかないのだけれど、その妖しくも頽廃したエロティックな世界の美しいこと。主人公の美少年ゼフィール王子と傭兵ヴァン・カルスの関係は、のちにJUNEものへと発展していくものですね。
     あとはやはり、マイケル・ムアコックが書いた〈白子のエルリック〉もの。いまの日本では『永遠の戦士エルリック』として知られる作品群は素晴らしいです。
     この物語の主人公であるエルリックは、一万年の時を閲するメルニボネ帝国の皇子として生まれながら、生まれつき体が弱い白子の身で、斬った相手の魂を吸う魔剣ストームブリンガーなしでは生きていけません。
     しかし、この意思をもつ魔剣は、時に主を裏切り、かれが最も愛する者たちをも手にかけていくのです――。この絶望的パラドックスと、〈法〉と〈混沌〉の神々の対立と対決という壮大な世界が、何とも素晴らしい。
     一時期、映画化の話があったようですが、さすがに実現しなかったようですね。まあ、ひとことにファンタジーとはいっても『指輪物語』よりはるかにマニアックな作品ですからね。
     ちなみにムアコックは『グローリアーナ』というファンタジーも書いています。これはマーヴィン・ビークの『ゴーメンガースト三部作』に強い影響を受けたと思しい作品で、とにかく凝った文体と世界を楽しむものですね。
     エンターテインメントとして読むならエルリックとかエレコーゼのほうがはるかに面白いでしょうが、この作品には文学の趣きがあります。そういうものが好きな人は高く評価するでしょう。
     ただ、かなり読むのに骨が折れる作品には違いないので、気軽に手を出すことはできそうにない感じ。よくこんなの翻訳したよなあ。
     あと、最近日本では、アンドレイ・サプコフスキの『ウィッチャー』シリーズも翻訳されています。ぼくはいまのところ未読ですが、売れないと続編が出ないそうなので、先の展開が心配です。
     早川書房は時々こういうことがあるんだよなあ。ぼくはマカヴォイの『ナズュレットの書』の続きを楽しみに待っていたんだけれど、ついに出なかった……。
     この手のヒロイック・ファンタジーものとは系列が違いますが、ダークファンタジーを語るなら天才作家タニス・リーの偉業は外せません。
     彼女の作品は数多く、すべてが日本に紹介されているわけではありませんが、訳出されたものを読むだけでもその恐るべき才幹は知れます。その代表作は何といっても『闇の公子』に始まる平たい地球のシリーズでしょう。
     「地球がいまだ平らかなりし頃」を舞台に、数人の闇の君たちの悪戯や闘争を描いた作品で、アラビアンナイトの雰囲気があります。耽美、耽美。すべてが徹底的に美しく、あるいは醜く、半端なものは何ひとつありません。
     主人公である闇の公子アズュラーンは邪悪そのもので、人間たちの意思をからかって遊びます。しかし、この世界に神はおらず、いや正確にはいるのですが人間たちに関心を持っておらず、かれの悪戯を止める者はだれもいないのです。
     まあ、こういう作品たちがダークファンタジーの世界を切り拓いてきてくれたからこそ、ぼくはいま『ダークソウル3』を遊ぶことができるわけですね。
     はっきりいってめちゃくちゃ好みの世界だけれど、クリアまで行けるかなあ。ちょっと無理そうな気がする。いまの時点で操作の複雑さ、多彩さにココロが折れそうだもの。
     それから、もちろん、現代におけるダークファンタジーの巨峰として、以前にも何度か触れたことがあるジョージ・R・R・マーティンの『氷と炎の歌(ゲーム・オブ・スローンズ)』があるのですが、これはスケールが壮大すぎてダークファンタジーの枠内にも入りきらないかもしれません。
     世界的に大人気の作品ですので、未読の方はぜひどうぞ。 
  • 追悼タニス・リー。バビロニアの女神の名を与えられた天才作家。

    2015-05-27 02:27  
    50pt

     タニス・リーが亡くなったそうで、追悼として、以前、『悪魔の薔薇』のレビューとして載せた記事を再録しておきます。世界は不世出の天才物語作家を失いました。残念です。 1947年9月19日。
     この日付は記憶されるべきだろう。この日、世界は不世出の語り部を得たのだから。
     もちろん、そのときにはだれひとりそうとは気づかなかったことだろうけれど。
     その日生まれた赤子はタニスと名づけられた。タニス・リー、と。
     バビロニアの月の女神にちなんだ命名である。いかにもそのひとにふさわしい名前ではないか。
     やがて赤子は育ち、九つのとき、作家を志す。
     初めて長編を上梓したのは二十を三つ過ぎた頃。
     そして、その生涯の傑作といわれる『闇の公子』を生み落としたのは、さらにその数年後のことだった。
     その物語を一読した読者は、リーの才能が尋常なものではないことを、いやでも悟らずにはいられなかっただろう。
     リーの世界はトールキンの箱庭には似ていなかった。C・S・ルイスのナルニアにも程遠かった。
     それははるかに遠い日、はるかに遠い国で語られたアラビア夜話に似た世界であり、しかもはるかに暗く、はるかに邪悪で、美しかった。
     リーには言葉で異世界をつむぎ出す天稟があった。
     その昔、地球が平らかなりし頃、と彼女は語りはじめる。
     平たい地球には五人の闇の君がおり、それぞれ、〈悪〉や、〈狂気〉、あるいは〈死〉を司っていた。
     王侯も奴隷も、学者も乞食も、しょせん彼らのチェスの駒。
     しかし、ときには、おそらく数千年年に一度のことではあるだろうが、駒が操り手を上回ることもあった、と。
     リーの紡ぐ神秘的な物語は、灰色の都市生活に疲れた人びとを熱狂させたことだろう。
     そして、彼女は飽くことなく新たな物語を生み出し続けた。
     彼女は泉である。尽きることを知らない物語の泉。そしてその水の芳醇さときたら。 
  • 世界一面白いファンタジー小説は何ですか?

    2014-03-27 03:38  
    52pt


     川上さんとの対談のなかで、少しジョージ・R・R・マーティン『氷と炎の歌』の話が出ました。この小説、『ゲーム・オブ・スローンズ』のタイトルでドラマ化されていて、そちらも傑作らしいのだけれど、原作は歴史的なウルトラマスターピース。
     およそ世界のファンタジー小説のなかで、これ以上に面白いものはないのではないか、と思うくらいのとんでもない作品。普段あまりふれないのだけれど、田中芳樹とか栗本薫の小説が好きだったひとには文句なしでオススメの超名作です。
     いやー、云ってしまえばどこにでもある平凡な設定で、ありふれた筋書きなんだけれど、それを力技で超絶レベルの作品に仕上げているんですね。
     ひたすら王道。どこまでも正統。ただあたりまえのことをあたりまえにこなす、それだけでほんとうに凄まじい作品を仕上げてしまっている。
     作者のマーティンはSFも書けばファンタジーも書くというひとですが、典型的な「物語作家」で、書けば書くほどに長くなっていくんですねw
     これはストーリーテラー型の作家の特徴で、どうも「物語の自走性」に任せるとそういうことになるらしい。『グイン・サーガ』が予定を超えて長くなったのと同じ理屈です。
     おそらく、書いている最中に「あれ、この展開も面白いな」とか、「こいつの過去はどうなっているんだろう?」ということを際限なく思いつくのでしょう。
     だから、書けば書くほどに新たな物語が生まれてくる。どうやらそういうことらしい。もっとも、例によってぼくは途中で止まっているので、そろそろ最初から読み返したいと思っているところではあります。
     いや、ほんとうに面白いのだけれど、ひたすらマジメでギャグがないから、読んでいて疲れるんですよね……。
     それでもまあ、この手の戦記小説のなかでは最高の出来で、歴史的な重要作品であることは間違いないけれど。日本でどれくらい売れているのかわからないけれど、北方謙三の『水滸伝』シリーズとか好きなひとは楽しめるはず。
     とはいえ、マーティンの小説をファンタジーの代表のように語ることは、少々違和感があります。たしかにめちゃくちゃ面白いのだけれど、そこにファンタジーの息吹があるかというと、ちょっと違うよね、と。
     つまりは具象性が高すぎるのですよ。すべてがリアリスティックに描きぬかれていすぎる。ぼくにとってファンタジーとはもっと抽象的なもの。
     やっぱりタニス・リーとか、ロード・ダンセイニ、フィリス・アイゼンシュタインという作家が思い浮かぶわけです。
     フィリス・アイゼンシュタイン! 最期に翻訳されたのは何十年も前だけれど、いやー、ぼくは好きだったんだよなあ。『妖魔の騎士』に『氷の城の乙女』。素晴らしいですね。
     ただ、早川書房は最近あまりこの種の象徴性の高いファンタジーを出してくれなくなった印象がある。いや、たぶん売れないんだろうけれど、ぼくは好きなんだよなあ。
     ジェイン・ヨーレンとか、そこらへんの女性作家ですね。ジェイン・ヨーレンの『夢織り女』、大好きでした。ここらへんの流れはこの頃あまり見かけない気がします。
     やっぱり具象的で男性的な作品のほうが売れるのでしょう。抽象的で女性的な意味でのファンタジーは、受け手にある種の素養を要求するところがある。
     それは知識ではなく感性。感じるひとしか感じない世界なんですね。マーティンの小説にはないものがそこにはあります。
     とはいえ、一部の出版社はがんばっていろいろと出しつづけてくれていることも事実で、パトリシア・A・マキリップとか、気づくとたくさん翻訳されていますね。
     そこらへんも読まないといけないとは思っているんですが、どうも時間が。いや、 
  • 【有料記事】バビロニアの女神の名を与えられた天才作家タニス・リー。(2061文字)

    2012-09-22 00:05  
    52pt
    タニス・リーはぼくが最も好きな作家のひとりです。ひたすらに美しくまた邪悪な世界を描くその技量は無二のもので、まさに「天才」という称号がふさわしい作家といえるでしょう。『悪魔の薔薇』は彼女の短篇集なのですが、いやあ、レベルが高い。それぞれに異様な作品ばかりで、読み耽るほどにその悪夢的な世界に耽溺させられます。もっと翻訳されないかな、リー。