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魂は時空を超えて転生する。水上悟志『スピリット・サークル』はフルスピードの快作だ。(1055文字)

 作家の人生にハッピーエンドはめったにない。どんなに凄い傑作を描いても、そのあとまた新作を描かねばならない。作家の使命は命あるかぎり、あるいは少なくとも人気があるかぎり、新作を描きつづけることなのだ。  たいていの者はその途上で辞めていくが、なかには一生、素晴らしい作品を生み出しつづけるひともいる。考えられるかぎり最も偉大な人生だと心から思う。ひょっとしたら水上悟志もそういう生涯を送る作家のひとりだったりするかもしれない。  『スピリット・サークル』は前作『惑星のさみだれ』で多くの読者を涙させた水上の最新作。『さみだれ』とはまったく違う設定と人物で、新たな物語に挑む。  この作品のテーマは「輪廻転生」。時を超えて何度も生まれ変わり、そのたびに殺しあう宿命を負った男女が主人公だ。今生において中学生の少年と少女になったふたりは、何度目かの戦いを行うことになるようだが、はたしてこの先どうなるのかはわからない。いくつもの過去生の人物たちが複雑に絡みあう壮大なストーリーが展開していくように思える。  とはいっても、あらすじから想像されるほど重苦しい話にはなっていない。幾度となく生まれ変わり、そのたびに殺したり殺されたりする運命を背負ったふたりの話は、とにかくテンポよく進んでいく。  

魂は時空を超えて転生する。水上悟志『スピリット・サークル』はフルスピードの快作だ。(1055文字)

大人には人生を楽しむ責任がある。(1474文字)

 いま、『YOUNG KING OURS』で『スピリット・サークル』を連載している水上悟志の前作『惑星のさみだれ』はセカイ系の物語の集大成とでもいうべき傑作でした。ストーリーもキャラクターもエンターテインメント性も文句なし。全10巻できれいに完結している点も素晴らしい。未読の方にはぜひオススメしたい作品のひとつです。  この作品では「大人」あるいは「成熟」という概念がひとつのテーマになっています。成熟社会のなかで見失われた「成長し、大人になること」の価値を正面から問うた作品といってもいいでしょう。  作中、ある少年が仲良く喧嘩している年上の青年たちの姿を見て「今は辛いことばっかりだけど 大人になれば楽しいことはあるんだ」と悟る場面があります。ぼくはこの場面が好きでねえ。『惑星のさみだれ』全体を象徴するような場面だと思います。  そこで今回のタイトルに繋がってくるのですが、大人には子供を励ますため、人生を楽しんで生きる責任があると思うのです。  大人たちがみんな「仕事は辛いし、人生はつまらない。何もいいことなんかない」とばかり言っているようでは、子供たちが成熟したくなくなるのはあたりまえ。だから、大人は「大人であることは子供時代よりもっと楽しい」といい切れる人生を歩まなければならない。  もちろん、それは簡単なことではないし、責任感だけで人生がおもしろくなってくるはずもない。しかし、大人になることがまるで楽しくないような社会に未来はないし、じっさい、大人になることはそう悪いことではないと思うのです。  ぼくは大人になってからのほうがずっと人生を楽しんでいるし、何より楽になった。それはもう、あの地獄の日々が嘘のようです。  

大人には人生を楽しむ責任がある。(1474文字)
弱いなら弱いままで。

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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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