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記事 170件
  • ベジータ問題。あるいは『SSSS.GRIDMAN』における「正義」と「悪」とは何か?

    2019-01-21 15:03  
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     この記事は『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」』と『SSSS.GRIDMAN』の全面的なネタバレを含みます。まだこれらの作品を未見の方は回れ右するか、「覚悟」のうえでお読みください。よろしくお願いします。
     さて、ペトロニウスさんの『SSSS.GRIDMAN』の記事が興味深いので、引用します。
     これ、もともとはぼくがTwitterでこの作品の名前を挙げたところから始まっている話なのですけれど、ペトロニウスさんはこのアニメを見て古い脚本だと思ったとのことです。
     それはそうで、アニメ的にも20年とかまえのスタンダードですし、SF的にはニューウェーブの内面宇宙とかの話と重なりますから、へたすると50~60年昔の話だったりするわけです。
     で、やはりいまひとつの作品だと思った(らしい)ペトロニウスさんは教えてLD先生!ということでLDさんにその内容につい
  • 『魔法少女リリカルなのは Detonation』は混沌とした定食屋アニメだ!

    2018-10-20 15:16  
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     ふらっとうちに『スーパーマリオパーティ』をやりに来たてれびんに誘われて、映画『魔法少女リリカルなのは Detonation』を観て来ました。
     ちなみにぼくは『魔法少女リリカルなのは』シリーズを見るのは初めて。この映画、前後編の前編にあたるのですが、その前編すら見ていません。正真正銘の初なのはです。
     このシリーズ、14年にわたって続いているので、当然、「いままでの作品を観ていないと理解できないのでは? ぽかーんとしているうちに終わってしまうのでは?」と思うところですが、てれびんの野郎が「大丈夫、大丈夫、最初に「これまでのあらすじ」みたいなやつをやるから、それでわかるよ」とのたまったので、「そうかなー」と思いつつもいっしょに観てみることにしました。
     で、たしかにありました、「これまでのあらすじ」。あったのですが――こんなものでわかるかー! さっぱり何のことだか理解できないぞ!
     いや、
  • 映画『若おかみは小学生!』微ネタバレありレビュー。

    2018-10-04 13:41  
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     ネットでやたらに評価が高い(が、興行収入は振るわない)映画『若おかみは小学生!』を観て来ました。
     上映している映画館がちょっと遠いところにあるので行くのが大変だったけれど、結論としては観て良かったです。
     高い世評も納得の秀作。一本のアニメーションとしての出来が抜群に良く、ファミリー映画として、大人も子供も楽しめる作品です。むしろ、子供より大人のほうが「刺さる」かも。
     ただ、個人的には気になる点もなくはなく、文句なしの絶賛とまでは行きませんでした。
     物語は主人公の少女「おっこ」が両親とともに自動車に乗っているとき、事故に遭うところから始まります。その事故で両親は亡くなり、おっこは母がたの祖母に引き取られることに。
     そこで彼女はその祖母がおかみを務める旅館に住み着いた幽霊や鬼と交流しながら、「若おかみ」として少しずつ成長し、また癒やされていくことになるのですが――というお話。
     原
  • 細田守は家族と血脈を愚直に描く「骨太の物語作家」だ。しかし――

    2018-08-08 11:29  
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    ◆細田守の「聖母」。
     細田守という映画監督のことを考えています。
     いままでどうにも捉えどころがないような作家だと思っていたのですが、『未来のミライ』を見たことで、ちょっとわかったように思います。
     この人は、たぶん、本来、シンプルでプリミティヴな物語を作りたい人なのですね。
     でも、時代が時代だから、なかなかそれができない。それで、その歪みが作品に刻印されることになる。そういうことなのかな、と。
     もう少しわかりやすく説明しましょう。
     細田監督のいまのところ最もかれらしい作品にして、いちばん賛否両論を呼んだのは『おおかみこどもの雨と雪』だと思います。
     これはまあ、ぼくの目から見ても批判が生じるのはよくわかるような映画なんですよね。
     何といっても、女性の、あるいは母親の描き方にまったくリアリティがない。現代の映画としてはいかにも受け入れがたい。
     でも、同時に、この「リアリティのな
  • 『未来のミライ』は『未来のミライ外伝』のほうが正しいタイトルだ!?

    2018-07-29 11:01  
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    ■『未来のミライ外伝 くんちゃんの不思議なお庭』?■
     先日、細田守監督の新作映画『未来のミライ』を観て来ました。
     その感想はニコニコブロマガのほうに書いたのですが(http://ch.nicovideo.jp/cayenne3030/blomaga/ar1635302)、こちらではちょっとだけネタバレの感想を書いておきたいと思います。以下、ほんとにちょっとだけネタバレです。
     で、これはブロマガのほうにも書いたのだけれどぼくは傑作だと思っていて、世間の賛否両論がぴんと来ない。いや、これはごくごくわかりやすい作品でしょ。
     まあ、でも、あまりこの手の映画を見なれていない人にとっては唐突に感じられたり、無理がある展開に思えるであろう事態が頻出することもたしか。
     そもそもこの映画が何を描いていて、どこが面白いのかわからない人も多いかも。
     思うに、「未来のミライ」というタイトルの設定が悪い
  • 『ヲタクに恋は難しい』実写映画化! オタクのパンピー化は止まらない。

    2018-07-29 10:53  
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    ■『ヲタクに恋は難しい』映画化! え、実写?■
     何やらベストセラー漫画『ヲタクに恋は難しい』が実写映画化するらしいですねー。何というかもう、「ついに時代はここまで来たか」という感じです。
     オタク大迫害時代に青春を過ごしたアラフォーのおっさんとしては、感慨無量というか感動ですよ。
     まあ、映画のクオリティに関しては何ともいえないわけだけれど、とりあえずオタクが普通のティーン向け恋愛映画(だろう、きっと)の主役になる日が来ようとは、思いもしないことでした。
     いや、『ヲタ恋』が出て来たあたりではっきりと時代の変わり目は感じていたんだけれど、それにしてもこの流れの速さは凄いですね。
     いったいこのままどこまで行ってしまうのだろう? 一億総オタク化して、「オタク」という言葉が死語になったりして。うーん、まったくありえない話じゃない気がするあたり、時代の変化は恐ろしい。
    ■オタクの四世代■
     そ
  • 『ポケットモンスター みんなの物語』がなにげに面白いこと、知っている?

    2018-07-29 10:43  
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     先日、映画『ポケットモンスター みんなの物語』を観てきたにょろ。タイトルからわかるように、今回は「みんな」を主役にした群像劇。
     あるひとつの街を舞台に、サトシを中心とした無数のキャラクターたちのドラマを時に絡め合わせながら描きます。いわゆるグランドホテル形式ってやつですね。
     この手の群像劇って、いかに無駄なくシナリオを整理できるかで八割がたは出来が決まってしまうようなところがありますが、その点、この映画は実によくできている。
     いやー、きれいにひとつひとつちゃんと伏線を回収していくことには感心しました。まあ、ポケモンと人間ってほんとうに仲良くなれるのだろうか、ほんとうに人間ってそんなに悪い人ばかりではないのだろうか、と疑問を感じなくもないのですが(笑)、そういうことをいうのは野暮なのでしょうね。
     それぞれに問題を抱えつつ勇敢に自分の限界を突破し成長していく群像のドラマのなかでも、ウ
  • 右も左も偏見だらけ。『万引き家族』はあらゆる単純解釈を拒絶する傑作だ。

    2018-06-17 02:26  
     是枝裕和監督の映画『万引き家族』が、カンヌ映画祭で最優秀賞にあたるパルムドール賞を受賞したことが世間で話題になっています。当然ながら、ネットでも話題沸騰なのですが、一部の人は上映前からこの作品に否定的な評価を下していました。
     いわく、是枝監督の政治的な発言が気に入らない、また、万引きという犯罪を美化し肯定していることが嫌だ、監督は在日韓国人なのではないか、などなど。
     この手の狂った理屈の異常さについてはあらためてぼくが説明するまでもないと思うので省きます。ただ、是枝監督の該当発言は重要だと感じるので、ここに引用しておきましょう。

    --経済不況が日本をどのように変えたか。
    「共同体文化が崩壊して家族が崩壊している。多様性を受け入れるほど成熟しておらず、ますます地域主義に傾倒していって、残ったのは国粋主義だけだった。日本が歴史を認めない根っこがここにある。アジア近隣諸国に申し訳ない気持
  • 『万引き家族』とハリウッド映画的二元論。

    2018-06-07 11:05  
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     映画『万引き家族』を先行上映で見て来ました。カンヌ映画祭のパルムドールを取ったことで有名になった作品だけれど、なるほど、これは傑作。
     万引きでつながった切ない家族の関係と、その崩壊を描いて、視聴者に思考を強います。
     ちなみに、この映画、是枝監督による発言がミスリードになっているけれど、社会の告発を目的としたものではありません。
     そうではなく、もっと複雑で深淵なテーマを扱った作品です。右翼的に批判するのもばかばかしいけれど、左翼的に賞賛するのもくだらないですね。
     特定のイデオロギーにもとづく批評の限界を見る思いです。
     映画のなかでは、善人とも悪人ともいいきれない人間たちの卑小で愛すべき姿が描かれていきます。
     ここにあるものは、「善」だとか「悪」だとかいうわかりやすい善悪二元論で人間を裁かない姿勢です。
     人間は、そしてこの世の出来事は単純な善悪では割り切れないという成熟した態度
  • 松坂桃李主演の映画『娼年』は清冽なエロティシズムただよう佳編だ。

    2018-04-23 22:02  
     最近、Bluetoothのワイヤレスイヤフォンを購入したので、iPhoneに繋ぎ、音楽を聴くかたわら、石田衣良のポッドキャストを聴いている。
     定番の人生相談なのだけれど、回答の冴えがさすがに素晴らしく、聴いていてとても楽しい。
     まったくキャラクターは違うものの、平気で「その男はクズだから、別れたほうがいいよ」などとアドバイスする突き放した距離感がふしぎとちょっとペトロニウスさんを連想させる。意外と毒舌なのである。
     それにしても、ほんとうによくバランスの取れた人だ。ただクールでセンスが良いだけの人物なら他にもいるだろうが、この人は優しさと冷ややかさのバランスが絶妙である。さすがに20年もベストセラー作家を続けている人はちがうとしかいいようがない。
     相談内容は多岐にわかっているものの、当然というべきか、恋愛とセックスの話が多く、他人の恋愛話を聞いたり読んだりすることが好きでならないぼ