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記事 21件
  • いと輝かしき哉、キャラ萌えのゴールデンエイジ。

    2013-12-24 00:18  
    53pt
     いま、レスター伯が褒めていたアニメーション映画『ハル』を円盤で観ています。
     例によって途中でLINEの通知があって、そっちに夢中になっちゃったあげく、いまてれびんと会話しながら記事を更新していたりするわけですが(笑)、いや、これはもう、冒頭から傑作の予感がする。
     最先端のロボットテクノロジーと京都の古い景色が違和感なく混じりあう面白さ。60分の中編映画なのですぐ観終わるでしょう。また、さっさと観終わらないと返却に間に合わない。観終えたら新たに記事を書こうと思います。
     いやー、しかし、同時に『AURA』とか『空の境界』とか『アクセル・ワールド』あたりを借りてきてひたすら鑑賞していると、何か、こう、多幸感が湧いてきますね。
     まさにフィルムドラッグ。萌えドラッグというべきか。こうやってクオリティの高いアニメをたくさん観ながらぶひぶひ云っていると、ほんとうに幸せな、素晴らしい時代だなと思
  • 年末ニコ生。

    2013-12-21 15:41  
    53pt
     午後10時からかんで、てれびん、海燕で今年のベストを語るニコ生を放送します。――たぶん放送できるはず。あんまり確信はないが……。よろしくお願いします。チャンネル会員限定です。
    http://live.nicovideo.jp/watch/lv163248959
  • 2013年、劇場で観た映画ベスト10!

    2013-12-19 14:50  
    53pt
     以前にも書きましたが、今年はたくさんの映画を観ました。劇場で観た作品だけに限っても30本近くは観ているんじゃないかな。
     大した数じゃないと思われるかもしれませんが、あまり映画館に行く習慣がない地方在住のぼくとしては、これでも十分観たほう。
     また、数だけでなく作品のレベルも高かった。今年はあたり年だったと思っています。まあ、ぼくが知らないだけで毎年そうなのかもしれませんが――。
     でも、今年のベスト1、2あたりはぼくの映画人生でも指折りの傑作と断言できます。
     今年観た作品では、まるで面白くないハズレ作品は一本もなかったですね。いや、それも『ガッチャマン』とかを観に行っていないおかげかもしれないけれど。良い1年でした。まあ、こと映画に関してはね!
     そういうわけで、今年の劇場映画ベスト10を発表しようと思います。特徴としては、邦画がけっこう入っていますねー。
     新海誠監督の『言の葉の庭』あたりも入れたかったのですが、入る余地がなかったですね。あと、韓国映画の『王になった男』なんかも良かったんだけれど、入れられなかった。
     では、始めたいと思います。ランキング、スタート!
    ○10位『箱入り息子の恋』
     今年の10位は星野源主演の『箱入り息子の恋』。ゲームばかりプレイしている不器用な「箱入り息子」と、盲目の女性との不器用なラブストーリー。
     それぞれ恋に慣れていないふたりが、しだいに想いを募らせ、愛に目覚めていくプロセスはそれはもう胸がきゅんきゅんします。まさか牛丼の吉野家がここまで切ない恋の舞台となる日が来ようとは、だれか想像したひとがいるでしょうか? いや、いない(断言)。
     星野源も実にいい味を出していますが、盲目のヒロインを演じる夏帆が可愛いこと、可愛いこと。ふたりしてけっこうやることはやっているのですが、すべての動作がベリベリベリキュート。
     観たあと、だれでも恋をしてみたくなる、デートムービーとして最適の一作だったと思います。可憐な恋愛映画を観てみたいという方には文句なしにオススメ。順位は10位ですが、「好き」ランキングならもっと上に行きそうですね。すばらしい作品でした。
    ○9位『ボクたちの交換日記』
     さらに邦画が続きます。今年は邦画も良かったですねー。アニメを除くとものすごい大ヒット作はなかったかもしれませんが、胸に染み入るような優しい傑作はいくつもあったように思います。この『ボクたちの交換日記』もそのひとつ。
     ウッチャンナンチャンのウッチャンこと、内村光良がメガホンを取った作品で、正直、観る前はどうなんだろうなあと思っていましたが、これが実に良かった!
     芸人が芸人をテーマにした映画を取るということは、ある種、禁忌である側面もあるとは思いますが、内村監督はそのタブーに挑み、みごと成功を収めました。今年の「泣ける」映画という意味では、これがベストかも。
     物語は、ある芸人コンビの試練と、超克と、挫折を描き、そしてさらに先へと進んでいきます。いったいお話がどこに落着するのか? それは映画を観てのお楽しみ。
     もしウッチャンがまた映画を作ったら必ず観に行きます! それくらい良い作品でした。
    ○8位『そして父になる』
     そしてまた邦画。実はこのランキング、アニメも含めると邦画のほうが洋画より多かったりするんですね。
     邦画はもうダメだともいわれるし、じっさいはこれはどうなんだと思う映画も多いわけですが、そういうなかで少しでも良いものを作ろうと懸命な努力を怠らない人々もまた少なくない。そういう事実も忘れてはいけないと思います。
     そういうわけで8位は是枝裕和監督、福山雅治主演のコンビでカンヌで絶賛を浴びた一作。いや、これも素晴らしかった。
     「子供の取り違え」という、ある意味ではごく古いテーマではあるのですが、その切り取り方が実にうまい。
     自分の子供に愛情を注ぎきれずにいる福山演じる主人公が、その子が自分の血の繋がった子供ではないということがわかることによって、逆に「家族」について考えさせられるようになっていくという展開は良かった。
     傑作であり、名画であると思います。いまからでもぜひ観てみられることをオススメします。
    ○7位『かぐや姫の物語』
     スタジオジブリの宮﨑駿と並ぶ「巨匠」高畑勲による14年ぶりの新作、そして8年の歳月と50億円の巨費を費やしたという『かぐや姫の物語』が7位にランクインです。
     8位までも良い映画だったのですが、個人的にはこの7位から上はすべて最上級の評価を与えている感じ。★★★★★のエクセレントな映画って感じですねー。
     『かぐや姫の物語』は、まさに『竹取物語』そのままのプロットで進んでいくわけですが、さすがに巨匠だけあって、おとぎ話の再解釈がものすごい精度。
     かぐや姫を社会と家族によって「高貴の姫」として閉じ込められた女性と見たて、彼女の悲劇的な、しかし立派な人生を高らかに歌い上げます。
     『風立ちぬ』が「男性の映画」だとするなら、『かぐや姫』はまさに「女性の物語」。ここらへんに両巨匠のスタンスの違いが見て取れるように思います。
     50億円使ったアニメーションも美麗を究めているので、アニメファンにとっても見応え充分かと。
    ○6位『ゼロ・グラビティ』
     そして、6位になってようやく洋画が入って来ました。べつだん、洋画を観ていないわけではないはずなのですが、今年は邦画のほうに高い評価を与えることになったかもしれませんね。
     メキシコ人の天才演出家アルフォンソ・キュアロン監督の『ゼロ・グラビティ』は、おそらく現在考えられるかぎり最もリアルに宇宙空間を再現した映像を見せてくれるマスターピースです。
     まあ、ひょっとしたらSF考証的には色々と突っ込むところがあるのかもしれませんが、最先端のコンピューターグラフィックスを駆使したと思しい「宇宙の事故」は、息を呑むほどのリアリティ。ぼくは2Dで観ましたが、3Dで観たひとたちはそれはもう大迫力だったそうな。
     そのぶん、シナリオは超シンプルにまとまっているのですが、物足りなさは感じないはず。めちゃくちゃストイックな映画体験が楽しめるはずです。これも大傑作ですね。今年の終わりに良い映画だった。
    ○5位 
  • 『攻殻機動隊ARISE』は進化する。

    2013-12-19 00:50  
    53pt
     劇場映画『攻殻機動隊ARISE』の第二弾を観ました。前作はいまひとつ不満な出来だったのですが、今作は果たして佳作。
     『GOHST IN THE SHELL』や『STAND ALONE COMPLEX』のような大傑作というほではないにしろ、十分に楽しめました。
     第一作とは監督が変わっているようですね。また、第一作はミステリに主眼を置いた作りになっていましたが、今作はアクションに力を入れた作品に仕上がっています。
     とはいえ、もちろん物語は連続していますし、同じ作品として観て違和感があるということはありません。相変わらずの『攻殻機動隊』シリーズの世界を楽しめます。
     いうまでもなく『攻殻機動隊』は士郎正宗が80年代末に発表した漫画作品に始まります。それを押井守が映画化し、神山健治がテレビシリーズ化して、いまの人気に繋がっているわけです。
     それでは、漫画版、映画版、テレビシリーズ版に続く、いわば「第四の『攻殻機動隊』」となるこの『ARISE』はどう新味を出していくのか。
     全四話完結予定のこの作品は、公安九課結成前夜の物語として設定されています。天才的な義体使いの才能を持つ「少佐」こと草薙素子が、未だ自分の部隊を持っていない時代の物語として設定されているのです。
     当然、バトー、トグサ、イシカワ、ボーマ、パズ、サイトーといったおなじみの連中もまだ少佐の下に集ってはいません。それどころか――いや、ここはネタバレなので黙っておくことにしましょう。
     とにかく『攻殻機動隊』シリーズのファンなら楽しめる展開が描かれています。
     前作に対するぼくの不満点は、ヴィジュアル的、あるいはSF的な新味がないということに尽きます。時代は猛烈に変わっているのに『攻殻』は相変わらずの『攻殻』、10年前の『S.A.C.』からほとんど進歩していないように感じられたのです。
     今回もその点はそれほど変わっていないのですが、それでもやっぱり面白い。SF的なセンス・オブ・ワンダーはいささか欠けているものの、凝りに凝ったストーリーが楽しめます。
     何といっても『マルドゥック・スクランブル』の冲方丁が担当するシナリオはやはりさすがのクオリティ。
     あまりに複雑にエピソードが錯綜しているため、一度見ただけではちょっと把握し切れないところもあるのですが、そのややこしいプロットを短くまとめ上げる能力はすばらしいとしか云いようがありません。
     今回は第四次大戦を経た日本の運命が関わるかなり気宇壮大なエピソードなので、小ぢんまりとまとまっている印象もなし。最も『攻殻機動隊』らしいエピソードを楽しめます。
     そして、素子の元に遂にさまざまなタレントたちが集まって来ます。少数で国家を揺るがすことすらできる能力を持つ者たち――その出自は軍人であったり、警官であったりと実にさまざまではありますが、いずれも超一流のスキルを持っていることに変わりはありません。
     そしていよいよ少数精鋭、公安九課が発足するかというところまで行くのですが、じっさいにそうなるまでにはまだいくらか飛躍があるようです。焦らしますね。最終話のラストで 
  • 本を読む旅2.0。

    2013-12-15 19:05  
    53pt
     その昔、ぼくは書店が大好きな少年でした。数々の本棚に整然と並べられた、本、本、本。その一冊一冊が、すべて異なる言葉と物語を秘めているのです。どうして好きにならずにいられるでしょう。
     ぼくは日ごろから書店に日参し、ああでもないこうでもないと唸りながら、面白そうな本を渉猟したものです。好きな作家の新刊が店頭に並んでいたときの、えもいわれぬ興奮! それはほとんどエロティックなまでの感慨でした。
     爾来、幾十年、中年になったいまでも書店は好きです。ただし、そこで本を買うことはだいぶ減りました。いうまでもなく、ネットで本を買えるようになったからです。
     Amazonを初めとするネット書店には、リアル書店の浪漫はありません。しかし、それはやはり、何とも便利で快適なのです。
     きょう、ふとライトノベルでも読むかと思い、近所の書店へ向かったのですが、やはりリアル書店は不便ですね。ほしい本を一瞬で検索することまではできるものの、それを探すのは自力で行わなければならない。
     まあ、店員さんに頼めば探しだしてくれるかもしれませんが、それには、数分とはいえ時間がかかる。Amazonでサーチして1クリックで注文するようには行かないのです。
     もちろん、そのかわり即座にほしい本を手に入れることはできる。2日も3日も待ったりする必要はありません。そういうわけで、しばらく前までは、やはりリアル書店にも良いところはあるなあ、と感じていたのですが、最近、この辺の事情も変わって来ました。
     はい、電子書籍が普及しはじめたからです。そしてぼくがiPhoneを購入したからでもあります。おお、iPhone――汝、文明の利器、テクノロジーの申し子よ。
     いや、スマートフォンを入手するまでは特段、電子書籍を読もうとは思わなかったのですが、いったんスマホを使いはじめると、電子書籍の便利さが身に沁みますね。
     何といっても、ほしいと思った瞬間に、一瞬で入手することができる。いちいち書店へ足を運ぶ必要さえないのです。
     ここらへんはいまさらぼくが講釈する必要もないのでくわしくは語りませんが、ぼくは日本でもさっさと電子書籍が普及することを希望しています。
     もちろん、そこには色々な「壁」があるのでしょうが、ユーザー目線でいえば、電子書籍は圧倒的に便利です。ただ、あまりに簡単に手もとにやって来るので、「電子積読」が増えることはいかんともしがたいものがあります。
     ここでようやく本題に入るのですが――そう、 
  • あらゆる宇宙映像を過去にする。キュアロン監督の新作映画『ゼロ・グラビティ』に感動。

    2013-12-13 21:10  
    53pt
     ぼくにとって今年は映画の年だった。いままであまり劇場に足を運ぶこともない男だったが、今年はネットでおもしろそうな作品を探しては、月に2本ほどのペースで通った。
     もちろん、その何倍もの作品を観ているシネフィルは少なくないだろうが、ぼくとしてはこれだけたくさんの映画続けてを鑑賞することは人生で初めての経験である。
     そして、じっさい、今年は観るべき映画がたくさんあったと思う。スタジオジブリの巨匠たちが続けざまに発表した『風立ちぬ』に『かぐや姫の物語』、韓国映画の『王になった男』、インド映画の『きっと、うまくいく』などが印象にのこっている。
     そのラインナップに、きょう、また一本、新しい作品が加わった。アルフォンソ・キュアロン監督の野心作『ゼロ・グラビティ』。
     無重力を意味するタイトルの通り、すべてのものが重力のくびきを離れた宇宙空間を舞台に、壮絶なサバイバルストーリーが展開する(原題はよりシンプルに『GRAVITY』らしい)。
     いままでいくつもの映画にこの言葉を使ってきたが、いや、これはほんと、紛うかたなき傑作。おそらくこれから長い間、宇宙映画の最高のマスターピースとして記憶され、称えられつづけることだろう。
     興行的にも大成功を収めているようだ。そうだろう、そうだろう。ぼくにしてからがわざわざ公開初日に観に行ったわけだからね。
     監督・脚本・制作・編集のアルフォンソ・キュアロンは、メキシコシティ出身のメキシコ人映画監督。ぼくが初めて見たこの人の映画は、1995年発表の『リトル・プリンセス』だった。
     何となくレンタルして何となく観てみただけのディズニーのファミリー映画なのだが、これが傑作で、実に美しい映画だった。嘘だと思ったらだまされたと思って観てみてほしい。その壮麗な想像力に驚かされるだろう。
     ディケンズの小説の舞台を南米に移し替えた『大いなる遺産』もすばらしかった。少年時代から青年時代へ至る、愛と喪失の物語――ほんとうに才能がある監督だと感嘆させられた。
     その後、キュアロンは『ハリー・ポッター』なども撮っているのだが、これはあまり関心がないので、ぼくはスルーしている。
     2006年の『トゥモロー・ワールド』も、個人的には悪くなかったのだが、何しろ地味な映画で、ビジネスとしてはどうだったのだろう。
     キュアロンはいまその才能を認められたと思しく、大がかりなコンピューターグラフィックスを駆使した映画を撮ることができる立場にあるようだが、かれはその予算を大味な派手さではなく、ひたすらに画面の緻密さにつぎ込むタイプのようだ。
     リアルな宇宙描写を尽くした『ゼロ・グラビティ』ではその資質が完全に活かされている。「だれも見たことがない宇宙映像」といっても、この場合、過言ではない。
     もちろん、人類が宇宙に進出してから長い年月が経っているわけで、それは理屈の上ではぼくたちが知っている光景ではある。しかし、そのじっさいに映画として観てみると、異様な美しさ、苛酷さは、まさに想像を超えている。
     
  • 『俺妹』の伏見つかさの新作『エロマンガ先生』がまさに鉄板のクオリティ。

    2013-12-12 07:00  
    53pt
     伏見つかさ『エロマンガ先生』を読み終えました。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』以来の待望の新シリーズです。
     妹ものの新境地を開拓し、ライトノベル全体でも指折りのセールスを記録した傑作のあと、次に挑むのはどんな作品なのか? 答え:妹もの。
     というわけで、今回もまた高校生ライトノベル作家の主人公と、そのイラストレーター「エロマンガ先生」である妹のラブやら葛藤の物語、になるらしい。
     まだ第一巻なのでよくわからないけれど、とにかくむやみとおもしろい。もちろん、この先もおもしろいかどうかはまだいまの時点では何ともいえないけれど、とりあえず今回も完全に鉄板の出来。
     伏見さんは『俺妹』で何かを掴んだと思しく、もう文句のつけようがないエンターテインメントに仕上がっています。気が早いけれど、もうアニメ化は確定なんじゃないでしょうか。
     いま思えば赤面するしかないのですが、伏見つかさという作家を
  • 百合漫画の繊細。雨隠ギド『終電にはかえします』を読む。

    2013-12-07 21:39  
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     毎度毎度同じような書き出しで恐縮ですが、雨隠ギド『終電にはかえします』を読みました。
     百合漫画です。ぼくはわりに百合ものが好きで、小説やら漫画やらいろいろ読んでいるのですが、あまりおもしろいと思うものには巡り会いません。しかし、これは良かった。
     何とも云えず、良かったですね。一読した後も、くり返しくり返し読み返し、楽しんでいます。数本の短編が収録された短篇集なのですが、どの話もそれぞれに魅力的でした。
     160ページほどの内容で720円というのは、少々高いようにも思えますが、まあ部数があまり出ていないのだろうから仕方ないのかなあ。とにかく個人的には値段に見合うだけの作品だったと捉えています。
     それでは、何がそれほど良かったのか? これはむずかしいところで、そうだな、何が良かったのだろう。
     収録作はいずれも云ってしまえば他愛ない話で、特別に壮大だったり、感動的だったりするわけではありません。たとえば萩尾望都の「半神」がすばらしいというのとは、わけが違います。しかし、それはそれとして、やはり染み入るような魅力があるのですね。
     百合ものは、たいてい物語そのものはそう壮大な話ではない。まあ、『魔法少女まどか☆マギカ』みたいに宇宙スケールに拡大してゆく場合もありますが、それは極端な例外で、ほとんどは主人公たちの関係性に主眼が置かれているのだけれど、この漫画はこの話はその関係性が良く描けていたということなのかもしれません。ちょっとよくわからない……。
     以前から語っていますが、ぼくは百合漫画のバラエティにちょっと不満があります。それぞれに趣向を凝らしていることには違いないのだけれど、それにしても、他愛ないラブロマンス、ないしラブコメディに偏っている気がしてならない。
     いや、そういうものだと割りきって楽しむものだということはわかっているのですが、もう少し、エンターテインメントとして波乱に富んだ物語も読んでみたいな、と。
     まあ、ぼくが知らないだけで、さまざまな作品があるのかもしれません。もしそうなら、教えてもらえれば読みますが、どうなんだろう。
     百合とは少し違う、むしろレズビアン小説と云うべきなのかもしれませんが、サラ・ウォーターズの『荊の城』などはすばらしい出来でしたね。あの水準のものをもっと読みたい。あれは『このミス』の首位を取ったりしているレベルなので、とてもむずかしいだろうとは思いますが――。
     
  • 映画『ペルソナ3』の見どころとは。

    2013-12-04 21:16  
    53pt
     きのうに続いて映画を観てきました。『PERSONA3 THE MOVIE ー#1 Spring of Birthー』。同名のテレビゲームをアニメーション化した三部作の第一弾ですね。
     ぼくは原作ゲームは半分ほどのところで挫折してしまっているのですが、それでも好きな作品なので観てきました。
     感想は――うん、なかなか良かったです。絶賛というほどではないけれど、悪くない出来だと思う。この次元の劇場アニメを「悪くない」で済ませられるということは、いかに現代のアニメが豊穣かつ高度になって来ているかということで、ぼくは嬉しい。
     まあ、『風立ちぬ』とか『かぐや姫』みたいに巨費を蕩尽して壮大な実験をくり広げた狂気の作品ではないけれど、水準は十分にクリアしている。
     原作の複雑に錯綜した設定と物語を巧みに消化し、映画として見て不自然じゃないところまで持っていっただけでも立派。原作に負けず劣らず楽しめる
  • 高畑勲監督『かぐや姫の物語』は女性映画の傑作だ。

    2013-12-03 15:33  
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     高畑勲監督、スタジオジブリ制作のアニメーション映画『かぐや姫の物語』を観て来ました。
     先行上映で観たひとの間では高畑勲最高傑作との声望も高く、いささかハードルを高くして観に行ったのですが、いや、凄かった。素晴らしかった。マジ傑作。
     今年はアニメ映画のあたり年ですね。『風立ちぬ』、『劇場版魔法少女まどか☆マギカ 新編/叛逆の物語』、そしてこの『かぐや姫の物語』と、歴史的マスターピースが三本もあった。
     個人的には『もののけ姫』と『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』が並び立った97年以来の快挙です。
     まあ、スタジオジブリの二作は観る前から「どうせ傑作だろう」と思っていたのですが、やっぱりそうでした。
     しかも二作とも「どうせ」とか中二病的なことをほざいているぼくの横面を張り倒すような若々しい作品で、いやまったく、70歳を過ぎてなお最高作を更新しつづける両巨匠のバイタリティには脱帽と云うしかありません。
     『風立ちぬ』ともども、未見のひとには「いいから、とりあえず観に行け。話はそれからだ」と云い切れる驚異的なクオリティに仕上がっています。
     商業的に成功するかどうかは何とも云えないけれど、一本のアニメーションとして、さすがの作品。殊に作画、演出の並々ならぬ冴えは、まさに巨匠の仕事で、2時間をゆうにオーバーする上映時間をまったく飽きさせません。
     そもそも、ふつう、70歳を過ぎてここまでの大作を撮ろうとするか? じつに8年もの歳月をかけ、50億円を蕩尽して描き出された映像空間には生命が宿り、木の芽から花々、カエルや雉にいたるさまざまな生き物が活き活きと動いています。
     兵器づくりの光と闇を描いた『風立ちぬ』をタナトスの映画だとするなら、『かぐや姫の物語』はまさにエロスの賛歌。この映画の本質は「猥雑なるいのち」をどこまでも力強く肯定するところにあるのです。
     以下ネタバレですが、この映画は基本線としては『竹取物語』のお伽話を下敷きにし、ほとんどそこから逸れません。しかし、それでいて、『竹取物語』では描かれることがなかったかぐや姫の内心を描写してゆくことで、かの名作を換骨奪胎してゆきます。
     その「生命賛歌」としての側面はノラネコさんの記事(http://noraneko22.blog29.fc2.com/blog-entry-696.html)を読んでもらうとして、ここでは少し違う話をしてみましょう。
     この映画、ひとりの女の半生を描いた女性映画として観ることがことができると思います。そういう視点で観たとき、そのリアリティには驚かせられるものがあります。『竹取物語』ってこういう話だったのか!と。
     まず、ほとんどフェミニズム映画かと思うくらい、男どもがそろいもそろってどうしようもない。いや、まあ、原作に忠実と云えばそうなんだけれど、それにしても男性陣のろくでなしぶりは克明を極め、見ていて痛々しいかぎり。
     ああ男ってほんとうに莫迦だなあ、としみじみ考えさせられる描写になっています。
     そもそもかぐや姫を拾って彼女の義理の親となる「竹取の翁」にしてからが、かぐやを高貴な姫に育て上げることが彼女の幸せと思い込んで暴走し、結果的に彼女を追い詰めていく始末。
     その愚かしさは聡明で質実を好む「嫗」と一対で、こういう父親に育てられた娘は可哀想だと思わずにはいられません。
     翁が始終その賢い「嫗」を見下し、「お前は何もわかっとらん」と口にするあたりも、もう、リアルなことこの上ない。
     その後、かぐや姫にプロポーズしつづける男たちにしても、彼女の噂だけですべてを決め、一切その内面を見ようともしない愚物ばかり。
     きわめつきは帝その人で、これがもう、自分はだれにでもモテると思い込んでいる勘違いセクハラ野郎以外の何ものでもありません。その帝に後ろから抱きつかれたときのかぐやのゾッとする感じ、素晴らしかったですね。いやあ、昔話だというのにリアルなこと、リアルなこと。
     唯一、