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人間経済科学と賢人たちの教え その19
2021-12-29 12:53
産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/1月号連載記事■その19 インディ・ジョーンズと「人間経済科学」●経済学(社会科学)は数式では表せない 天文学、数学、物理学のようないわゆる「自然科学」では、仮説を立て、それに基づいた実験を行ったり、論理的に完全に実証できる「証拠」を見つけ出して、仮説の正しさを証明する。 しかし、歴史に「もしもは無い」と』よく言われるように、設定条件を変えて「本能寺の変」をやり直すなどということは不可能だ。映画やドラマでは、歴史の「もしも」を扱った作品がよく見られるが、それは「あり得ないことを実現したい人間の願望」といえる。 また、人体実験はもちろんのこと、例えば貧富の差が人格形成に与える影響を調べるために、生まれたばかりの赤ん坊を両親から引き離して、貧困家庭と富裕家庭で育てさせるなどということも、倫理上当然許されない。「 -
人間経済科学と賢人たちの教え その9
2020-12-31 13:04産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/1月号連載記事■その9 人間は金で動くのか?自由・市場・知識●あなたは金で動く人間か? 「あなたは金で動く人間か?」と問われて「はい、そうです。お金さえもらえれば何でもやりますよ!」と答える読者は多くないだろう。一方、私も含めて「お金を嫌いな人間はめったにいない」のも事実である。 シンプルに言えば「お金は好きだが、お金の奴隷にはなりたくない」というのが、ごく普通の人間の感情では無いだろうか? だから、「より金銭的に得をすることだけを考える人間=お金の奴隷」=「合理的経済人」なるものを標準モデルとする近代経済学がまったく役に立たないのも当然かもしれない。 行動経済学の実験などからも、人間の経済行動は、単なる金銭的損得だけでは無く、社会的規範や倫理基準に大きく左右されることが分かってきている。 例えば、行動経済学 -
人間経済科学と賢人たちの教え その5
2020-08-08 01:47産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/8月号連載記事■その5 共感・同調が社会・経済の基本原理●「国富論」は「道徳感情論」の別冊であった アダム・スミスが1776年に著した「国富論」は、近現代における経済学の出発点とされるあまりにも有名な本であり、実際に読んだことがあるかどうかはともかく、その名を知らない読者はいないはずだ。 しかし、世の中に意外と伝わっていないことが二つある。 一つはアダム・スミスが道徳哲学の教授であったことだ。 グラスゴー大学卒業後、オックスフォード大学中退。1748年にエディンバラ大学で文学と法学の講義を始めた。そして、1751年にはグラスゴー大学の論理学教授に就任し、翌年道徳哲学教授に転任しているのである。 1750年には、「人間本性論」で有名なデビッド・ヒュームと出会うが、彼が死ぬまで生涯親しく交流し、強い影響を受けるこ
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