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記事 6件
  • 書評:10万年の世界経済史<上>

    2018-08-16 02:32  
    書評:10万年の世界経済史<上>  グレゴリー・クラーク著 日経BP社  https://amzn.to/2nyIcyi  まだ全体の半分である<上>を読んだだけで判断するのは早すぎると思いますが、まとまりの無い内容です。確かに個別のエピソードや資料などには興味深いものが多いのですが、<10万年の世界経済史>という壮大なタイトルの割に、中身は「枝葉末梢」のちまちました記述が続きます。  世界の経済・社会が1800年頃から(正確な始まりの時期については諸説がある)の産業革命によって激変し、それ以降急速に成長を始めたことについてはよく取り上げられます。  それが「その時代に」「英国で」始まったのが必然であったのかどうかについても論争があります。私自身は、<「歴史のべき乗法則」(詳しくは「歴史の方程式 科学は大事件を予知できるか」マーク・ブキャナン 著、早川書房を参照)の原則に従って、社会や経
  • 為替市場動向~恐るべしは心理?~

    2017-09-21 14:35  

     暗雲たちこめて始まった9月。  何が起こるか恐れられた北朝鮮の建国記念日9.9に(幸いにも)ミサイルは飛ばず、週開けて飛んだのはマーケット。  一つの心配が片付くと、次々に懸念事項は和らぎ(被害に合われた方々には心苦しいですが)、米国の巨大ハリケーンは想定内で過ぎ去り、債務上限問題は3か月延長となり、心配ごとをヘッジしたショート・ポジションは急速な手仕舞いにより、「あらよあらよ」の間に一時107円台前半をつけたドル円相場が111円台回復、一時200日移動平均線を割った日経平均も日本の衆院解散選挙のネタも重なり19日には2万円台に。 ※余談ですが、解散総選挙で、安倍政権の成長戦略の柱「働き方改革関連法案」や話題多い「カジノ法案」審議先送りのようです。選挙=株高は定型反応でしょうが、なんだかな~と独り言が出てしまいます。  話を市場心理に戻します。いつもの事ではありますが、かくも簡単に変
  • 為替市場動向~円金利の底は見えた?~

    2016-08-12 16:33  
     期待過熱で迎えた7月末の日銀の金融政策決定会合。  出たら仕舞い? 出なければ売り?との声も聞こえていましたが、出てきたのは日銀によるETF買い入れ額6兆円へ(これまでの約倍額!)という株価支援 策でしたが、市場は、「次回の決定会合でこれまでの経済、物価動向や政策効果に『総括的な検証を行う』」という部分に大きく反応しました。  この『総括的検証』に対する解釈により、Brexitショックの緩和と新たな政策期待で過熱していた相場は、冷や水がかけられた格好になりました。  そして、それに追い打ちをかけたのが、その後発表された第2四半期の米国GDP数値の下振れで弱気が先行、ドル円相場は一時101円を割る場面もありました。  8月4日に英国中銀の量的緩和パッケージは好感され、下値は支えられた格好にもなりましたが、大きく反転するきっかけになったのは、先週金曜日発表の7月米国雇用統計で非農業部門の雇
  • 日本版スチュワードシップ・コードについて

    2014-09-25 11:25  
    先日、勉強会に参加したところ日本版スチュワードシップについての解説をお聞きすることができました。  私自身も安倍政権の「成長戦略」の一つである、この施策についてあまり深く調べたこともありませんでしたので、理解するのに良い機会でした。  これは、英国にあるスチュワードシップ・コードをそのまま模倣して持ち込んだものですが、その成立の過程には大きな差があります。  本場の英国では、1991年から20年間程度にわたって機関投資家が各株式を保有する企業に対してどのように対話して、ガバナンスに関与していくかということが繰り返し議論されています。  そうした議論を積み重ねたうえで、特にリーマンショック後の株主責任を問われることになった際に、より一層のコーポレートガバナンスの議論と株主責任(特に機関投資家)の議論が起こり、こうしたスチュワードシップコードに収斂されてきたものです。  一方で日本の場合には、
  • 英国ISA制度を聞いてきました!その2~金融機関側の意見~

    2013-04-04 11:27  
    2月に英国にISA(少額投資非課税制度)についてヒアリングをしていました。  今回はそのヒアリングの第2弾。主に金融機関側から見たISA制度の利用についてまとめていきます。1.証券会社からみたISA(アイサ)    ISAは1年間で利用できる投資金額が決まっていますが(英国では135万円程度、日本では100万円)、この非課税枠は翌年に繰り越して利用すること はできないがゆえに、期限を迎える前(英国は4月初旬、日本は3月15日)に金融機関は大規模な利用キャンペーンを張ることができます。  これは、金融機関側からすれば正直なところ、ISAだけではキャンペーンの費用を回収することはできませんが、ISA口座を利用してくれるユーザーはそ の他運用資産についても良質なユーザーになってくれる可能性が高く(実際に英国ではISA口座の利用者は、他の口座開設者よりも移動がすくない)、ISA 以外の資産を預かり
  • 英国ISA制度を聞いてきました!

    2013-03-25 15:05  
    来年から日本でISA(少額投資非課税制度)が始まるのをご存知でしょうか?  これは日本で株式投資を活性化させるために、ここ数年税制の中で検討されてきた制度で、もともとは英国のISA(Individual Saving Account)を模範とした制度となっています。  日本では現在開かれている通常国会で法案が通過して、来年から導入される予定ですが、模範としている英国では20年以上も存在している制度です。  そこで先月本場の英国に行く機会がありまして、様々な金融機関にこのISA制度などをヒアリングしてきましたので、これから数回にわたりまして英国の金融機関やISA制度の話について見てきたこと、聞いてきたことを報告したいと思います。1.英国ISAの歴史  英国ではこの株式投資優遇制度は、サッチャー政権時代に国営企業の民営化プログラムが発端だと言われています。  つまり英国で国営企業を民営化する際