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人間経済科学と賢人たちの教え その21
2022-03-26 11:52
産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/4月号連載記事■その21 「現場重視」の日本型経営が競争力の秘密●人間は狂ったサルか? 「人間は狂ったサルである」と表現されることがしばしばある。縄張り争いのために、敵(国)を攻撃して殲滅するだけでは無く、核兵器などというものまで生みだして、敵だけでは無く自国も含めた人類滅亡の危機を招く。 さらには、存在するかどうかもわからない「神」のために凄惨な殺し合いを行う。果ては、自分の信じる神を敬わないからと言って、生きたまま焼き殺したり、車で八つ裂きにしたりする。 このような人類を「正気」だというのは難しいであろう。 それでは、人類が狂っている原因は何か? 人間の知性や思考を、他の動物から際立たせている、極めてよく発達した大脳皮質にあるのだ。もちろん、大脳皮質が発達することによって、人間の高度な文化・文明が進展し -
人間経済科学と賢人たちの教え その12
2021-05-02 01:49
産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/5月号連載記事■その12 自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ●自分が成長する リクルートの社訓(旧)「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」は、1968年に、創業者・江副浩正氏によって制定されたスローガンだ。 実は私は学生時代、リクルートのA職というアルバイトをしていた。アルバイトと言ってもスーツにネクタイ姿で、アタッシュケース(当時の営業マンの必須アイテムであった)を抱えながら、営業先を回るというものである。勤務時間は9時~5時どころか、残業が月70~100時間になることも珍しくないという、猛烈な仕事内容であった。 学生アルバイトなのだから、いつ辞めても良かったわけだが、喜んで働いていたのは、学生としては破格のアルバイト料(後に短資会社に就職した時には、残業が無くなったせいもあるが、月給 -
人間経済科学と賢人たちの教え その10
2021-03-06 13:45
産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/3月号連載記事■その10 ドラッカーはすぐれた【傍観者】である●傍観者の時代 経営者やビジネスマンで、ピータ―・F・ドラッカーの名前を知らないものはいないだろう。大学教授でもあったが、若いころ『経済人の終わり』というナチス・ドイツやヒットラーを批判する本(英国の宰相ウィンストン・チャーチルにも称賛された)を発行したため、母国オーストリアから離れざるをえなくなり、その後ファンド・マネージャーや記者などを経験しながら、最終的に米国でコンサルタントとして活躍する。 大きな転機は、GM中興の祖と呼ばれるアルフレッド・スローンからのコンサルティング依頼を受けたときだ。当時はまだ「マネジメント」という概念がほとんどなく(ドラッカーが確立したといえる)、手探り状態だったのだが、「生きて活動している企業」と最初に格闘した上 -
孫子と三賢人のビジネス その18
2020-03-12 14:22産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/3月号連載記事■その18 情報収集●情報と知識 ピーター・F・ドラッカーは、「情報」と「知識」はまったく異なるものだと述べます。前者は現代風に言えばすべて「ビット」に置き換えることができます。つまり、「ゼロまたは一」の二進法の数字(またはランプの点滅)で表すことができ、「アルゴリズム」で計算可能算だということです。 このゴットフリート・ライプニッツによって確立された理論に基づき、現代のコンピュータが生まれました。 コンピュータの情報処理能力のすごさは、ここ数十年間で世界中が体感しましたが、コンピュータはあくまで情報を「処理」しているだけで、本当の意味での「判断」は行っていません。最近何回目かの「AIブーム」によって、「AI」が人間にとって代わるとの話が喧伝されています。 しかし、すべての人間の作業をAIがと -
孫子と三賢人のビジネス その11
2019-08-02 09:47産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/8月号連載記事■その11 形が無ければ壊れない。アメーバ型●人は城、人は石垣、人は堀・・・ 「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」は、武田信玄のあまりにも有名な言葉です。そして、生死をかけた軍隊のリーダーとして、最高レベルの「マネジメント」を信玄が行っていたこともこの言葉からうかがえます。 日本通(水墨画のコレクションはかなりのもの)のドラッカーが、この言葉を知っていたかどうかは定かではありませんが、まさにドラッカーの主張する(知識社会における)「マネジメント」の本質を見事に言い表しています。●大阪城はだれが建てたか? 私が小学生の頃に学校ではやったクイズに次のようなものがあります。「おい、大原!大阪城はだれが建てたか知ってるか?」「そんなの簡単だよ。豊臣秀吉!」「ブー。残念でした」「???」 -
孫子と三賢人のビジネス その6
2019-03-01 00:28産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/ 3月号連載記事 ■その6 最高の仕事は何もしていないように見える ●匡の技には無駄が無い 読者の中にも優秀なゴルフ・プレイヤ―はたくさんいらっしゃるはずです。 セミプロ級の方々、例えばハンディ・キャップ・ゼロのプレイ―ヤであればワン・ラウンドの間に打つショットはパターも含めて平均72です。さらに、本当のプロであれば、バック・ティーから打っても軽々60台です。 ところが、私のようなへぼプレイヤーは「百八つ。煩悩の数を目標にしています」などといいながら、実際にははるかに多くのショットを打って、山を越え、谷を下り、時には池に入りながら駆けずり回ります。 これを観て「大原さん、頑張っていますね」とほめる人物はいないでしょう(皮肉なら別ですが…)。「もうちょっと、打ちっぱなしで練習してきたら?」といわれるの -
孫子と三賢人のビジネス その3
2018-11-30 16:25
産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/ 12月号連載記事 ■その3 戦わずして勝つべし ◆何もしないおじさん 私の友人で、メディア業界で長年働いた後、現在は自身の事業を行いながら大学の講義で教えている人物がいます。彼は毎年の授業で必ず学生たちにこのように言うそうです。 「君たち、社会人になったら会社というところには、何もしないおじさんがたくさんいるんだよ!」。 すると、学生たちは 「へぇ・・本当ですか?働かないおじさんがたくさんいたら、会社が成り立たないと思うのですが・・・」 と怪訝そうな顔をします。 ところが、彼らが卒業して2~3年後に彼のところへ遊びに来ると 「先生のおっしゃったことは本当でした」 と口をそろえて言うそうです。 このような会話はあちこちで交わされていると思いますが、この「学生」や「先生」の考え方は根本的に間違っていま -
孫子と三賢人のビジネスその1
2018-10-04 02:15
産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/ 10月号連載記事■その1 ビジネスとは詭道(イノベーション)なり ●孫子とは? 孫子を知らない方はたぶんいないでしょう。しかし、その実像は謎に包まれています。例えば、「孫子」という言葉は、その著書の名前と著者の名前の両方に使われます。 著書の方は、途中で色々変化を遂げたにせよ現在まで連綿と伝わっていますが、著者の方は、実在したのかどうかさえ議論があるところです。春秋時代の武将である孫武であるとの説が有力ですが、その他に子孫と言われる孫ピンが著した孫ピン兵法もあります。本連載では、一般に「孫子の兵法」としてよく知られている、孫武が著したとされる書物を基本にお話していきます。 ●三賢人とは 古代から現在に至るまで賢人と呼ばれる人々はたくさんいますが、本連載で三賢人と呼ぶ場合には「ピーター・F・ドラッ -
ドラッカー18の教え 第18回
2018-08-30 13:16産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/ 9月号連載記事 ■ビジネスに最も大事なのは真摯さである。お金のためだけに働く人間はいない(社風) ●人間は嘘をつく動物である 嘘をつくというのは高度な知的活動です。例えば、ミドリムシやゾウリムシのような単純な構造の生物は、外界の刺激に対して反応するだけで、高度な思考の産物である「嘘」をつく余地などないでしょう。また、犬や猫も、見る限りでは人間に嘘をつくようには見えません(人間が騙されているだけかもしれませんが・・・)。サルも、少なくとも人間がつくような高度な嘘とは無縁のようですから、人間とサルの境界線は「嘘」をつくかどうかという点にあるのかもしれません。 「嘘」というのは、一般的に悪いことのように考えられていますが、そんなことはありません。「嘘をついたことが無い」という人物は120%嘘つきだと言われ -
ドラッカー18の教え 第17回
2018-08-01 18:18
産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/ 8月号連載記事 ■強みに集中し、弱みは無視しろ ●企業は強みによって競争に勝つ、弱みでは無い 「企業は強みによって競争に勝つ、弱みでは無い」という言葉がドラッカーの考えを雄弁に物語っています。ただ、神が与えた人間の本能は、多くの人々に全く反対の行動をとらせます。 役所に申請に行って「あっ、10頁の3行目ですけど、「ケ」の横線がちょっとだけ枠からはみ出ているので、再作成して提出してもらえますか?」と言われるような官僚主義は別にしても、「他人の欠点や間違いを見つけ出す才能」は、ほぼ万人に公平に与えられています。読者の方々も、上司、あるいは部下の欠点の一つや二つ上げるのはわけないことでしょう。あるスポーツ紙はだれが日本の首相になってもけなすことで有名ですが、どれほど優れた宰相でもスポーツ新聞のネタにできるよう
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