-
ヴェルナー・ゾンバルト「恋愛と贅沢と資本主義」の視点(その2)
2023-07-13 21:07
100年以上前の本ですが、タイトルはドイツの経済学者ゾンバルト(1863-1941)の書籍です。 アマゾンリンク ⇒ https://amzn.to/3JCkwmW ゾンバルトによれば、フランスのルイ14世の時代には、国家財政の3割弱が王様の個人的な支出だったそうです。これらの個人的な支出は手工業者や大工の左官仕事に費やされましたが、画家、金属細工屋、ガラスや、彫刻家にも多額の支払いとなりました。マリーアントワネットの衣料費については細かい記述があります。 そこで、思考実験です。 仮に、人類の供給能力が格段に向上したとしたら、どうなるでしょうか。 単なる需給論・均衡論で考えるとモノの価格は限りなくゼロになってしまいます。 なぜならば供給能力が格段に上がれば需要と供給のバランスが崩れてしまい価格が暴落するからです。 株式投資ではこれからのことを考えるのですが、わたしたちの狭い視野で考える -
父と野辺山にて
2023-06-13 01:12
1935年生まれの父から聞いた話です。 音西と書いて「おにし」と読ませる珍しい苗字があるそうです。 「おとにし」さんなら普通の読みですが、それを「おにし」と読ませる読み方に心当たりのある方はいらっしゃいますか。 おにし(音西)一族が長野の八ヶ岳の野辺山で林業を戦時中に営んでいたそ うです。 太平洋戦争末期は鉄不足、金属不足、資源が足りない中でした。 国策として、北海道民を長野に移住させて、長野の木の伐採量を上げようとしたそうです。 おにしさん一家も北海道からの移住組でした。 野辺山周辺は多くのカラ松があります。 高地であり飛行訓練もできます。 燃料不足の日本軍のために木炭などの燃料や木製グライダーを作るためだったのでしょう。連合国から石油を止められて日本は物資不足・燃料不足に追い込まれていたのです。 一方、1945年5月の名古屋大空襲では父の実家は全焼してしまいました。 父一家は北海道 -
株式会社の話その2
2022-06-29 16:23
「昔の話などつまらない。」などと言わずに今回も少しお付き合い下さい。 前回はこちら ⇒ http://okuchika.net/?eid=10587 現代社会では当たり前のような組織形態となっている株式会社ですが、それは事業のリスクの存在が背景になっているということは前回の話にも出てきたかと思います。 420年も前に設立されたオランダの東インド会社のアジア進出において組織化されでできたのが世界初の株式会社なのです。欧州からアジアに辿り着くには陸路か船しかなく、欧州の人々が必要としたアジアの香辛料を求めて商人たちはこぞって東アジアの地に船出した訳です。 そこには時に嵐が吹き荒れ、波にもまれての厳しい航海があったに違いありません。そうした事業のリスクと費用を賄うための仕組みが株式会社なのです。 株式会社制度が生まれたことが今日の経済発展の礎になっていると言っても過言ではないでしょう。 ただ -
"経済学者たちの日米開戦"の著者、牧野邦昭さんと考える。なぜ人は合理的な判断ができないのか? 後編
2022-06-17 19:16
小屋が様々な有識者の方々と対談を行うシリーズ。 今回は、牧野教授との対談、後編をお届けします。■経済思想史的に「日本人がお金を運用しない問題」はどう見える?小屋:僕はお客さんのパーソナルファイナンスの分析をしながら、アドバイスする仕事をしているわけですが、「日本人」という大きい主語で言うと、お金を運用してない人が多いんですね。 ですから、結果的に最初のアドバイスは、十中八九「運用しませんか?」となります。 ところが、十分に資産を持っている人でも、運用、投資と聞くと「怖い」と言う人が少なくないんですね。 日本人はどうしてこんなに運用を怖がるんだろう、と。 合理的に考えると、資産の一部を運用したほうが成長するわけで、経済思想史的に「日本人が運用しない問題」はどう見えていますか?牧野:きっと小屋さんとはそういう話をするんだろうなと思って、少し調べてみました。すると、日本人は元々、運用や投資に -
経済学者たちの日米開戦"の著者、牧野邦昭さんと考える。なぜ人は合理的な判断ができないのか? 前編
2022-06-07 15:54
小屋が様々な有識者の方々と対談を行うシリーズ。 今回は、小屋の高校時代の友人でもある経済学者の牧野さんとの対談をお届けします。 ある日、なんとなくテレビを見ていたら、中学、高校時代の同級生が登場。 それもNHKの歴史番組のメインゲストときたら、驚きますよね? 今回の対談の相手、牧野邦昭さんは小屋さんの中高時代の同級生で、2021年から慶應義塾大学経済学部の教授を務める経済思想史の専門家。 2018年に出版した『経済学者たちの日米開戦:秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く』(新潮選書)は、緻密な事実と資料の積み重ねによる新事実の発見と行動経済学や心理学の研究を引用した大胆な仮説で話題となりました。 テレビで同級生の著作を知った小屋さんは、さっそく通読。「日米開戦に踏み切ってしまったのは、正しい分析がなされていなかったから」「一流の経済学者らが分析した情報はあったが、一般には知られていなかった -
人間経済科学と賢人たちの教え その23
2022-05-26 13:18
産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/6月号連載記事■その23 ノーベル賞経済学者の大罪●アルフレッド・ノーベル 今や世界中の誰もが知るようになったノーベル賞は、1833年にスウェーデンに生まれた化学者、発明家、実業家であるアルフレッド・ベルンハルド・ノーベルの遺産によって創設された。彼は、350もの特許を取得し、中でもダイナマイトの開発で巨万の富を築いたことから、「ダイナマイト王」とも呼ばれた。 遺言で賞を授与するとされた分野は、まずは物理学、化学、医学または生理学の3分野である。さらに4つ目として(理想的な方向性の)「文学」、5つ目は軍縮や平和推進に貢献した個人や団体に贈る「平和賞」である。 実業家であると同時に化学者でもあったノーベルが「科学・化学」関連分野の研究を高く評価していたのは間違い無い。ダイナマイトを含む多数の発明は科学・化学の -
人間経済科学と賢人たちの教え その22
2022-05-20 16:03
産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/5月号連載記事■その22 アダム・スミスと人間経済科学●アダム・スミスと「道徳感情論」 アダム・スミスの名前を知らない読者は多分いないであろう。彼が1776年に発刊した「国富論」は、今でも経済学の聖典として扱われている。スミスが「経済学」の始祖というべき人物であることに異論は無いはずだ。 しかしスミスが、映画ハリー・ポッターの撮影に使われたと言われるグラスゴー大学の道徳哲学(最初は論理学)教授であったことはあまり注目されない。1759年に「道徳感情論」を出版したが、当時はこちらの方が大ベストセラーであり、「国富論」はこの大ベストセラーの内容のうち「人間の経済」に関わる部分をより詳しく解説した別冊として企画されたのだ。 したがって、「国富論」を読むだけでは、アダム・スミスの思想の表面だけを撫でることになってし -
人間経済科学と賢人たちの教え その21
2022-03-26 11:52
産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/4月号連載記事■その21 「現場重視」の日本型経営が競争力の秘密●人間は狂ったサルか? 「人間は狂ったサルである」と表現されることがしばしばある。縄張り争いのために、敵(国)を攻撃して殲滅するだけでは無く、核兵器などというものまで生みだして、敵だけでは無く自国も含めた人類滅亡の危機を招く。 さらには、存在するかどうかもわからない「神」のために凄惨な殺し合いを行う。果ては、自分の信じる神を敬わないからと言って、生きたまま焼き殺したり、車で八つ裂きにしたりする。 このような人類を「正気」だというのは難しいであろう。 それでは、人類が狂っている原因は何か? 人間の知性や思考を、他の動物から際立たせている、極めてよく発達した大脳皮質にあるのだ。もちろん、大脳皮質が発達することによって、人間の高度な文化・文明が進展し -
人間経済科学と賢人たちの教え その18
2021-12-03 01:03
産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/12月号連載記事■その18 人間経済科学が目指すもの●「人間経済科学」とは 「人間経済科学」という言葉は、私と財務省(大蔵省)OBの有地浩が中心になって「人間経済科学研究所」(https://j-kk.org/)を創設する際に生み出した造語である。 したがって、「人間経済科学」とは、「人間経済科学研究所」で研究している内容という定義の手法もあり得るが、それでは、読者にはいったい何のことかわからないであろう。 端的に言えば、「人間経済科学」とは、「人間」と「経済」を結び付けて考察する学問である。「経済とは人間の営みの一部」であるから、これは当たり前のようにも思える。しかし、これまでの経済学、特にマルク主主義や近代経済学のように「唯物主義」に基づく学問では、人間を「個性や感情を持たないもの」として扱う。典型的な -
人間経済科学と賢人たちの教え その17
2021-11-01 15:27
産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/11月号連載記事■その17 資本主義社会では誰もが味方であり敵である●知らないやつは殺せ 「銃・病原菌・鉄」(草思社)のベストセラーで有名なジャレド・ダイアモンド氏の著作に「昨日までの世界」という本がある。同氏が鳥類研究などのために足しげく通ったニューギニアなどの「小規模血縁集団」と現代の「巨大な国家」との対比の中で「人間社会の本質」を見事に描き出している。 両者は奥深い部分での共通性がかなりあるのだが、違いも相当ある。その中でも特筆すべきなのは、「小規模血縁集団」は、文字通り「血縁関係がある顔なじみの集団」で暮らしているのに対して、現代人は「日常の大部分をどこのだれか分からない人物との接触」に費やしていることである。 「小規模血縁集団」の場合は、隣の集落と友好関係を結ぶこともあるが、大概は限られた食料資源
1 / 7