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記事 15件
  • 運用業界だけ変革しても難しい

    2023-06-02 15:37  

     2023年4月21日に金融庁から公表された「資産運用高度化プログレスレポート2023」を読みました。 毎年でているレポートの今年度版ですが、すでに多くの方が内容については批評しています。なので、中身についてはさらっと紹介するにとどめます。 内容については、主に国内の運用会社の課題として・運用者会社の経営者の在任期間が短い・経営トップがほとんどグループ内企業からの天下り的な就任である・ファンドの運用担当者が非開示であることが多い・ファンドの保有銘柄の開示も不十分・投資信託の本数が多すぎる・ファンドラップや投資信託の信託報酬の報酬金額設定が不明確などが挙げられています。 主に米国などの外国と比較して、日本の運用会社は…などの指摘が多いのですが、実際に私も運用会社がこうした課題を抱えていることは認めるものの、一方でこうした課題を解決すれば、日本の個人の運用状況が改善されるのかというとそうでも
  • 顧客本位とは何か?

    2023-05-23 18:41  

     5月12日(金)に、京都信金QUESTIONで開催されたイベント「顧客本位ってなんだ」に参加してきましたので内容を報告したいと思います。 まず最初に講演いただいたのが、「捨てられる銀行」シリーズで有名な共同通信編集委員の橋本卓典さん。 今回、第2部パネルディスカッションで参加いただいた、北國銀行、京都信金の2つの金融機関がどのように顧客本位な体制を築いてきたかというお話でした。 北国銀行は現在ホールディングス社長の杖村修司さんが、2013年の専務時代から大きな変革を起こしたそうです。 行内での変革の合言葉としては「顧客起点か?」ということを大切にして銀行内で起こるあらゆる事を「銀行目線」ではなく「顧客目線」「顧客起点」で再構築しなおしたようです。 営業のノルマも廃止し、収益主義、成果主義から顧客主義へ大きく変えました。 この変革を支えたのは、銀行システムの変革だったそうです。 銀行のシ
  • 顧客の立場に立ったアドバイザー

    2023-04-11 11:16  

     昨年2022年12月9日に金融庁の市場制度ワーキンググループで「顧客本位タスクフォース」の中間報告が行われました。https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20221209.html この報告書の中で「顧客の立場に立ったアドバイザー」という項目があります。『方策の一つとして、一定の中立性を有するアドバイザーの見える化に取り組むことが考えられる。具体的には、諸外国では、アドバイザーが提供できる商品・サービスの範囲や、顧客からのみ報酬を得ているかどうか等に着目している点を踏まえ、我が国においても、(i)アドバイザーが金融商品の販売を行う金融事業を兼業しておらず、家計の全体最適とポートフォリオの最適化の観点から、幅広い金融商品を対象としたアドバイスが可能かどうか、(ii)金融商品の組成・販売会社からの手数料等を受け取らず、報酬は顧客からのみ得
  • 米国でのアドバイスの進化

    2022-10-29 12:08  

     こんにちは、小屋です。 10月27日(木)に、小屋が親しくしているAnnさんという米国のアドバイザーに東京でセミナーをやってもらう予定になっています。 そこで、当日のセミナー内容の資料を事前にもらいながら確認をしている中で、興味深い資料がありました 「The Advice value Stack」という名前で、「アドバイスの価値の積み重ね」という意味合いだと思います。
     図は山のような形になっていて、一番下から1)お金の管理(お金の管理者を選ぶ、アセットアロケーション、証券の選択、収入、保険、税金、借入、キャッシュフロー)次に2)ゴールへの到達(友人、同僚、健康、リタイアメント、相続、寄付)次に3)精神的な豊かさ(愛する人を気遣う事、コントロールされていること、より多くの自分の時間を持つ、不安からの解放)最後に4)満たされた状態(人生の意味を達成する、遺産をのこす)という順番で、アドバ
  • アドバイザーが中立な立場に立つことの難しさ

    2022-10-06 11:43  

     株式会社マネーライフプランニングでは、「投資助言業」という財務局登録をして金融機関とは距離を置いた、独立したアドバイス会社としての経営をしています。 ここで言うところの「独立」とは、金融機関とのしがらみ(販売や手数料)などが全くないために特に忖度や配慮や偏りをなくし、顧客にとって最善と考えられるアドバイスを実現しやすい環境であることを意味します。 改めて、このような事について触れるのは、最近2つのことで「独立」したアドバイスが求められていると実感したからです。 1つ目は、日経新聞社との新しい取り組み。 8月末から実験的に、日経新聞社の読者層、日経IDの保有者層に対して、FPアドバイスを提供するという取り組みを実験的に始めています。 その取り組みの中で、多くの相談者の方から 「このような独立したアドバイスを欲しいと思っていたんだけど、なかなかそのような人が見つからなくて、今回の日経の案内
  • 占部伸一郎さんと考える「人的資本」の高め方-後編

    2021-09-29 09:59  

     今回は、1986年に国内初の独立系経営戦略コンサルティングファームとして設立された「コーポレイトディレクション」のExecutive Consultant、Group Board Memberである占部伸一郎さんをゲストに迎えました。 大学時代に出会い、今では小屋さんのクライアントでもある占部さんはコンサルタントとして、モバイル、インターネット、通信関係、流通小売、不動産業界など、幅広い分野で中期計画の策定、新規事業の立上げ、組織改革などに取り組んできた経験の持ち主です。 そんな占部さんと語るのは、コンサルタントの仕事が作り出す付加価値と人的資本の高め方、そして一個人としての資産運用との向き合い方について。 長い付き合いの二人だからこその本音ベースでの対談になりました。前回の記事(前編)の続きになります。●法人の持つ「お金」と個人の家計の「お金」は種類が違う?小屋:もう1つ、この機会に
  • FAを考える その2

    2021-08-30 20:33  

     前回は、ここ数年の動きとして、金融機関(主に証券会社)から営業マンが続々とIFA(独立系投資アドバイザー)へ流れ込んでいると書きました。1.オンラインの発達により(オフィスに居なくとも)データや金融情報の取得が容易になったこと、2.仲介業で扱える金融商品の幅が広がったこと、3.証券会社では相変わらずのノルマ営業が続いていること等々、様々な要因から自由な働き方を求めて人材が移動し易い時代になっています。 特に1.と、3.の要因が大きいようです。 大手証券会社ともなると日々の株式の売買や売出しなどの営業は当たり前のこと、新旧の投資信託の募集、毎月数種類出てくる新たな債券(仕組債など)の販売、ラップ口座の新規獲得などなど、毎月6~8種類くらいの締め切りがある商品にノルマが課されており、「商品毎に2~3日(の締め切り)で消化しなければならず、落ち着いた営業など出来ない」と言う声をよく聞きます。
  • 金融庁発、100年時代の資産形成・管理について

    2019-06-07 22:20  
     先週の5月23日(木)に、健康診断で病院にいたところ、朝日新聞の一面に「人生100年、蓄えは万全?「資産寿命」、国が世代別に指針 細る年金、自助促す」と書かれているのを見かけてびっくりしました。 日経新聞ならともかく、朝日新聞でもこういう資産運用がテーマである記事が一面になるようになったのだ…と感慨深くもありました。 この一面の記事は、前日5月22日に金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループの「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)の発表を受けての記事でした。 ということで、小屋も原文を読んでみました。金融審議会市場ワーキング・グループ「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案) https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market_wg/siryou/20190522/01.pdf 簡単に報告書のポイントをまとめると、・高齢化の進展、長
  • ヴァンガード米国本社訪問記~その3

    2019-03-07 17:44  
     昨年の10月にヴァンガードという世界最大級の資産運用会社(投資顧問会社)に訪問をしてきました。  今回はその訪問記の第3弾でヴァンガード社のパーソナルアドバイザーサービスについて解説します。  今回はわかりやすいように1米ドル=100円で記載しておきます。  まずは、米国のロボットアドバイザー業界の整理がありました。 ●ロボアド  シュワブ     270億米ドル(2.7兆円) Fee無し  ベターメント   120億米ドル(1.2兆円) 25ベーシスポイント  ウェルスフロント 100億米ドル(1.0兆円) 25ベーシスポイント ●ハイブリッド(ロボ+人間)アドバイス  ヴァンガード  1,000億米ドル(10兆円) 30ベーシスポイント  シュワブ       10億米ドル(0.1兆円)28ベーシスポイント  ベターメントプレミアム             40ベーシスポイント  
  • ロボアドを使いこなしていますか?

    2018-01-26 10:04  

     昨年あたりから、よく耳にするようになってきた「ロボアド」。  皆さんはちゃんと使いこなしていますか?  「ロボアド」はもちろん「ロボットアドバイザー」の略称です。  「ロボット」は人の代わりに作業をしてくれる機械なんだとして、「アドバイザー」って何なのでしょうか?  今回取り上げた「ロボアド」の「アドバイザー」機能は、あなたの資産運用のポートフォリオを合理的に組成し、リバランスを含めてマネジメントしてくれるアドバイザーです。  私も、「ロボアド」の大手であるウェルスナビ社とは親しいので、こうした資産運用のロジックに関しては意見交換も行っていますし、内容についても十分合理的で資産運用を行う際には積極的に利用して良いものだと思います。  しかし、「アドバイザー」の機能や水準としては残念ながらまだまだです。  先日、私のところにご相談に来られた方も、「ロボアド」を利用されていました。  利