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記事 10件
  • セラミックス:日本が誇る職人芸の世界10(最終回)

    2020-08-12 15:23  
     電力関連は主力の“がいし”とNAS電池に分けられる。 NAS電池は世界で唯一、発電所・プラント等で利用される蓄電施設で、2014.3期に売上高51億円、2015.3期158億円、今期は250億円(レポート作成当時)の計画で久々に約10億円の営業黒字に転換する計画。海外及び西日本地区の大口案件によるもの。1~3Qまでは赤字だが、4Qの大口案件で巻き返す計画。 しかし今期で大口案件は一巡してしまい受注残が僅かの状況から、2017.3期は小口案件ばかりだと売上高は50億円程度まで急滅してしまうだろう。 NAS事業に関わるスタッフは200~300名からなり、事業経費としては人件費が一番重く、好調なセラミックス関連への一時的な人員配置転換が、見た目の事業利益を左右させよう。 一方、ノリタケから分離し設立された際の祖業である“がいし”事業は安定的となってきた。 日本の鉄塔・電柱及びがいしは約40年経
  • セラミックス:日本が誇る職人芸の世界9

    2020-07-14 16:29  
    【NOXセンサー つづき】 燃焼効率を損ねずNOx発生を抑制させる方法としては低温化や低酸素化が有効だ。燃焼用空気の窒素と酸素が燃焼による高温で発生するサーマルNOxと燃料中の窒素成分が燃焼で酸化されて発生するNOxに分かれる。 だがサーマルNOxは燃焼温度が高い、酸素濃度が高い、高温域の燃焼ガスの滞留時間が長いと多く発生し、燃料中の窒素成分は酸素濃度が高いほど多く発生する。つまり酸素濃度が高いとNOが多く発生し易くなる。多くはこの過程でNOが発生し、大気中の酸化でNO2となる。 ガソリンと空気(酸素)を完全燃焼させるストイキ(理論空燃比)を採用するガソリンエンジンの排ガスには殆ど酸素を含んでおらず、空気過多の燃焼を行うディーゼルエンジンでも燃焼後の残留酸素は少なくなっており、排ガスの一部を吸気側に戻し、低酸素濃度のガスを吸気することで燃焼温度を低下させており、ポンピングロスも防げる。 デ
  • セラミックス:日本が誇る職人芸の世界8

    2020-07-01 00:43  
    【NOXセンサー】 前回のDPFに続き、ガソリンエンジンにもディーゼルエンジンで利用されているDPFと同様のフィルターが装着する見通しとなった。 というのが数年前に記述したレポートでして、ガソリンエンジン用のGPFについては、現況を確認してからいずれ億近でフォローさせて頂く予定です。 今回はNOXセンサーについてです。 世界的に排ガス規制が強化されることに加え、欧州の二酸化炭素、日米の燃費規制など、省エネ規制が段々と厳しくなってきている。 HC、CO、NOxを一度に酸化還元できる三元還元触媒採用は、ガソリンエンジンでのクリーンな排ガスが実現したが、燃費規制をクリアーするためには小排気量化や燃焼効率向上が求められる。 燃焼効率向上のためには圧縮比を高めることが手っ取り早いが、高めすぎるとノッキング、つまり異常燃焼が起こり、最悪の場合、ピストンが融けてしまいエンジンが破壊する。 排ガスエネルギ
  • セラミックス:日本が誇る職人芸の世界7

    2020-06-17 00:15  
    【コージェライトDPF、大型ハニカム】 ガソリンエンジン用に5億個以上の実績を背景に日本ガイシがコージェライトでもDPFに参入してきた。 特徴は低熱膨張、耐熱衝撃性でSiCの様に分割して製造し接着する必要がない代わりに、SiCと同様に片側の穴の目封じが必要だ。焼成温度は1200~1300度CとSiCより低く、コージェライトは低コストで製造可能。 DPF市場拡大見込みに加え、ガソリンエンジンでのパティキュレートフィルター搭載が視野に入ってきた(5年以上前のレポートですので、当時GPFは量産されていません)。 燃費を稼ぐために圧縮比を上昇させるとノッキングが生じやすくなることを記載したが、これを防ぐ方法としてシリンダー内に燃料を噴射する直接燃料噴射方式(一般に直噴という)が増加している。 吸気・圧縮・爆発・排気の4工程からなるピストンエンジンは排気後に空気とガソリンの混合気を吸引し圧縮させるが
  • セラミックス:日本が誇る職人芸の世界6

    2020-06-03 12:31  
    【ディーゼルエンジン用パティキュレートフィルター:DPF】 エンジンの排ガス規制が進む状況下、2000年に入り東京都の石原都知事によるディーゼルエンジンのススが問題との提言もあり、日本の規制強化が進み出し、海外に於いてもPM対策が取られるようになった。 対策としてはススであるパティキュレートを特殊なフィルターを通して捕獲・燃焼させる仕組み。 ガソリン車に搭載される触媒用フィルター(ハニカム)では入口から入った排ガスは内部の触媒金属で酸化または還元され、ガスはそのまま通り抜け排出される。だがディーゼル用フィルターでは捕獲が必要なため、一つの穴から入った排ガスは内部の壁を通過し隣り合わせの穴を通して排出される仕組みだ。 フィルターは一つ一つの穴を交互に目封じた構造で、パティキュレートは壁に残り、ガスは壁を通り抜ける一種の濾過作用で、通過出来ないパティキュレートはある程度溜まった段階で、燃料を噴
  • セラミックス:日本が誇る職人芸の世界5

    2020-05-20 00:21  
     自動車触媒担持用ハニカムフィルター(ガソリンエンジン用)のプレーヤーは日本ガイシとコーニングが2強で各々50%弱のシェア。残りはトヨタグループのデンソーで、素材の異なるメタルハニカムでは新日鉄住金マテリアルズ(日鉄ケミカル&マテリアル)。 触媒コンバータで初期に採用されたセラミックス材料はコージェライトが選定され現在でも利用されている。コージェライトはアルミナ、タルク、カオリンなど土中に含まれる成分でコストは・・・安いですね。 酸化アルミニウム(通称アルミナ)は地球上で酸素、珪素に次ぎ多い元素で、硝酸アルミニウムや硫酸アルミニウムを1200~1300度Cで熱分解または塩化アルミニウムを酸素または水蒸気で1000度C以上で反応させる。 酸化アルミニウムの2019年の輸入価格はキロ当たり30.9円。 カオリンはカオリン石から取れる粘土鉱物の一種で、カオリンの含有率が高いほど高温に耐える磁器と
  • セラミックス:日本が誇る職人芸の世界4

    2020-05-09 02:16  
     セラミックス製造方法は前号で終了し、今回は排ガス規制についてです。 日本ガイシ・日本特殊陶業ともガソリン、ディーゼル車両の排ガス、燃費規制強化により、ビジネスが大きく育ってきた。 1963年に米国で酸性雨、オゾン層保護が目的の大気浄化法が制定され、自動車排ガスや二酸化硫黄排出の制限やフロン、四塩化炭素全廃の規制が成された。 その後、1970年に改正法であるマスキー法が提案され、、1970年以降製造される車両の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)の排出量を10分の1以下に、1976年以降の車両では窒素酸化物(Nox)を10分の1以下とする世界一厳しい内容であった。 技術的に高い壁となったものの本田技研工業がCO、HC、Noxを同時に低減させるには燃料を完全に燃焼させる以外に方法はないと判断し、希薄燃焼実現に漕ぎ着けた。完成したエンジンはCVCCと名付られ、主燃焼室の上部に設けられた副燃焼室
  • セラミックス:日本が誇る職人芸の世界3

    2020-04-22 01:19  
    前号ではセラミックス製造の混錬を記載しましたが、今回は成形工程以降です。【成形工程】 成形方法には押出し、射出成形、加圧成形、鋳込み等がある。 押出し成形はセラミックス原料である粘度に圧力をかけ口金(一種の金型)から押出す方式。断面積が一定なのでパイプ状に適しており自動車排ガス用フィルターなどの多孔質セラミックス製造に適している。 押出し速度を一定にしないと断面積形状が変化してしまい、他に粘土成分、密度、特性も一定にする必要あり。 生産性向上を狙い押出し速度を高めると圧力による摩擦熱で原料特性が変化したり、口金の摩耗が激しくなる。かといって水分量を増やすと強度不足で重力に負け押出し直後に成形体として形状を維持できなくなり、可能な限り小さな力で押し出せる流動性と口金を出た時に形が崩れない保形成が必要である。 鋳込み成形とはセラミックス原料に水を入れてスラリーを作り、型に流し込む方式。 但しセ
  • セラミックス:日本が誇る職人芸の世界2

    2020-04-08 09:31  
     前号のセラミックスの種類に続き、2回目の今回は製造工程の混錬まで。【ファインセラミックス製造工程】 原料 → 混練 ⇒ 成形 → 乾燥 ⇒ 焼成 ⇒ 加工 → 製品 ファインセラミックス製品を作るのには、天然に存在する原料の人工的処理が必要で、ファインパウダー(微粉末)の研究がまず第一にある。 ファインセラミックス製品に使われるファインパウダーの条件は、 1)微粒子であること 2)粒子の凝集がないこと 3)粒子径が揃っている(狭い範囲での粒子径分布) 4)球状であること。 5)化学的に高純度 上記条件を満たすために気相・液体・個相反応により合成され、必要なら精製を行う。 微粉末にする際は粉砕法と合成法が使われる。【混練工程】 混練工程は原料・水・バインダーを調合して練り、成形で付きやすい(くっつく)混合物とし、成形後は保形成の良い原料とする工程。 練る工程は均質に分散させた粘土やバインダ
  • セラミックス:日本が誇る職人芸の世界

    2020-03-23 13:52  
     皆さんこんにちは。イノベーションリサーチの山田順一と申します。 今回から億の近道に投稿させて頂くことになりました。 まずは自己紹介から。 現在のみずほ証券(旧和光証券)で支店営業、引受企画部、国際金融部、国際営業部、営業企画部営業戦略室とプライマリーを2年経験しましたが、ほとんどはセカンダリーに従事し11年ほどのブローカー勤務です。 その後、現在のリンクスリサーチの山本さんのお世話になりバイサイドに転向し17年間運用業務に従事しました。ロングオンリーを3年、残り14年はロングショート運用担当です。 趣味は自動車で現在はスバリスト。自動車のほか、航空、原子力関係に従事する技術者の友人が多く、自動運転屋、電動航空機屋もいまして、話題を提供出来ればと考えています。 今回から隔週ではありますがセラミックスについて数回に分けて掲載させて頂くことになりました。 数年前に所属していた運用会社在職中に書