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孫子と三賢人のビジネス その17
2020-01-31 09:52産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/2月号連載記事■その17 マネジメントの原則・最初が肝心●最初が肝心 マイケル・ポーターは、「自社がどのような業界で、どのような位置(ポジション)を占めているのか」を知ることが、「競争戦略」を立案する上で極めて重要であると述べています。つまり、飲料業界のトップであるコカ・コーラ、自動車業界のリーディング・カンパニーであるトヨタ自動車、飲料業界の中堅であるダイドー、自動車業界の中堅であるマツダはそれぞれの位置で闘っており、そのあるべき「競争戦略」にも各社のポジションの違いが反映されるべきなのです。 孫子がそれほど長くは無い戦略書の中で「戦地の選択」に何回も言及するのは、それが戦略立案の基本であるからだというのは言うまでもありません。しかし、それ以上に「戦地は一度選択してしまえば後から変えるのは大変困難である」 -
孫子と三賢人のビジネス その14
2019-11-11 16:26産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/11月号連載記事■その14 高い丘にいる敵を攻めてはならず、丘を背にして攻めてくる敵は迎え撃ってはならない●自然淘汰で生き残るのは駆け引きにたけた生物である チャールズ・ダーウィンに始まる(生物の)進化論は、1859年に「種の起源」の初版が発刊されてから160年ほどの歴史しかありません。サー・アイザック・ニュートンが「万有引力の法則」を1665年に「発見」(「地上の引力が月などに対しても同様に働いている可能性があることに気付いた」とされている)してから200年近く後のことです。 また、アダム・スミスの「国富論」の初版は1776年に刊行されており、こちらも「種の起源」の100年近く前のことです。チャールズ・ダーウィンは、当時知識人の必読書であった「国富論」を読んでおり、一般のイメージとは違って、国富論(神の意 -
孫子と三賢人のビジネスその1
2018-10-04 02:15
産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/ 10月号連載記事■その1 ビジネスとは詭道(イノベーション)なり ●孫子とは? 孫子を知らない方はたぶんいないでしょう。しかし、その実像は謎に包まれています。例えば、「孫子」という言葉は、その著書の名前と著者の名前の両方に使われます。 著書の方は、途中で色々変化を遂げたにせよ現在まで連綿と伝わっていますが、著者の方は、実在したのかどうかさえ議論があるところです。春秋時代の武将である孫武であるとの説が有力ですが、その他に子孫と言われる孫ピンが著した孫ピン兵法もあります。本連載では、一般に「孫子の兵法」としてよく知られている、孫武が著したとされる書物を基本にお話していきます。 ●三賢人とは 古代から現在に至るまで賢人と呼ばれる人々はたくさんいますが、本連載で三賢人と呼ぶ場合には「ピーター・F・ドラッ -
バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第11回
2016-07-20 13:33産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/ 8月号連載記事■競争戦略の核心その3 仕入れ力(節約力) ●差別化とコストコントロール バフェット流で「ブランド力」と表現される内容は、ポーター的に言えば「差別化=競争力」と言えますし、ドラッカーの表現を借りれば「イノベーション」に相当するでしょう。 これら三つの内容は、全く同じではありませんが、同じことの違う側面に注目して違う表現をしているといえます。 例えば、一神教であがめる神はすべて同じ(イスラムは旧約聖書も新約聖書も経典の一つとして認めているし、イエス・キリストは周知のようにユダヤ人のユ ダヤ教徒であり、ユダヤ教の聖典である旧約聖書を認めている)なのに、イスラムではアッラー、ユダヤ教・キリスト教ではヤハウェ(エホバ)と呼び、それぞ れ全く違った宗教としてお互いに敵対しているようなものです。 また -
バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第9回
2016-05-25 13:53産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/6月号連載記事 ■競争戦略の核心その1 トレードオフ ●何をしないかが肝心 ポーター賞の重要な選考基準の一つに「トレードオフ=何をしないか」があります。通常企業を評価するときには、「どのようなことをしているか」に注目しますし、また「何をしていないか」を知るのは意外に難しいものです。 それでも、ポーターは「競争戦略」を考える上で「何をしないか」が極めて重要であると主張します。 ドラッカーは、この「トレードオフ」のことを「強みに集中せよ」と表現します。「弱みを改善するために大きなエネルギーを費やしても、せいぜい人並みに なる程度だ。それならば、その【エネルギーを強みに集中させ、他者を寄せ付けない強力な競争力を生み出せ】」ということです。 またバフェットは同じことを、「偉大な企業は常に一つのことに集中して成功し -
バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第8回
2016-04-27 10:05産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/ 5月号連載記事 ■ナンバーワン企業は強みに集中する ●「何をしないか」「何をやめるか」 ポーターの競争戦略論の中心は「トレード・オフ」=「何をしないか」です。 もちろん、何もするなというわけではありません。 「何をするのをやめて、そのエネルギーを他の何に集中するか」ということです。ドラッカーも、「人間も企業も『強み』によって輝く。弱みによってではない」と強調します。そして『企業は長所によって勝利するのであって、欠点によって勝つのではない』とも言います。 また、人間の欠点は基本的に直らないというのが船井総研創業者・船井幸雄氏の考えです。ですから、企業においても『欠点(弱点)を改善するために、多大 な労力を費やすのは非常に非効率である』ということです。しかし、船井氏は『長所を伸ばせば欠点はその長所の陰に隠れて -
バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第7回
2016-03-24 23:50産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/ 4月号連載記事 ■ポーター賞は情報の宝庫 ●ポーター賞 ビジネスマン・経営者の間でポーター賞の認知度が高まってきていますが、改めて基本的なことをご説明することにしましょう。 この賞は、一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)が2001年に創設しました。 審査の基準は、『業界の中でユニークな競争戦略を選択しているか』『イノベーションによって価値を提供しているか』の二つに絞り込まれていますが、要するに『他人と違うことをしているか』ということです(詳細はポーター賞ホームページhttp://www.porterprize.org/index.htmlをご参照ください)。 そして、この賞に名前を冠しているマイケル・ポーター氏は、著書『競争の戦略』が戦略論の古典的名著との呼び名も高いハーバード大学・大学院教授です -
バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第3回
2015-11-25 12:36産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/ 12月号連載記事 ■ナンバーワン企業の人事制度=「終身雇用の実力主義」 ●終身雇用と年功序列はセットでは無い 私がいつも奇妙に感じるのは、マスコミを中心とする多くの人々が終身雇用と年功序列をセットで語り、まるで分かちがたく結びついていて切り離すことが出来ないもののように扱うことです。 そんなことはありません。むしろ、両者は相反するものでありその調和しないものを一つの会社の中に押し込めようとするから、日本の多くの企業で問題が生じているのです。 なぜこの二つは相反するものなのか? まず、終身雇用について考えてみましょう。 前回述べたように、「会社は愛されなければならない」のですが、会社が愛されるためには会社が社員に対して誠実であり、なおかつ社員からも信頼される必要があります。 会社が社員から信頼されるた -
バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第2回
2015-11-12 19:36産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/11月号連載記事■ナンバーワン企業には多くの共通項がある ●子犬に老犬のトリックを教えることはできない 「子犬に老犬のトリックを教えることはできない」というのはバフェットの口癖です。彼が率いるバークシャー・ハサウェイに定年が無い(これまでの最高齢の現役は104歳)のも、ビジネスに関する知識や洞察力は年を経るごとに深まるという考えに基づくものです。 これは個人レベルだけの話ではありません。バフェット(バークシャー)の主要な投資先にも「老犬」が目立ちます。コカ・コーラは1892年創業、アメッ クスは1850年、ウェルズ・ファーゴは1852年、IBMは1911年と100年を優に超える老舗がずらりと並びます。 国としての歴史は米国など足元に及ばないが、資本主義の歴史は米国よりも短い日本で、私が重視するのは1945年 -
バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第1回
2015-10-02 14:51■ (競争)戦略とは、戦争のための策略である ●競争こそが発展の礎である マイケル・ポーターは、「競争戦略」を理論的に体系化したことで知られるハーバード大学教授です。しかし、「企業同士が競争をするなんて当たり前のことなのに、何を今さら・・・」と思われる読者も多いかもしれません。 確かにその通りです。 人類の誕生以来「戦争=争い」は絶えませんし、ビジネスでの競争も、物々交換まで遡れば、気が遠くなるほどの歴史を持つはずです。逆説的に考えれば、人類の繁栄やビジネスの発展に競争は不可欠なものだともいえます。 ところがかつて(現在でもそうなのかもしれませんが…)、小学校の運動会で、全員が一番になるように(誰もビリにならないように)50メートル競走の ゴール手前で全員が並んで手をつないでゴールインするというような「平等」教育が行われました。つまり「競争は悪だ」というわけです。 たぶん、どこか
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