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人間経済科学と賢人たちの教え その1
2020-04-02 16:21産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/4月号連載記事■その1 経済学ルネサンス・人間経済科学登場●役に立つ経済学とは 経済学が経済やビジネスの実践で役に立たない机上の空論であるという話はよく聞く。欧米では「経済学がどれほど役に立たない学問なのか」ということは、むかしから繰り返しジョークのタネにされているほどだ。 実際、私が大学を卒業してから35年あまり、金融市場を中心に経済・ビジネスと向き合ってきた中でも経済学(いわゆるマルクス経済学、近代経済学)が何かの役に立ったという記憶はほとんど無い。 なぜ経済学が役に立たないのか? それは、現在主流の経済学が「唯物論」に傾斜し、「生身の人間」のことを忘れ去っているからである。 現在の欧州からは想像できないが、中世暗黒時代はカルト的なカトリック教会が支配する、現代で言えば北朝鮮に匹敵するおぞましい時期であ -
書評:国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)
2017-12-06 17:49
書評:国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上) アダム・スミス 日本経済新聞出版社 http://amzn.to/2A8fjlm 人間とサルの違いは何か? 世界のあらゆる分野の研究者の頭を悩ましてきた問題であり、私が子供の頃から興味を抱き、いまだに明確な解答を得ることができずにいるテーマでもあります。 サルをはじめとする多くの動物は原始的な道具(例えば木の枝)を使用しますし、イルカはコミユ二ケーションに言語(音波)らしきものを使用することはよく知られています。また、脳のサイズも、人間だけが特別大きいというわけでもありません。 コイン(トークン)も、サルに教えれば、すぐに使い方を覚え、食べ物と交換したり「売・買春」(オスがメスにコインと交換に交尾を求め、メスがそれに応じる)も活発に行われます。売春が世界最古の職業であるとよく言われますが、本当かもしれません・・・。 -
書評:道徳感情論(第1部~3部)
2017-11-02 18:01道徳感情論(第1部~3部) アダム・スミス 箸、村井章子+北川知子訳、日経BP社 http://amzn.to/2z5HPCm 翻訳ベースで700ページを超える大著なので、2回に分けてコメントを書きます。 ただ、大著ですが、非常に現代的なこなれた翻訳であるため、読むのに大きなストレスは感じませんでした。むしろスラスラ読めた印象です。 現在では、アダム・スミスの著書といえば「国富論」の方がはるかに有名ですが、彼が生きていた時代には本書の方が世の中に広まっていました。本書が修正を加えつつ6版まで重ねたのに対して、「国富論」は本書が版を重ねる間に、本書の一部をより詳しく論じる形で、付加的に出版されたにすぎませんでした。 近代経済学(古い経済学)においては、「合理的経済人」なるものが想定され、個人=個体の利益が最大になる最も効率的な行動をとるとされています。そして、アダム・スミスが国富
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