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記事 65件
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その13

    2021-06-04 20:29  

    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/6月号連載記事■その13 世界を支配しているのは方程式ではなく「確率」である。世の中は動画である。写真では無い●方程式は複雑な社会では役に立たない 方程式を使って、「ズバリ一発」で回答が出てくるのは楽しいものである。 人間の「本能的な美意識」を刺激するのかもしれない。 例えば、宇宙の広大かつ複雑な事象をたった一行で表現する「E=mc2」という特殊相対性理論の方程式は、私も美しいと感じる。 さらに、そのアインシュタイン的広大な宇宙と、微小な粒子の世界の理論である量子論を結びつける「神の方程式」が果たして完成するのかどうか? あるいは、もし完成するとしたらどのようなものになるのかについては、大いに注目している。 したがって、それらの方程式の素晴らしさに魅せられて、社会や経済を「ズバリ一発」で表そうという経済学者
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その11

    2021-04-01 15:32  

    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/4月号連載記事■その11 自由主義(民主主義)は「知識経済社会」の基礎である●自由主義(民主主義)は世界の少数派 日本をはじめとする先進国に住んでいると「自由主義」は水や空気のようにありふれたもののように感じる。しかし、灼熱の砂漠で一人取り残されたときには水のありがたさを痛感するし、水中深く潜った時に酸素ボンベの残量を気にしない人はいないだろう。 同じように、民主主義も、香港が共産主義中国の脅威にさられているようなときに、その恩恵を強く感じる。 しかしながら、現在でも自由主義の恩恵を受けているのは欧米や日本などの先進国を中心とする少数派にとどまっている。世界一の人口を抱える共産主義中国は独裁政治を行っており、その他の国々の多くも共産主義でなければ、軍事独裁かイスラム法による独裁政治によって支配されている。●
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その7

    2020-11-12 22:10  
    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/11月号連載記事■その7 人間の本質を解き明かした老子と孫子●老子と孫子の人間観 古今東西、人間性の本質を鋭く指摘した賢人たちは多数いる。 例えば私の好きなカエサル(シーザー)の言葉に、「私は他人に意見されて自分の考えをたやすく変える人間ではない。だから、他人も私と同じだと思う」がある。またデカルトの「我思う故に我あり」はあまりにも有名な言葉だ。 しかし、あまたある古今東西の名言・哲学・思想の中でも、私が極めて大事にしているのが「老子」と「孫子」である。どちらも人名と書名の両方に使われる。極めて短い文章の中に人間の本質を凝縮した傑作である。 「老子」は、個人としての人間の本質、「孫子」は人間性の中に含まれる「闘い」にスポットライトをあてている。 ちなみに、これらの賢人と並び称される「孔子」は、権力に服従するこ
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その6

    2020-10-05 23:07  
    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/10月号連載記事■その6 資本主義と自由と民主主義●共産主義は終わったのでは無かったのか? 1989年、べルリンの壁が打ち壊される映像は世界中に配信され多くの人々の脳裏に焼き付いた。それまで「冷戦」が続き、東西両陣営のどちらが先に核ミサイルのボタンを押すのか、戦々恐々としていた世界中の多くの人々にとってそれは朗報でもあった。また1991年のソ連邦の崩壊で共産主義陣営の敗北が明らかとなった。 しかしソ連邦はロシアとなり存続(普通選挙が行われているが)しているし、中国も共産党一党独裁のまま経済的な成長を遂げた。その他にも、ベトナムをはじめ共産主義独裁国家はまだまだたくさん存在する。 それはなぜか? 一つには、(共産主義一党独裁の指導による)いわゆる計画経済を捨て、「市場経済」を受け入れたからである。特に客家(はっ
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その5

    2020-08-08 01:47  
    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/8月号連載記事■その5 共感・同調が社会・経済の基本原理●「国富論」は「道徳感情論」の別冊であった アダム・スミスが1776年に著した「国富論」は、近現代における経済学の出発点とされるあまりにも有名な本であり、実際に読んだことがあるかどうかはともかく、その名を知らない読者はいないはずだ。 しかし、世の中に意外と伝わっていないことが二つある。 一つはアダム・スミスが道徳哲学の教授であったことだ。 グラスゴー大学卒業後、オックスフォード大学中退。1748年にエディンバラ大学で文学と法学の講義を始めた。そして、1751年にはグラスゴー大学の論理学教授に就任し、翌年道徳哲学教授に転任しているのである。 1750年には、「人間本性論」で有名なデビッド・ヒュームと出会うが、彼が死ぬまで生涯親しく交流し、強い影響を受けるこ
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その3

    2020-06-06 16:36  
    産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/6月号連載記事■その3 産業革命によって「人間」が誕生した●産業革命が初めて「人間」を誕生させた もちろん、人類(女系)の直接の祖先が、10万年前から20年前にアフリカに住んでいた「ミトコンドリア・イブ」と呼ばれる「女性」であることは遺伝学的にほぼ間違いない。人類の歴史は少なくとも10万年以上はあるというわけだ。また、古代エジプト以前に存在した古代文明は1万年以上遡るのではないかということが、発掘された遺跡の年代測定などから主張されている。 しかしながら、ここでは「人類」と「人間」とを分けて考えたいと思う。 我々が「人間」と呼ぶ時には、生物学的に分類された人類という以外に、他の動物には存在しないと考えられる、自らの明確な意志で考え行動するという「人間性」という意味合いが多少なりとも含まれる。 確かに古代ギリ
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その2

    2020-05-01 01:05  
    産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/4月号連載記事■その2 人間の意志と心と経済・社会●「道徳感情論」と「国富論」 1776年に出版されたアダム・スミスの国富論は、実際に読んだ人は少なくても、その名前は世界中に知れ渡り、現代の経済学における「聖典」とも言える。ところが、この本が、1759年に発刊された「道徳感情論」で論じた内容のうち「人間の経済の営み」に関する部分に特化したいわゆる「別冊」として出版されたことは意外に知られていない。 そもそもスミスはグラスゴー大学(映画ハリー・ポッターの魔法学校のモデルともいわれる名門)の道徳哲学の教授であり、「人間」に関する考察がその専門であった。したがって彼が生きた時代には、「道徳感情論」の方がはるかに世に知られた書物であったのだ。 人間経済科学が「人間中心」の思考を行う理由も、このアダム・スミスの手法に
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その1

    2020-04-02 16:21  
    産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/4月号連載記事■その1 経済学ルネサンス・人間経済科学登場●役に立つ経済学とは 経済学が経済やビジネスの実践で役に立たない机上の空論であるという話はよく聞く。欧米では「経済学がどれほど役に立たない学問なのか」ということは、むかしから繰り返しジョークのタネにされているほどだ。 実際、私が大学を卒業してから35年あまり、金融市場を中心に経済・ビジネスと向き合ってきた中でも経済学(いわゆるマルクス経済学、近代経済学)が何かの役に立ったという記憶はほとんど無い。 なぜ経済学が役に立たないのか? それは、現在主流の経済学が「唯物論」に傾斜し、「生身の人間」のことを忘れ去っているからである。 現在の欧州からは想像できないが、中世暗黒時代はカルト的なカトリック教会が支配する、現代で言えば北朝鮮に匹敵するおぞましい時期であ
  • 孫子と三賢人のビジネス その17

    2020-01-31 09:52  
    産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/2月号連載記事■その17 マネジメントの原則・最初が肝心●最初が肝心 マイケル・ポーターは、「自社がどのような業界で、どのような位置(ポジション)を占めているのか」を知ることが、「競争戦略」を立案する上で極めて重要であると述べています。つまり、飲料業界のトップであるコカ・コーラ、自動車業界のリーディング・カンパニーであるトヨタ自動車、飲料業界の中堅であるダイドー、自動車業界の中堅であるマツダはそれぞれの位置で闘っており、そのあるべき「競争戦略」にも各社のポジションの違いが反映されるべきなのです。 孫子がそれほど長くは無い戦略書の中で「戦地の選択」に何回も言及するのは、それが戦略立案の基本であるからだというのは言うまでもありません。しかし、それ以上に「戦地は一度選択してしまえば後から変えるのは大変困難である」
  • 孫子と三賢人のビジネス その16

    2019-12-30 12:55  
    産業新潮 http://sangyoshincho.world.coocan.jp/1月号連載記事■その16 有利な地形(マーケット)で戦え●負けてはいけない 孫子はある意味究極の平和主義者です。なぜなら、戦いは国や民を傷つけ疲弊させるので、「戦ってはいけない」と厳しく諭しているからです。ただし無防備でいいというわけではありません。 例えば隣国が日本を侵略すれば、日本国民は当然立ち向かわなければなりません。こちらがどれほど平和主義であっても、隣の野蛮な独裁国家が攻め込んで来れば戦わざるを得ません。逆に隣の野蛮な独裁国家に立ち向かうことこそ「平和」を守るための必須条件です。 もし日本が負けて侵略されてしまえば、国民は地獄に突き落とされます。 「永世中立国」であり、平和イメージの強いスイスですが、2013年の国民投票で男性に対する徴兵制の維持が決定されました。決して政府に押し付けられたのではな