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情熱投資家の相川伸夫です!
日経平均が2万円台に乗り、大型株に遅れて中小型が後を追うように上がるというのはよくある市場形成パターンだと思います。
前回4月の記事で取り上げさせていただいた不動産銘柄のLCホールディングス(8938)は期待していた通りの結果になり大変うれしい限りです!
記事掲載前日2017年3月31日(金)終値は 894円
執筆現在2017年6月 9日(金)終値は1228円(+37.4%)
今期の業績予想が大幅に上昇していることが今回の株価急騰の要因です。
5月24日にLCホールディングスが開示した中期計画を読まれましたか?
来期以降の数値目標こそ明示されていないものの今期業績見通しにすらダヴィンチ関係で現在取り組んでいる医療等ヘルスケア施設について含めていないことがはっきり書かれています。
現在の株価から鑑みるにまだまだ多くの投資家にはLCホールディングスという会社の適正株価水準が分からないのでしょう。
現在のLCホールディングスの時価総額はたかだか68億円。資本業務提携をしているダヴィンチの業績もすこぶる良く、LCレンディングの成立額も早くも88億を超えました。
今後もLCホールディングスに注目せずにはいられないようです(笑)
さて、本題の特殊電極(3437)について書きたいと思います。
執筆現在2017年6月9日(金)
株価終値2922円
時価総額23億円
今期予想EPS410円※会社発表数値
今期予想PER7.13※会社発表数値
実績PBR0.59
今期予想ROE9.26%
配当利回り 2.4 %
注目しているのは単に割安だからではありません。
この企業の価値もまた大きく変わろうとしていると感じたので執筆することを決めました。
今回の記事も中々にマニアックで難解かと思われますが、少しでも皆様に同社の価値が伝われば幸いです。
◆技術開発型企業「トクデン」
特殊電極3437(トクデン)は1933年創業。
日本の製造業、特に溶接産業において80年以上多大な貢献をしてきた老舗企業です。
日本が戦後今日まで急激な経済成長を遂げたのは製造業の影響が大きいのは皆さん周知のことだと思います。では、現在の生産業において工場で稼働している機械が軒並み老朽化したまま現役稼働しているのはご存じでしょうか?
今から遡ること30年余り、1973年(昭和48年)から1991年(平成3年)までの期間を【安定成長期】として呼ばれることがあります。
※86年~91年をバブル景気と一般に指す
前年比経済成長率がおよそ5%前後で推移していた当時と成長率1%の現在とでは常識がまるっきり違ったと思われます。
その【安定成長期】に多くの設備や工場が建てられました。会社員として在籍している自分の会社でも現在30~50歳くらいの設備はゴロゴロしています。
【物は必ずいつか壊れる】という言葉が示す通り生産設備にもメンテナンスやオーバーホールが必要です。しかし、当時設備を作った会社にメンテナンスが依頼出来るかといえば必ずそうとは言えないのです。
・設備がいまだ現役にも関わらず皮肉にも企業がすでに倒産している
・生産したメーカーは補修工事ができないために新規設備の導入でしか故障対応できない
・老朽化したとはいえ、新規の設備投資をしても資金が回収できる見込みを立てられるか自信が持てない
上記の様なパターンは一般的な多くの老舗製造業が直面しているザラな例です。
トクデンはそういった老朽化(こすれて擦り減ったり、変形していたり、精度が落ちたり)した設備のダメージ部を抜群の溶接技術で肉盛をし、再加工をして設備を蘇らせることが出来ます。
ただ溶接でリペアするだけでも相当のノウハウが無ければ不可能です。
溶接というのは熱による【寸法変形・硬度変化・組成変化・強度変化】などを引き起こすのでどんなに知識や技術があっても実施する作業者に技能がなければ成り立ちません。
どんなに設備や時代が進歩しても、こと溶接に関しては【技能】は絶対に切り離すことが出来ません。トクデンでは設備を修復するだけに留まらず、プラスワンの付加価値を付けて納品することが出来ます。
・擦り減った部分の修復⇒硬化肉盛溶接(クロムなどを固溶した元の材質より硬い溶接をする)によって1年しか耐えられないものを1年半耐えられるように長寿命化
・腐食部や熱変形の修復⇒軟鋼以外の特殊材料を使った特殊溶接材料を用いた技術で1.5倍の長寿命化
このような設備メンテナンスを基幹産業である『製鉄、石油化学、セメントから家電、自動車、食品産業までありとあらゆる業種』の製造設備にかかわる溶接事業を行っています。
特殊電極以外にも、溶接材料メーカーで工事施工(設備メンテナンス)を手掛けている競合は数社あります。ですが、工場と営業所を全国に展開している特殊電極がこの分野でトップシェアを誇ります。
シェアのトップを維持し続ける努力も当然ながら、前年も従業員の9%もの研究員を置き、【新技術・取引先との共同研究】に日夜注力する努力も続けています。
今も昔も日本の製造業を影から支え続けている素晴らしい企業だと思います。
◆技術力に裏打ちされた業績の担保
日本の全上場企業の数はおよそ3700銘柄。
特殊電極は時価総額を小さい順から数えて220番目の会社です。
先ほど伝えさせて頂いたように溶接技術力では他社の追随を許さない同社の年間取引先は全国で1000社。取引先に大手企業も多く目立ちます。
【主要取引先から一部抜粋※(株)省略】
・旭化成
・いすゞ自動車
・トヨタ自動車
・王子製紙
・神戸製鋼
・JFEスチール
・新日鐵住金
・東芝
・豊通マシナリー
・日産自動車
・日新製鋼
・日鉄住金
・日立金属
・本田技研
・マツダ
・三菱重工業
・三菱日立パワーシステムズ
・三菱マテリアル
『新日鐵、JFE、トヨタ』が取引上位3社。トクデンの売上げ3割弱を占め、特殊電極が保有する特許件数は取引先との共同研究が多く80件にも及ぶ。
特殊電極のセグメントは大きく↓の3つ。
・工事施工(設備のメンテナンス+付加価値を付ける改良)
売り上げ約63億で安定継続的に右肩上がりで増収増益
・溶接材料(硬化肉盛りや耐摩耗、耐腐食の高性能の手溶接棒やソリッドワイヤーといった消耗品)
売り上げ約13億で横ばい~微減
・その他(新規設備⇒出来高向上や連続生産性向上)
売り上げ約13億で自動車産業や製鉄からも引き合いが増えて増収増益、多くの共同開発案件も抱えており、成長戦略として注力している期待分野
【売上高に占める営業利益率】
・2014年3月期 2.68%
・2015年3月期 3.40%
・2016年3月期 5.87%
・2017年3月期 6.84%
現在向上の一途をたどっています。
さらに同社のここ3年間の業績予想には傾向として、
【今期予想数字を極端に控えめでスタートし、年末までに上方修正する】
傾向が見られます。
・15年3月期の会社期初予想の利益は1.02億円
⇒実績2.72億円で2.66倍の上方修正
・16年3月期の会社期初予想の利益は2.36億円
⇒実績4.37億円で1.85倍の上方修正
・17年3月期の会社期初予想の利益は3.32億円
⇒実績4.77億円で1.43倍の上方修正
・18年3月期の会社期初予想の利益は3.28億円
⇒今期はどんな数字を見せてくれるのでしょうか?
現在、日本の上場企業の内部留保は貯まりに貯まっており、生産年齢人口(15~64歳)は20~30年前は70%近くあったものが現在は61%ほどになりました。
国債10年物の金利も30年前⇒6%、20年前⇒2%、10年前⇒1.5%、現在は0.06%となることにより銀行の貸し出し金利は驚く程安くなりました(笑)
世界でも極めて類まれな現象が日本という国で起こっています。
【人手不足×金余り×長期デフレ】
自分には今こそ大規模な設備投資によって一人当たりの生産性を向上させる絶好のチャンスが巡って来ているとしか感じられません。
トクデンはリペアだけではなく、生産性を向上させる技術開発や商品提案にも現在力を入れており、そのほとんどを大手との共同開発で進めています。
このセグメントは『その他』に分類されています。
今後、この生産性向上に寄与できる装置や技術の提案力を高めていければ、収益構造への変化を起こすことが出来ると確信しています。
【生産性を向上させる様々な共同開発での装置一例】
・樹脂成型などの金型予熱装置
・鋳造設備向け強制冷却装置
・破壊用刃物の開発
・自動車向け強制冷却装置⇒1起動当たり6分半だったものを4分に短縮
◆M&Aに対する株価対策
ここまでで特殊電極(3437)という企業の事業や業績についての特色についていくらかは伝わったかと思います。
次に財務についてと現在の市況について考察したいと思います。
数年前から日本の企業がM&Aに対して活発だという話を良く耳にすると思います。年間での上場企業に対してのTOB件数は30~50件ほどで、これは上場企業の内1%~2%弱の会社でM&Aが行われているということです。
M&Aについての一般論としては
【株価が業績や財務に対して割安であり、今後も安定してキャッシュフローを生み出せる企業】
が望ましいのは言うまでもありません。
そしてその企業を買収したときに何かしらのシナジー(相乗効果)を産み出せる企業がTOBを仕掛けられる傾向にあります。
M&Aされることは必ずしも損な訳ではありません。
買収された方が企業にとっても株主にとっても良い場合もあります。
ここで問題提起したいのは【自社がそういった事柄と無関係だと感じている】事です。
今回の特殊電極がそうであるかは分かりません。
しかし、トクデンの時価総額はわずか23億、一期当たり安定的に5億稼ぐ見込みのある優良企業。
単純にプレミアムを50%載せて35億払って100%完全子会社化したとします。
余りに単純な皮算用ではありますが、7年足らずで費用が回収できる見込みのあるお手頃価格ではないかと思えてしまいます。
【特殊電極考察】
・前年実績での配当性向は15%。同社は一株当たり年間70円の配当を安定的に実施しています。
・株主優待は未実施であり、個人投資家向けセミナーなどは上場後しばらくは開催していましたが、数年後から現在までは開催してはいません。
・株主数は約800名、会社OB、役員、持株会を含めて30%程、実質の浮動株は60%近くあると考えられます。
・東証2部であれば手順さえ踏めばすぐにジャスダックから昇格できる
・中国で17年6月を目処に立ち上げる合弁会社は業績に見込まれていないと考えられる
同社もまた【割安株⇒成長株】へと舵を切ろうとしているように見えます。
時価総額23億の創業80年以上のキラリと光る優良企業が『億の近道』に続いていくのかどうか…
今後も同社の【技術力】にアツい期待を送りたいと思います。
最後までお読み下さってありがとうございますm(_ _)m
それではまた。
『全力全開全力前進!!!』
(相川伸夫)
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)