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IPOを考える その2:IPO成功の定義
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IPOを考える その2:IPO成功の定義

2018-12-27 07:48


     11月29日のコラムで「IPOを考える(その1)」というタイトルで書かせて頂きましたがあれから1か月近くが過ぎようとしています(本日はその2となります)。

     そうした矢先の12月19日にソフトバンク(9434)のIPO(筆者としては厳密な意味でのIPOだとは思えないのですが、一応市場ではそうしたことになっています)があり、皆さんもご存知の通りの結果となった訳です。


     IPOは申請から承認を経て公開価格や上場日の決定、投資家(主に機関投資家)に対する需要調査などの過程があって上場に至るというお決まりのコースがあります。

     ソフトバンクのような大量の株式(17.6億株/発行済み株式数は47.8億株)を売り出すには関係者の想定以上の努力が必要で、商売とは言え幹事証券担当者、営業スタッフもご苦労されたと推察されます。

     テレビCMでもソフトバンク株の公開が流れるなどかつてのNTTの時のような側面支援もありました。おいしい話には気をつけろとは良く言いますが、今回は異例の配当利回り(5%)を掲げて投資家を誘いました。申し込みをした投資家は蜜に群がったアリのような存在だったのかも知れません。


     通常の公開価格は下限と上限が提示されますが、今回は1本値。1500円で投資家に強制的に買わせることになりました。これも異例の措置です。

     NTTの時とは違って、大型民間企業の株式を一度に発行済み株式の40%も放出するというのも違和感があります。市場環境も劣悪で需給悪の中なので本来は見送るべきだったという意見も後の祭りながら聞こえてきます。

     しかも同社をめぐるIPO前の出来事は異常なものでした。
     通信障害にファーウェイ問題が重なり、IPO自体ができるのかどうか悩ましい状況があったと推察されます。

     通常のIPOでは比較的事業規模の小さな企業が成長のための資金を確保し社会的な信頼性を高め人材確保など通じて次の成長を図っていくところに意義があると筆者は考えますが、ベンチャー企業とは言えない出来上がった会社の上場がIPOと同類で扱われるのは無理があります。
     いわば配当金を拠り所にしたものなのでREITや投信のような評価になりますが、配当金をベースにした評価は業績次第で減配のリスクを抱えてしまうことになります。


     投資家の多くは公開株価でIPO銘柄を入手しようとトライしますが放出株が少ないと申し込んでも当たらない。どうしても欲しいなら初値で買うことになりますが、それで初値が高くなるというのが通常のIPOです。
     今回のソフトバンクは会社と幹事証券がぐるになって勝手に都合よく価格を決めて多くの投資家に押し売りをしたようなものなのかも知れません。
     でも投資家もリスクを承知で投資したのだから文句は言えない。

     これがIPOの当たり前のルールです。


     IPO成功の定義について筆者は公開株式数が市場環境に応じた適正なものであって価格もリーズナブルな水準で決められ、初値もそれより上で形成され、その後も適度な株価上昇が見られ、少なくとも数か月間は安定した推移を辿った場合を成功と捉える。

     少なくともIPOから半年から1年間に株価の変動はあるとしても投資家に多大な迷惑をかけないできちんと予想した業績を上げ、成長のシナリオを実践していくことができれば自ずと株価はついてくる。

     目先よりも1年後、2年後が大事。

     上場時は投資家に見向きもされない状態でも公開価格を下回ることなく、一定期間を経て評価を高めることができれば成功だとも言える。


     そうした観点では今回のソフトバンクのIPOは失敗だったと言えますね。

     でも上場した以上は宮内社長の言うようにここをボトムに企業価値を高めることで株主に応えるとした言いようがありません。それはもっともな話です。


     ソフトバンクのような知名度があっても親会社のための資金集めに利用された上場は歓迎されなくなるだろう。投資家もバカではないが上場を支援する方もビジネスだから手口は巧妙。つい騙されてしまうことの方が多い。


     これからこれだけの規模のIPOは出てこないのかも知れませんが、投資家はしっかりとIPOというもののリスクを認識しないとならない。

     今後のIPO銘柄のリスクを警鐘したという意味で今回のソフトバンク株の上場は意味があったのかも知れません。


    (炎)


    【年末のご挨拶】

     2018年も残りわずかになって参りました。

     「億の近道」読者の皆様にはこの1年、ご愛読賜り有難うございました。

     株式相場は気が付くと1月23日を高値に基調は調整続き?で皆様の運用も停滞を余儀なくされたのではないでしょうか。

     株式投資は山あり谷あり。
     人生と同様良い時ばかりではなく必ず苦しい局面も参ります。

     それでも何とか乗り切っていく必要があります。

     億の近道に集う皆さんとともに来年もまた、しっかり前を向いて進んでいきたいと思います。


     運用は運を用いると書きます。

     運も味方にして株式投資や資産運用を楽しみながら来る2019年、更には
    オリンピック開催の2020年に向かって参りたいと思います。


    皆様、良いお年をお迎えください。


    炎のファンドマネージャー 拝


    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)



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