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記事 217件
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その16 現代の経済社会は、会社や国家というチームでプレーする

    2021-09-24 14:57  

    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/10月号連載記事■その16 現代の経済社会は、会社や国家というチームでプレーする●スーパーヒーローはかっこいい 仮面ライダー、ウルトラマン、スーパーマン、バットマンなど、私世代でもなじみがあるスーパーヒーロー達は、基本的に「ピン」である。相棒がいる場合もあるが、率直に言えば「アシスタント」程度の役割しか果たさない。 ミステリー(探偵小説)の金字塔であり、最も映画化・ドラマ化されたといわれる小説である「シャーロックホームズ・シリーズ」のホームズとワトソンの関係も、探偵とアシスタント兼記録係であると言ってよいであろう。 しかし、最近のヒーローものは、ゴレンジャーなどのように「対等な立場の仲間が力を合わせる」スタイルが増えてきているように思える。ワンピースは、ヒーローものや戦隊ものとは違うが、「個性的な仲間たちが
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その15

    2021-07-28 20:03  

    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/8月号連載記事■その15 「信用」が富の源泉である●交換は人類を豊かにした 「人類とサルの違いは何か?」という疑問を子供の頃から持っていたが、いまだにその回答を明確に得ることができないでいる。 巷では、「サルが人間に進化した」ということがよく言われるがこれはまったくの間違いである。正確には、「人類とサルの祖先が同じで、途中で進化の道筋が分かれた」のだ。 脊椎動物である両生類から哺乳類が分岐したと考えられる2億年ほど前に比べれば、ヒトや類人猿が「旧世界ザル(オナガザル上科)」から分岐したのは3000万~2500万年前とされているから、最近のことである。 しかし、このような生物学的な考察よりも、人類を人類たらしめているのはその「文化」「文明」である。 今のところ、人類最古の遺跡はトルコ(アナトリア南東部)のギョ
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その14

    2021-06-25 10:54  

    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/7月号連載記事■その14 古代エジプト人の脳と現代人の脳はまったく同じである●人類は進歩していない 2025年に二度目の大阪万博が開催される。1970年の大阪万博をリアルタイムで身近に経験した私としては、心躍る話である。当時、万博会場の裏手に住んでいたため、日本中から、名前を聞いたことが無いような親せきが自宅に泊りに来た。また、私自身も10回くらいは会場に足を運んだ。 当時の熱狂ぶりは、今でもはっきりと覚えているが、その熱狂の中で繰り返されたのが「人類の進歩と調和」というメインテーマである。 当時は日本の経済成長が加速を始めた時期であり、展示物も米国館の「月の石」など素晴らしい未来社会を暗示するものばかりであった。また、今ではごく当たり前の「動く歩道」や、いまだにまったく一般に普及していない「テレビ電話」な
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その13

    2021-06-04 20:29  

    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/6月号連載記事■その13 世界を支配しているのは方程式ではなく「確率」である。世の中は動画である。写真では無い●方程式は複雑な社会では役に立たない 方程式を使って、「ズバリ一発」で回答が出てくるのは楽しいものである。 人間の「本能的な美意識」を刺激するのかもしれない。 例えば、宇宙の広大かつ複雑な事象をたった一行で表現する「E=mc2」という特殊相対性理論の方程式は、私も美しいと感じる。 さらに、そのアインシュタイン的広大な宇宙と、微小な粒子の世界の理論である量子論を結びつける「神の方程式」が果たして完成するのかどうか? あるいは、もし完成するとしたらどのようなものになるのかについては、大いに注目している。 したがって、それらの方程式の素晴らしさに魅せられて、社会や経済を「ズバリ一発」で表そうという経済学者
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その12

    2021-05-02 01:49  

    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/5月号連載記事■その12 自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ●自分が成長する リクルートの社訓(旧)「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」は、1968年に、創業者・江副浩正氏によって制定されたスローガンだ。 実は私は学生時代、リクルートのA職というアルバイトをしていた。アルバイトと言ってもスーツにネクタイ姿で、アタッシュケース(当時の営業マンの必須アイテムであった)を抱えながら、営業先を回るというものである。勤務時間は9時~5時どころか、残業が月70~100時間になることも珍しくないという、猛烈な仕事内容であった。 学生アルバイトなのだから、いつ辞めても良かったわけだが、喜んで働いていたのは、学生としては破格のアルバイト料(後に短資会社に就職した時には、残業が無くなったせいもあるが、月給
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その11

    2021-04-01 15:32  

    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/4月号連載記事■その11 自由主義(民主主義)は「知識経済社会」の基礎である●自由主義(民主主義)は世界の少数派 日本をはじめとする先進国に住んでいると「自由主義」は水や空気のようにありふれたもののように感じる。しかし、灼熱の砂漠で一人取り残されたときには水のありがたさを痛感するし、水中深く潜った時に酸素ボンベの残量を気にしない人はいないだろう。 同じように、民主主義も、香港が共産主義中国の脅威にさられているようなときに、その恩恵を強く感じる。 しかしながら、現在でも自由主義の恩恵を受けているのは欧米や日本などの先進国を中心とする少数派にとどまっている。世界一の人口を抱える共産主義中国は独裁政治を行っており、その他の国々の多くも共産主義でなければ、軍事独裁かイスラム法による独裁政治によって支配されている。●
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その10

    2021-03-06 13:45  

    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/3月号連載記事■その10 ドラッカーはすぐれた【傍観者】である●傍観者の時代 経営者やビジネスマンで、ピータ―・F・ドラッカーの名前を知らないものはいないだろう。大学教授でもあったが、若いころ『経済人の終わり』というナチス・ドイツやヒットラーを批判する本(英国の宰相ウィンストン・チャーチルにも称賛された)を発行したため、母国オーストリアから離れざるをえなくなり、その後ファンド・マネージャーや記者などを経験しながら、最終的に米国でコンサルタントとして活躍する。 大きな転機は、GM中興の祖と呼ばれるアルフレッド・スローンからのコンサルティング依頼を受けたときだ。当時はまだ「マネジメント」という概念がほとんどなく(ドラッカーが確立したといえる)、手探り状態だったのだが、「生きて活動している企業」と最初に格闘した上
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その9

    2020-12-31 13:04  
    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/1月号連載記事■その9 人間は金で動くのか?自由・市場・知識●あなたは金で動く人間か? 「あなたは金で動く人間か?」と問われて「はい、そうです。お金さえもらえれば何でもやりますよ!」と答える読者は多くないだろう。一方、私も含めて「お金を嫌いな人間はめったにいない」のも事実である。 シンプルに言えば「お金は好きだが、お金の奴隷にはなりたくない」というのが、ごく普通の人間の感情では無いだろうか? だから、「より金銭的に得をすることだけを考える人間=お金の奴隷」=「合理的経済人」なるものを標準モデルとする近代経済学がまったく役に立たないのも当然かもしれない。 行動経済学の実験などからも、人間の経済行動は、単なる金銭的損得だけでは無く、社会的規範や倫理基準に大きく左右されることが分かってきている。 例えば、行動経済学
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その8

    2020-12-03 14:54  
    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/12月号連載記事■その8 バフェットは握手だけで数千億円の取引をする●定量的分析と定性的分析 私が企業への投資をはじめたときには、「定量的分析」に頼っていた。 「定量的分析」とは、決算書などに記載された数字そのものを分析することである。確かに、企業の事業やビジネスの本質を十分理解していない段階では、「数字」というものは極めて便利である。素人でも容易に扱え、一定の公式を当てはめれば小学生でも百戦錬磨の投資家でも同じ結果を得ることができる。 投資の神様・バフェットの師匠であるベンジャミン・グレアムは、定量的分析を中心に行っていた。1929年のNY株価暴落で、彼も大損をし、その反省から、自分の欲目で企業を過大評価したり逆に恐怖心から過小評価しないようにするため、「客観的数字」を重視したのである。 その手法は大成功し
  • 人間経済科学と賢人たちの教え その7

    2020-11-12 22:10  
    産業新潮http://sangyoshincho.world.coocan.jp/11月号連載記事■その7 人間の本質を解き明かした老子と孫子●老子と孫子の人間観 古今東西、人間性の本質を鋭く指摘した賢人たちは多数いる。 例えば私の好きなカエサル(シーザー)の言葉に、「私は他人に意見されて自分の考えをたやすく変える人間ではない。だから、他人も私と同じだと思う」がある。またデカルトの「我思う故に我あり」はあまりにも有名な言葉だ。 しかし、あまたある古今東西の名言・哲学・思想の中でも、私が極めて大事にしているのが「老子」と「孫子」である。どちらも人名と書名の両方に使われる。極めて短い文章の中に人間の本質を凝縮した傑作である。 「老子」は、個人としての人間の本質、「孫子」は人間性の中に含まれる「闘い」にスポットライトをあてている。 ちなみに、これらの賢人と並び称される「孔子」は、権力に服従するこ